地下足袋の詩(うた)―歩く生活相談室18年

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  • 東方出版
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本棚登録 : 15
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885915406

作品紹介・あらすじ

日雇いの街、大阪・釜ヶ崎でボランティア・ケースワーカーとして18年間労働者の話を聴き、支え続けた
女性が綴る「釜ヶ崎日記」。苛酷な労働を担い、生と死の間で全存在をかけて生きる労働者たちの姿を通
して、現代社会の真実を描く。◉8刷◉

感想・レビュー・書評

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  • 入佐明美は中学2年の時、岩村昇医師の存在を知った。岩村は日本キリスト教海外医療協力会からネパールへ派遣された医師で、結核治療・伝染病予防を推進した人物だ。看護学校を卒業した入佐は、直接岩村と会いネパール行きの希望を告げ、快く承諾された。直後に岩村から連絡があり、「ネパールへ行く前に釜ヶ崎の結核と戦ってほしい」と頼まれた。釜ヶ崎といえば、あいりん地区である。東京の山谷(さんや)と並んで日本の二大ドヤ街といわれる地域だ。入佐はネパール行きの夢を胸に、結局本書が刊行されるまでの18年にわたって釜ヶ崎で結核ケースワーカーを務めた。
    http://sessendo.blogspot.jp/2015/03/18.html

  • 知人のお坊さん(現地でボランティアしていた人)からお借りしました。現地で日雇い労働者の方のサポートをしている方の綴った日々。こういった人たちがいるので、路上生活している方たちも、一抹の希望や安堵が得られるんでしょうねぇ。頭が下がります。
    その方の話を聴くということで、介護職と似ているところもあるなぁ・・・と、同感を得た所もありました。

  • JRの雑誌「WEDGE」に載ったという入佐明美さんの記事「借用書なしで金を貸す西成のねえちゃんの「人を信じる力」」(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/888)をおしえてもらって読む。

    24歳で、看護婦として勤めていた病院をやめて釜ヶ崎に入り、以来ケースワーカーとしてはたらいてきた入佐さん。本があるらしいが、近所の図書館には一冊もない。読んでみたいと思って入佐さんの本をすぐ注文した。

    届いた本の帯にはこう書いてある。
    ねえちゃんな、人間は
    本音をはける相手がいることが、
    いちばん大切なんや

    釜ヶ崎で日雇い労働者たちと出会い、言葉をかわし、ケースワークを通じて気づき、教えられることが私には数多くあったと書く入佐さんの話を読んで、私も気づくこと、ああそうなのかと思うことがたくさんあった。

    最初の一年は無我夢中、病気の人、困ってる人に次から次へと出会い、相談に乗り、お世話をし、やってもやってもきりがない。もっと自分に体力があれば、もっと時間があれば、もっと役に立つことができるのにと思い、だんだん自分のために時間を使ったり自分のためにお金を使ったりするのが申し訳ない気持ちになり、食事は外食、帰ったら銭湯に行って寝るという生活をしていたという入佐さん。

    それでも心は満たされ、自分のやっていることが人に喜ばれていると思え、うれしくて仕方がなかった、自分が必要とされていると肌で感じていた。そんな入佐さんが、気持ちはあり、心は燃えるものの、身体がついていかなくなる。

    ねえちゃん、しんどそうやなあ、「自分のこともあんじょうでけへん人は他人のことも大切にでけへんで」と井原さんから声をかけられ、自分を大切に、自分をほんまに愛してこそ他人の世話ができると教えられる。

    それはどうすることやろう?と考えた入佐さんは、自分の生活を大切にし、自分のために心をこめて食事をつくり、好きな音楽を聞き、絵を見、本を読む時間をつくった。「自分のために時間やお金を使い、自分を喜ばせるように努力をしました」(pp.93-94)と書いている。そうして自分を大切にしていくと、ねばならないという気負いや無理なく、他人を大切にできるようになっていったと入佐さんは書く。

    とはいえ、絶望感におそわれ、しんどさのあまり逃げたくなること、後ろめたさを感じることは何度でもあった。自分には帰るところがあり、お腹一杯食べられる、ふとんの上で寝られる、明日の仕事を心配して夜中の二時三時に起きることもない。そんな自問と自答を繰り返すなかから、入佐さんは深く深く学んできたのだと思う。

    病院にはなじめない、入院はしたくないという北沢さんが、仲間との人間関係をつくり、生活を立て直して、居宅保護で通院しながら結核を治癒させたことは、入佐さんにとってもとびあがるほどうれしいことだった。この北沢さんの話や、入院して手術を受ける久保さんを仕事を休んで見守った友だちの話など、「同じ立場で生きる仲間」のつながりの大切さをつくづくと感じた。

    入佐さんがこれまでの活動を書きとめた文章とともに、奈路道程さんによる本のイラストがよかった。冒頭の、入佐さんの「共食い」の話には笑った。なんども読みたいと思える本。

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プロフィール

1955年鹿児島県肝属郡吾平町(現・鹿屋市)生まれ。県立高山高校卒業。姫路赤十字看護専門学校卒業。播磨大塩病院勤務。
1980年より釜ヶ崎でボランティア・ケースワーカーとして働いてきた。著書に『ねえちゃんごくろうさん』(キリスト新聞
社)、『いつもの街かどで』(いのちのことば社)、『いのちを育む』(共著、中央出版社)がある。
ボランティア・ケースワーカー(看護士・社会福祉主事)。

入佐明美の作品

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