坂本一成住宅-日常の詩学

制作 : ギャラリー 間 
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887062047

作品紹介・あらすじ

閉じた箱「散田の家」(1969)から、家型の「代田の町家」(1976)、より自由な領域を求めた学会賞受賞作「House F」(1988)、都市への開放を試みた村野藤吾賞受賞作「コモンシティ星田」(1992)、そして、建築そのものの解放を標榜する「House SA」(1999)/「Hut T」(2001)まで、30年にわたる全16作品とプロジェクト13作品を掲載。併せて、各時代ごとに建築界へ問題を投げかけた主要論文11本を収録。全英訳付き。

感想・レビュー・書評

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  • 多くの建築家が都市に対して閉じこもる住宅を求め、「住吉の長屋」や「中野本町の家」が脚光を浴びていた時代から現代に到るまで。時代と建築家の感性の変遷を作者の作品の変遷を介して少し感じることができる。

    住まいとはどうあるべきか。人と切り離された<対象物>ではなく、かつての民家のような<空間的環境>となれるように、社会的・歴史的な意味による安易なイメージが介在することを慎重に回避しようとしている。その感覚にとても共感した。だが意味の回避に拘泥することが、結局意味を生んでいるような気もする。
    私には、それが言葉による思考の短所であるように思われてしまうが、言葉を主要な武器とする氏の流派に対してはあまりにチープな批判なので、あくまで個人的感想として書き留める。

    意味を否定する中で唯一認められている「構成」という概念は興味深い。それは建物という書物が、単に視覚や触覚、知識によってではなく、日常の生活として袖を通してみて初めて読み取られる一つのストーリーのことを指していると思われるからだ。

  • 学生のころから、坂本一成という建築家がいまひとつ理解できなかった。理解できない理由を深く突き詰めることはなかったが、2001年末に出版されたこの本を読んで、幾らかはその「理解できなさ」の理由と、坂本氏がやり続けてきたことの輪郭が見えた気がする。

    その理解できなさは、多木浩二氏による巻末の論文に、「私自身も坂本一成が外観をデザインすることを望まず、かといって放棄するのではない状態をどう理解すべきか、充分には理解できなかった。」という件と全く同じで、正に我が意を得たり!でした。

    少なくとも、氏は一貫して建築が本来的に備えてしまう制度を解放・開放しようと思索と実践を積み重ねてきたことは理解できた。ただ、その思索と実践の先に実現するものが、どのような建築と人間の関わりであるのかは、自分には到底想像が及ばないのです。後継の方々の活動にその展開が見えることも期待しつつ・・・

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