内藤廣の建築 1992-2004――素形から素景へ1 (素形から素景へ 1)

著者 :
  • TOTO出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887063327

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  • 内藤廣の建築と言葉の本。
     誰もが心の奥底にもっている建築の原形質のようなものがある。著者はそれを「素形」と呼び、設計の過程に置いてそれを常に探し求めている。それを見つけるには「おもしろさ」を求めない勇気が必要。多分「おもしろさ」を求めすぎるとそれを実現する為に必要なものが幾重にも重なり、最終的には自分がしたいことから遠ざかるからだろう。
    そのような建築は「おもしろさ」を求める人にとってはつまらない建築かも知れないが、これは現代において実現されるべき価値の在り方を示していると著者は考えている。
    素形は考えて浮かび上がるものではなく、設計していく内に無意識で浮かび上がってきたものである。だからと言って裸同然でいることが素形なのではなく、設計する上での条件に対して答えようとする過程で意図せずふとした時現れる形こそが素形である。

    本文引用とそれについての感想
    『建築は長い時間で語られるべきで、面白い形ができたとか、いい空間ができたとかいって褒められるより、そこにどういった「時間」が生み出されるかということが語られる時、建築は本当の答えを出すことができる。』
     建築に置いて重要な要素である「時間軸」。時代を超えて生き続ける建築というのはどれも時間軸を持っているように思える。著者もその時間軸をどのようにして持たせるかと試行錯誤してる様子。

    『建築という「手段」が、それ自体が「目的」にすり替わる瞬間がある。建築が「作品」も呼ばれる時だ。
    建築はありののままの存在であることから離脱し、意味や価値が転倒する。建築は「手段」のままであるべきだ。』
     建築自体はありのままの存在でなくてはならない。例えば美術館は美術館で無くてはならないし、もしド派手な造形で作った故に美術館としての機能を失った時、本末転倒で建築が「手段」から「目的」へとすり替わっている。だから建築はあくまでも人間の活動を支える為の「手段」で無くてはならないし、それ自体が「作品」となってはいけない。
    建築はまず第一に「人間の活動を支える」という重要な項目があることを再認識した。

    印象に残った建築物
    海の博物館 三重県
    安曇野ちひろ美術館 長野県
    茨城県天心記念五浦美術館 茨城県
    十日町情報館 新潟県
    牧野富太郎記念館 高知県
    ちひろ美術館 東京

  • 「つまらなさ」に耐えること。

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著者プロフィール

1950年神奈川県横浜市生まれ。建築家。1974年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学院理工学研究科にて吉阪隆正に師事。修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て1981年、内藤廣建築設計事務所設立。2001年、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学助教授、2002-11年、同大学教授、2007-09年、グッドデザイン賞審査委員長、2010-11年、東京大学副学長。2011年、東京大学名誉教授。建築作品に海の博物館(日本建築学会賞、吉田五十八賞、芸術選奨文部大臣新人賞)、安曇野ちひろ美術館、牧野富太郎記念館(村野藤吾賞、毎日芸術賞)、倫理研究所 富士高原研修所、島根県芸術文化センター、虎屋京都店、静岡県草薙総合運動場体育館、富山県美術館、高田松原津波復興祈念公園 国営追悼・祈念施設(芸術選奨文部科学大臣賞)、東京メトロ銀座線渋谷駅など。著書『素形の建築』『構造デザイン講義』『環境デザイン講義』『内藤廣と若者たち』『内藤廣の頭と手』『形態デザイン講義』『内藤廣の建築1』『内藤廣の建築2』『内藤廣設計図面集』『空間のちから』ほか。

「2021年 『建築の難問 新しい凡庸さのために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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