モンタイユー ピレネーの村 1294~1324 (上) (刀水歴史全書 26)
- 刀水書房 (1990年6月20日発売)
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感想 : 5件
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Amazon.co.jp ・本 (367ページ) / ISBN・EAN: 9784887080867
作品紹介・あらすじ
異端審問文書から中世南仏の農村生活を人類学的手法で描き,1975年の発刊以来,社会史ブームをまきおこしたアナール派第3世代の代表作(発刊当時、フランスの新人文学賞=ゴンクール賞を受賞)。ピレネー山中寒村の50戸200人の村人の生活と心性,異端カタリ派の村への浸透が精細に描写される。西洋中世を肌で感じることの出来るこの傑作は小説よりおもしろい(1990~91年刊)
みんなの感想まとめ
中世南仏の農村生活を人類学的手法で描いたこの作品は、異端審問文書を基に、当時の村人たちの生活や心性を精緻に表現しています。著名な歴史家によるこの著作は、ピレネー山中の小さな村に住む50戸200人の人々...
感想・レビュー・書評
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佐藤亜紀が講義で採り上げるから予習で。
14世紀ピレネーの山村の異端審問官の記録の研究書とゆうことで、審問の記録を時系列で整理して異端審問自体を浮き彫りにするのかなーと読み始めたら、異端審問の詳細な記録から異端審問のみならず、当時の社会制度や民俗を掘り返すからおそろしいぜ。
前提になっている「14世紀のピレネーの山村に暮らす」とゆうことの歴史的社会的民俗的な分析がすでにおもしろい。担当した審問官であり後のローマ教皇ベネディクトゥス12世が清書させてヴァチカンに大事にしまっていたのは、これが異端審問の記録であるのと同等に社会を切り取る記録として保存しなければならないとゆう義務感と、あと単純にメチャクチャおもしろかったからだろうな。ゲームや映画みたいなフィクションの詳細な設定資料集読んでいるみたいで、「異世界」を真面目に構築しようとしたらこれくらい考えなアカンのやろなと思った。
記録を分析してゆくと、人間が「そうゆう生態の生物」として描写されるのおもしろいよな。個人ではなく群体としての生物の個体に「代官」「司祭」「小作人」「下女」とゆう役割があり、そこに「好色」「情婦」「おしゃべり」とゆう個性があり、「異端」が彼らの習性(行動)に影響を与える。吉村昭『羆嵐』が可哀想な村人の熊害としてではなく、生物としての人間と羆の習性として描かれたことを思い出す。
そして、当時の生活や考え方を記録としてフラットに読んでいても、詳細な記述から愛すべき特徴的な人間が浮かび上がってきて生き生きと動き出すのもおもしろい。佐藤亜紀が「歴史小説を書くのは、資料を読んでいると他人に出会うからだ」とゆうてたのはこのことかにゃー。作者が登場人物を恣意的に作り上げるのではなく、資料を詳細に検討していくと、ミケランジェロが石の中から彫像を掘り出すように、資料から登場人物が浮かび上がってくる。
歴史小説は歴史の二次創作だと思っているが、公式を真摯に受け止めないと二次創作はダメだと思う。いくら作者の思いがあれ、資料が「飛影はそんなこと言わない」と断じたものはやはり二次創作として誤っているのだ。
あと、同姓同名が多すぎる。同姓はしょうがないけど、ピエールとギヨームとベルナールとギュメットとレモンとレモンドとアラザイスとエスクラルモンド多すぎない!? アルカディオとホセとアウレリャーノだらけの『百年の孤独』よりキビシー!
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異端審問官の尋問を受けた農民たちの口からは、信仰に関する事柄をこえて、村の日常生活、濃密な人間関係、各人のかみしめた人生の喜びと悲しみが、微に入り細に入り語り出される。本書は、今は失われた700年前の小世界に読者を誘い、名もなき村人たちの一度きりの生を体感させてくれる。
エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリの作品
