モンタイユー (下)[新装版] ピレネーの村 1294~1324 (下) (刀水歴史全書 26)

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  • Amazon.co.jp ・本 (425ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887084711

作品紹介・あらすじ

異端審問文書から中世南仏の農村生活を人類学的手法で描き,1975年の発刊以来,社会史ブームをまきおこしたアナール派第3世代の代表作(発刊当時、フランスの新人文学賞=ゴンクール賞を受賞)。ピレネー山中寒村の50戸200人の村人の生活と心性,異端カタリ派の村への浸透が精細に描写される。西洋中世を肌で感じることの出来るこの傑作は小説よりおもしろい(1990~91年刊)

感想・レビュー・書評

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  • 下巻はキリスト教諸派の信仰とかそれ以外にも概念や思考みたいな抽象的な内容でついていくのがけっこうしんどい。研究書であり資料の分析と考察なので、イマイチ興味持てないところはなかなか進めないが、他の項目と密接に絡んでくるから読み飛ばせずがんばって読んだら点が線になり面となって、14世紀のピレネーの山村が甦るような作りになっていておもしろいなこれ。
    信仰と呪術は峻別されていたとか(異端だから魔術に傾倒!とゆうわけではなく、正統も異端も白魔術レベルの呪いを信じていた)、時間感覚(生活に即して、一年を放牧期と冬季にわける、月を半期と四半期にわける考え方。一方で、1日の時間は祈祷と密接に関わる宗教の領域)とか、身近な動物と罵倒の関係性(犬猫豚は身近であるが故に愛憎半ばして罵倒語になり、馬や羊はやや離れているから善性を仮託される)とか、民衆が信仰を選ぶ際の理由(死後の救済ありそう度)と見解だったりとか、微に入り細を穿つのがおもしろい。眠い… むつかしい… かゆ… うま…
    嬰児の死亡の多さや私生児を含む多産な傾向から「当時の人々は子供の死を悼むことはなかった」とするのではなく、カタリ派の教義(「人間は死ぬと誰かの赤子として転生する」と慰める、死にかけている人には飲食を禁じるがそれを破って我が子に乳を飲ませる)から、我々とは違うが子供の死を悼む感情はあったとしているのいいな。資料から窺えることから当時の人々を甦らせようとしている。
    「異端まみれの山村」とゆうクリシェから想像される、いわゆる因習村の「世界設定」がメチャクチャ緻密でおもしろい。重税を課し贖宥を乱発する当時のカトリック教会への不信から、死後の救済をシビアに世知辛く値踏みして、異端とカトリックの間を行ったり来たり慎重に見極めるモンタイユーの人々の姿が見えてくる。モンタイユーの人々は田舎者で純朴だから異端になったのではなく、「死後の救済」とゆう実利を狡猾に掠め取るために異端を選んだ。家とゆう概念も、子沢山で結婚させると婚資で潰れるから近新婚で済ませようとする実利的な過激派がいたり、男性は晩婚で女性が早婚なために「お爺ちゃん」とゆう概念がなく歳取って家督譲った男に全然権限がなくしばしば歳取った女性が権限を握ってたり、作業の合間の語りの時間から異端が浸透していたりとか、色々な必然から導かれた結果が「異端まみれの山村」とゆうのがおもしろい。
    でもやっぱり、上巻のクレルグ兄弟の漁色と権力構造、カタリ派が主流を占める特殊環境での熾烈な密告合戦、カタリ派羊飼いピエール・モリの生活と意見みたいな「物語」のほうが筆も乗ってくるし読むのも楽しくなるよなー。物語コワー。

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