ポケット詩集 (2)

制作 : 田中 和雄 
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  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887470248

感想・レビュー・書評

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  • 目次
    道程(高村光太郎)
    二十億光年の孤独(谷川俊太郎)
    山林に自由存す(国木田独歩)
    六月(茨木のり子)
    雲の信号(宮沢賢治)
    花(村野四郎)
    素朴な琴(八木重吉)
    ひとり林に(立原道造)
    われは草なり(高見順)
    うさぎ(まど・みちお)〔ほか〕

  • 詩はピンと来なくて苦手意識があったのだけれど、いいなと思える詩に出会えた。
    茨木のり子、石垣りんの詩がよかった

  • 心が綺麗になる
    詩ってすごいなぁ

  • 高村光太郎「道程」(1914)から茨木のり子「倚りかからず」(1999)まで、24人43篇の近現代詩アンソロジー、3年ぶりの二冊目。たぶんどこかで目や耳にしたことのある作品のほうが多いと思う。

    「倚りかからず」はほんとうに好き。

  • 日本を代表する多くの詩人たちの詩が網羅されている。若かった頃に好きだった石垣りんさんの「倚りかからず」は入っていたが、残念ながら「表札」はなかった。改めて検索して読み返し書き留めておくことにしました。
              

                表札
                         石垣 りん
    自分の住むところには
    自分で表札を出すにかぎる。

    自分の寝泊まりする場所に
    他人がかけてくれる表札は
    いつもろくなことはない。

    病院へ入院したら
    病室の名札には石垣りん様と
    様が付いた。

    旅館に泊まっても
    部屋の外に名前は出ないが
    やがて焼き場の鑵にはいると
    とじた扉の上に
    石垣りん殿と札が下がるだろう
    そのとき私がこばめるか?

    様も
    殿も
    付いてはいけない、

    自分の住む所には
    自分の手で表札をかけるに限る。

    精神の在り場所も
    ハタから表札をかけられてはならない
    石垣りん
    それでよい。

    年々いわゆる堅いモノがつくづく嫌になってきた。軽快な雰囲気に惹かれていく。そこで、本作に収められていたイチオシ。       


              春の問題          
                         辻 征夫

    また春になってしまった
    これが何回めの春であるのか
    ぼくにはわからない
    人類出現前の春もまた
    春だったのだろうか
    原始時代には ひとは
    これが春だなんて知らずに
    (ただ要するにいまなのだと思って)
    そこらにやたらに咲く花を
    ぼんやり 原始的な眼つきで
    眺めていたりしたのだろうか
    微風にひらひら舞い落ちるちいさな花
    あるいはドサッと頭上に落下する巨大な花
    ああこの花々が主食だったらくらしはどんなにらくだろう
    どだいおれに恐竜なんかが
    殺せるわけがないじゃないか ちきしょう
    などと原始語でつぶやき
    石斧や 棍棒などにちらりと眼をやり
    膝をかかえてかんがえこむ
    そんな男もいただろうか
    でもしかたがないやがんばらなくちゃと
    かれがまた洞窟の外の花々に眼をもどすと・・・・・
    おどろくべし!
    そのちょっとした瞬間に
    日はすでにどっぷりと暮れ
    鼻先まで ぶあつい闇と
    亡霊のマンモスなどが
    鬼気迫るように
    迫っていたのだ
    髯や鬚の
    原始時代の
    原始人よ
    不安や
    いろんな種類の
    おっかなさに
    よくぞ耐えてこんにちまで
    生きてきたなと褒めてやりたいが
    きみは
    すなわちぼくで
    ぼくはきみなので
    自画自賛はつつしみたい
         

    • あおいそらさん
      私は雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです。たしかに、どちらも青いですね〜!

      辻征夫さん、気になって調べたら、なんと同じ町に...
      私は雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです。たしかに、どちらも青いですね〜!

      辻征夫さん、気になって調べたら、なんと同じ町に住んでいたのだとわかりびっくり。詩集も読み始めました。辻さんの緩くて肩の力の抜けた詩に癒されます。雨について書かれた詩もありましたよ。「雨」「虻」おすすめです。
      2022/10/24
    • しずくさん
      えっ、まさか、まさかそうだったの!
      そらさんは関東にお住まいなのね?

      >雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです
      そう、あ...
      えっ、まさか、まさかそうだったの!
      そらさんは関東にお住まいなのね?

      >雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです
      そう、あの雨の匂いがすると雨が降り始めると思われ嬉しくなるのです。長く雨音を聴けない時は、YouTubeの自然音を流したりするぐらい。
      あおいそらさんにはお気の毒かもしれない(笑)

      今、そらさんのコメントに気付きましたが、実は私も昨日彼の詩集を4冊借りて来ています。

       雨                 

        耳たぶにときたま
        妖精がきてぶらさがる
        虻みたいなものだが 声は静かだ
        「いまなにをしているの?」
        街に降る雨を見ている
        テレビは付けっぱなしだが
        それはわざとしていることだ
        だれもいない空間に
        放映を続けるテレビ
        好きなんだそういうものが
        (それでなにをしているの)
        雨をみている
        雨って
        ひとつぶひとつぶを見ようとすると
        せわしなくて疲れるものだ
        雨の向こうに
        工場とか
        突堤の先の
        あれはなんだろう
        流木だかひとだかわからない
        たとえばああいうものを見ながら雨のぜんたいを
        見ているのがいちばんいい
        そういうものなんだ 雨は
        (むずかしいにね ずいぶん)
        何気ないことはなんだってむずかしいさ
        虻にはわからないだろうけど
        (妖精よ あなたの雨の ひとつぶくらいのわたしですけれど)

                         『河口眺望』 より

      素敵な詩ー、紹介して下さってありがとうございます。「虻」は見当たらないの・・・。もしかすると、「雨」の中に2度出てくる「虻」かな?
      こうしてお話しできるのはブクログのおかげさま。
      2022/10/25
    • あおいそらさん
      ぴんぽん! しずくさんの長崎からは遠いですね~

      辻さんのひょうひょうとした表現で、物事に誠実に向かい合っていて優しい感じが好きです。私...
      ぴんぽん! しずくさんの長崎からは遠いですね~

      辻さんのひょうひょうとした表現で、物事に誠実に向かい合っていて優しい感じが好きです。私もあれこれ読んでみました。
      「虻」は【みずはつめたい】(理論社)に「雨」と対のようにのっていますよ。気になる詩は「地下鉄」「蟻の涙」「かぜのひきかた」「遠足の日に」などなど。子供たちとも共有できる感性に紛れて、大人向け(!)の詩がときどきあって、ぐっときます。
      これから谷川さんとの対話は読むのが楽しみです。

      やはり、サラリーマンを描くように、原始人に思いを馳せる感覚、なかなかないなあ。「四月の問題」はとても気に入りました。
      2022/10/28
  • まど・みちおさんの、 うさぎ という詩が、とても好き。


    うさぎ      まど・みちお

    うさぎに うまれて
    うれしい うさぎ
    はねても
    はねても
    はねても
    はねても
    うさぎで なくなりゃしない

    うさぎに うまれて
    うれしい うさぎ
    とんでも
    とんでも
    とんでも
    とんでも
    くさはら なくなりゃしない



    、、、この詩も、好きです。


     われは草なり      高見 順

    われは草なり
    伸びんとす
    伸びられるとき
    伸びんとす
    伸びられぬ日は
    伸びぬなり
    伸びられる日は
    伸びるなり

    われは草なり
    緑なり
    全身すべて
    緑なり
    毎年かわらず
    緑なり
    緑の己に
    あきぬなり
    われは草なり
    緑なり
    緑の深きを
    願うなり

    あゝ 生きる日の
    美しき
    あゝ 生きる日の
    楽しさよ
    われは草なり
    生きんとす
    草のいのちを
    生きんとす





    、、、まど・みちおの 虹
    吉野 弘の 奈々子に 、も、好きな詩です。



  • 2021/07/05
    再読
    ☆☆☆☆☆

    なぜあの頃の私はこの詩集から学ばなかったのだろうと思った。
    こんなにもたくさん、本当のことがあるとは思わなかった。
    再読してよかった。

    以下、個別の詩の感想

    ・二十億光年の孤独 谷川俊太郎
    人が人を求めるのは、もう仕方ないことだ
    宇宙ですらひずんで、膨らんで、不安定なんだもん
    いやぁ、まいったな

    ・われは草なり 高見順

    緑なり
    緑の己れに
    あきぬなり

    の部分、いい。

    ・うさぎ まど・みちお
    どうあがいても自分は自分
    楽しもうよ

    ・春の問題 辻征夫

    きみは
    すなわちぼくで
    ぼくはきみなので
    自画自賛はつつしみたい

    がすごくバランス取れてる
    一生懸命生きてるってすごいけど、それって当たり前じゃんって言えるの強い。

    ・父 吉野弘
    父親になるってこういう感じなのかなって思った

    ・生命は 吉野弘

    世界は多分
    他者の総和

    そのように
    世界が緩やかに構成されているのは
    なぜ?

    にすごく優しさを感じた。

    ・葉月 阪田寛夫
    ああ、失恋ってこんなに馬鹿馬鹿しくて、こんなに面白いんだって分かる。

    ・ふゆのさくら 新川和江
    人と付き合うというならこういう風に付き合いたいと思った

    ・前へ 大木実

    物語は終っても、僕らの人生は終らない。
    僕らの人生の不幸は終りがない。

    これだけ抜粋すると悲観的なのかなと思うけど、すごく前向きな詩でいい。

    ・自分はいまこそ言おう 山村暮鳥

    一生に二どと通らぬみちなのだからつつしんで
    自分は行こうと思うと

    生きることに真摯ってこういうことだよなと思う。

    ・象 高村光太郎

    今に鉄砲でもうつだろう。

    象はゆっくり歩いてゆく。

    自分らしく生きるというのはこれくらい厳しいことなのだと教えてくれる。

    ・リンゴ まど・みちお
    存在はある、ないのそれだけで何か訴えてくるんだってことをよく捉えてる。

    ・滅私奉公 吉野弘
    滅私奉公が壊滅原理だって、ピンとくるとすごく刺さる。

    ・用意 石垣りん
    今は分からないけど、自分が衰えたなと感じた時沁みそうな予感。

    ・鄙ぶりの唄 茨木のり子
    国旗掲揚国歌斉唱に反対してた先生たちはこれを言えばよかったのに。国歌には血塗られた歴史があるから、それを子どもたちに押しつけるのがイヤだと素直に言えばよかったのに。

    ・歌 中野重治
    詩人はこうありたいという意志の「うた」だ。

    ・街 与謝野晶子
    ありゃ、これは理想郷だ。
    みんなが素直で正直で誠実ならこうなるはずの街が描かれてる。

    ・倚りかからず 茨木のり子
    ・紙風船 黒田三郎
    ・かなしみ 谷川俊太郎
    ・芝生 谷川俊太郎
    人間として生きることの喜びと悲しみを感じる詩がどっと来た。

    ・奈々子に 吉野弘

    ひとが
    ほかからの期待に応えようとして
    どんなに
    自分をだめにしてしまうか
    お父さんは はっきり
    知ってしまったから。



    ひとが
    ひとでなくなるのは
    自分を愛することをやめるときだ。

    この詩に付け足すことは何もない。ごく当たり前なのに、私が忘れがちなことを思い出させる。


    2014/11/15

    われは草なり 高見順
    奈々子に 吉野弘
    が気に入りました。

  • 「ポケット詩集 Ⅱ」 (株)童話屋
    2001年 10/19 初版
    2011年 8/28 第16刷

    かの大戦が人々に落とした影は
    とてつもなく大きい。

    言葉の端々に
    幸せを求める優しさと

    幸せを求め過ぎる戒めがある。

    瑞々しい言葉が痛いほど沁みてくるのよ。

  • 我は草なり 高見順
    我は草なり伸びんとす
    伸びられるとき伸びんとす
    伸びられぬひは伸びぬなり
    伸びられる日は伸びるなり
    我は草なり緑なり
    全身すべて緑なり
    毎年変わらず緑なり
    緑の己にあきぬなり
    我は草なり緑なり
    緑の深きを願うなり
    ああ生きる日の美しき
    ああ生きる日の楽しさよ
    我は草なり生きんとす
    草の命を生きんとす

    雪 三好達治
    太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ
    次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降りつむ



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