ポケット詩集 (2)

制作 : 田中 和雄 
  • 童話屋
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  • / ISBN・EAN: 9784887470248

感想・レビュー・書評

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  • まど・みちおさんの、 うさぎ という詩が、とても好き。


    うさぎ      まど・みちお

    うさぎに うまれて
    うれしい うさぎ
    はねても
    はねても
    はねても
    はねても
    うさぎで なくなりゃしない

    うさぎに うまれて
    うれしい うさぎ
    とんでも
    とんでも
    とんでも
    とんでも
    くさはら なくなりゃしない



    、、、この詩も、好きです。


     われは草なり      高見 順

    われは草なり
    伸びんとす
    伸びられるとき
    伸びんとす
    伸びられぬ日は
    伸びぬなり
    伸びられる日は
    伸びるなり

    われは草なり
    緑なり
    全身すべて
    緑なり
    毎年かわらず
    緑なり
    緑の己に
    あきぬなり
    われは草なり
    緑なり
    緑の深きを
    願うなり

    あゝ 生きる日の
    美しき
    あゝ 生きる日の
    楽しさよ
    われは草なり
    生きんとす
    草のいのちを
    生きんとす





    、、、まど・みちおの 虹
    吉野 弘の 奈々子に 、も、好きな詩です。



  • 日本を代表する多くの詩人たちの詩が網羅されている。若かった頃に好きだった石垣りんさんの「倚りかからず」は入っていたが、残念ながら「表札」はなかった。改めて検索して読み返し書き留めておくことにしました。
              

                表札
                         石垣 りん
    自分の住むところには
    自分で表札を出すにかぎる。

    自分の寝泊まりする場所に
    他人がかけてくれる表札は
    いつもろくなことはない。

    病院へ入院したら
    病室の名札には石垣りん様と
    様が付いた。

    旅館に泊まっても
    部屋の外に名前は出ないが
    やがて焼き場の鑵にはいると
    とじた扉の上に
    石垣りん殿と札が下がるだろう
    そのとき私がこばめるか?

    様も
    殿も
    付いてはいけない、

    自分の住む所には
    自分の手で表札をかけるに限る。

    精神の在り場所も
    ハタから表札をかけられてはならない
    石垣りん
    それでよい。

    年々いわゆる堅いモノがつくづく嫌になってきた。軽快な雰囲気に惹かれていく。そこで、本作に収められていたイチオシ。       


              春の問題          
                         辻 征夫

    また春になってしまった
    これが何回めの春であるのか
    ぼくにはわからない
    人類出現前の春もまた
    春だったのだろうか
    原始時代には ひとは
    これが春だなんて知らずに
    (ただ要するにいまなのだと思って)
    そこらにやたらに咲く花を
    ぼんやり 原始的な眼つきで
    眺めていたりしたのだろうか
    微風にひらひら舞い落ちるちいさな花
    あるいはドサッと頭上に落下する巨大な花
    ああこの花々が主食だったらくらしはどんなにらくだろう
    どだいおれに恐竜なんかが
    殺せるわけがないじゃないか ちきしょう
    などと原始語でつぶやき
    石斧や 棍棒などにちらりと眼をやり
    膝をかかえてかんがえこむ
    そんな男もいただろうか
    でもしかたがないやがんばらなくちゃと
    かれがまた洞窟の外の花々に眼をもどすと・・・・・
    おどろくべし!
    そのちょっとした瞬間に
    日はすでにどっぷりと暮れ
    鼻先まで ぶあつい闇と
    亡霊のマンモスなどが
    鬼気迫るように
    迫っていたのだ
    髯や鬚の
    原始時代の
    原始人よ
    不安や
    いろんな種類の
    おっかなさに
    よくぞ耐えてこんにちまで
    生きてきたなと褒めてやりたいが
    きみは
    すなわちぼくで
    ぼくはきみなので
    自画自賛はつつしみたい
         

    • あおいそらさん
      私は雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです。たしかに、どちらも青いですね〜!

      辻征夫さん、気になって調べたら、なんと同じ町に...
      私は雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです。たしかに、どちらも青いですね〜!

      辻征夫さん、気になって調べたら、なんと同じ町に住んでいたのだとわかりびっくり。詩集も読み始めました。辻さんの緩くて肩の力の抜けた詩に癒されます。雨について書かれた詩もありましたよ。「雨」「虻」おすすめです。
      2022/10/24
    • しずくさん
      えっ、まさか、まさかそうだったの!
      そらさんは関東にお住まいなのね?

      >雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです
      そう、あ...
      えっ、まさか、まさかそうだったの!
      そらさんは関東にお住まいなのね?

      >雨の振り初めの、もや〜とした匂いがとても好きです
      そう、あの雨の匂いがすると雨が降り始めると思われ嬉しくなるのです。長く雨音を聴けない時は、YouTubeの自然音を流したりするぐらい。
      あおいそらさんにはお気の毒かもしれない(笑)

      今、そらさんのコメントに気付きましたが、実は私も昨日彼の詩集を4冊借りて来ています。

       雨                 

        耳たぶにときたま
        妖精がきてぶらさがる
        虻みたいなものだが 声は静かだ
        「いまなにをしているの?」
        街に降る雨を見ている
        テレビは付けっぱなしだが
        それはわざとしていることだ
        だれもいない空間に
        放映を続けるテレビ
        好きなんだそういうものが
        (それでなにをしているの)
        雨をみている
        雨って
        ひとつぶひとつぶを見ようとすると
        せわしなくて疲れるものだ
        雨の向こうに
        工場とか
        突堤の先の
        あれはなんだろう
        流木だかひとだかわからない
        たとえばああいうものを見ながら雨のぜんたいを
        見ているのがいちばんいい
        そういうものなんだ 雨は
        (むずかしいにね ずいぶん)
        何気ないことはなんだってむずかしいさ
        虻にはわからないだろうけど
        (妖精よ あなたの雨の ひとつぶくらいのわたしですけれど)

                         『河口眺望』 より

      素敵な詩ー、紹介して下さってありがとうございます。「虻」は見当たらないの・・・。もしかすると、「雨」の中に2度出てくる「虻」かな?
      こうしてお話しできるのはブクログのおかげさま。
      2022/10/25
    • あおいそらさん
      ぴんぽん! しずくさんの長崎からは遠いですね~

      辻さんのひょうひょうとした表現で、物事に誠実に向かい合っていて優しい感じが好きです。私...
      ぴんぽん! しずくさんの長崎からは遠いですね~

      辻さんのひょうひょうとした表現で、物事に誠実に向かい合っていて優しい感じが好きです。私もあれこれ読んでみました。
      「虻」は【みずはつめたい】(理論社)に「雨」と対のようにのっていますよ。気になる詩は「地下鉄」「蟻の涙」「かぜのひきかた」「遠足の日に」などなど。子供たちとも共有できる感性に紛れて、大人向け(!)の詩がときどきあって、ぐっときます。
      これから谷川さんとの対話は読むのが楽しみです。

      やはり、サラリーマンを描くように、原始人に思いを馳せる感覚、なかなかないなあ。「四月の問題」はとても気に入りました。
      2022/10/28
  • キラキラした言葉の宝石を散りばめたような詩集。
    著名な詩人たちのとびきり上等の詩集。

    素晴らしいのは、編者の田中和雄さんのまえがきです。

    「子どもたち、詩を読みなさい。とびきり上等のいい詩を読みなさい。
    いい詩というのは、詩人が自分の思いをどこまでも深り掘りさげて普遍にまで届いた詩のことです。
    詩人の仕事は、生きる喜びをうたうことです。いい詩はみんな、生きる喜びにあふれています・・・
    この詩集を、ほんとうの子どもたちと、子どもの心を持った大人たちに捧げます」
    まえがきを読むだけでも、心が暖まります。

  • 「ポケット詩集 Ⅱ」 (株)童話屋
    2001年 10/19 初版
    2011年 8/28 第16刷

    かの大戦が人々に落とした影は
    とてつもなく大きい。

    言葉の端々に
    幸せを求める優しさと

    幸せを求め過ぎる戒めがある。

    瑞々しい言葉が痛いほど沁みてくるのよ。

  • あの頃わからなかったことが今は分かる。
    そんな詩がたくさんある。なんであの頃はこれらの詩の意味の重要さに気づかなかったんだろう。
    だけど、解らないときに出会って、そしてもう一度読み返したからこそ、感銘深く感じるのかな。

  • まど・みちおが「うさぎに/うまれて/うれしい/うさぎ」と歌う、その生命と個と一度きりの瞬間の肯定感、というものに甲本ヒロトに近いものを感じる。この詩一篇だけでもう、何もいらなくなる。

    そしてまた、大好きな茨木のり子の有名な「倚りかからず」が、ジョン・レノンの「GOD」に形式から内容まで酷似していることに気づいて驚く。茨木のり子はレノンを聴いてはいなかったろうけれど。
    同じ事を同じ様に考える人はいるものなのだ。
    ただ、ジョンは「ヨーコと僕だけ」、と宣言しているが茨木さんは「椅子の背もたれだけ」というのが寂しい。

  • 優しい言葉がたくさんのっている。
    わりと新しいものが多い。
    わりと前向きな感じのものが多い。

    とても優しい。
    この本にとても救われた。

  • たとえば下の「教科書でおぼえた・・・」に比べて、金額のわりに詩の数はそう多くないのだけれど、一篇一篇をゆっくり味わって読める本。味わい深い本。一生手元に置きたいと思うところの。23 May 2007

  • 高村光太郎「道程」(1914)から茨木のり子「倚りかからず」(1999)まで、24人43篇の近現代詩アンソロジー、3年ぶりの二冊目。たぶんどこかで目や耳にしたことのある作品のほうが多いと思う。

    「倚りかからず」はほんとうに好き。

  • 2021/07/05
    再読
    ☆☆☆☆☆

    なぜあの頃の私はこの詩集から学ばなかったのだろうと思った。
    こんなにもたくさん、本当のことがあるとは思わなかった。
    再読してよかった。

    以下、個別の詩の感想

    ・二十億光年の孤独 谷川俊太郎
    人が人を求めるのは、もう仕方ないことだ
    宇宙ですらひずんで、膨らんで、不安定なんだもん
    いやぁ、まいったな

    ・われは草なり 高見順

    緑なり
    緑の己れに
    あきぬなり

    の部分、いい。

    ・うさぎ まど・みちお
    どうあがいても自分は自分
    楽しもうよ

    ・春の問題 辻征夫

    きみは
    すなわちぼくで
    ぼくはきみなので
    自画自賛はつつしみたい

    がすごくバランス取れてる
    一生懸命生きてるってすごいけど、それって当たり前じゃんって言えるの強い。

    ・父 吉野弘
    父親になるってこういう感じなのかなって思った

    ・生命は 吉野弘

    世界は多分
    他者の総和

    そのように
    世界が緩やかに構成されているのは
    なぜ?

    にすごく優しさを感じた。

    ・葉月 阪田寛夫
    ああ、失恋ってこんなに馬鹿馬鹿しくて、こんなに面白いんだって分かる。

    ・ふゆのさくら 新川和江
    人と付き合うというならこういう風に付き合いたいと思った

    ・前へ 大木実

    物語は終っても、僕らの人生は終らない。
    僕らの人生の不幸は終りがない。

    これだけ抜粋すると悲観的なのかなと思うけど、すごく前向きな詩でいい。

    ・自分はいまこそ言おう 山村暮鳥

    一生に二どと通らぬみちなのだからつつしんで
    自分は行こうと思うと

    生きることに真摯ってこういうことだよなと思う。

    ・象 高村光太郎

    今に鉄砲でもうつだろう。

    象はゆっくり歩いてゆく。

    自分らしく生きるというのはこれくらい厳しいことなのだと教えてくれる。

    ・リンゴ まど・みちお
    存在はある、ないのそれだけで何か訴えてくるんだってことをよく捉えてる。

    ・滅私奉公 吉野弘
    滅私奉公が壊滅原理だって、ピンとくるとすごく刺さる。

    ・用意 石垣りん
    今は分からないけど、自分が衰えたなと感じた時沁みそうな予感。

    ・鄙ぶりの唄 茨木のり子
    国旗掲揚国歌斉唱に反対してた先生たちはこれを言えばよかったのに。国歌には血塗られた歴史があるから、それを子どもたちに押しつけるのがイヤだと素直に言えばよかったのに。

    ・歌 中野重治
    詩人はこうありたいという意志の「うた」だ。

    ・街 与謝野晶子
    ありゃ、これは理想郷だ。
    みんなが素直で正直で誠実ならこうなるはずの街が描かれてる。

    ・倚りかからず 茨木のり子
    ・紙風船 黒田三郎
    ・かなしみ 谷川俊太郎
    ・芝生 谷川俊太郎
    人間として生きることの喜びと悲しみを感じる詩がどっと来た。

    ・奈々子に 吉野弘

    ひとが
    ほかからの期待に応えようとして
    どんなに
    自分をだめにしてしまうか
    お父さんは はっきり
    知ってしまったから。



    ひとが
    ひとでなくなるのは
    自分を愛することをやめるときだ。

    この詩に付け足すことは何もない。ごく当たり前なのに、私が忘れがちなことを思い出させる。


    2014/11/15

    われは草なり 高見順
    奈々子に 吉野弘
    が気に入りました。

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