天人女房: 日本のむかし話

著者 :
  • 童話館出版
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887500679

作品紹介・あらすじ

昔話絵本『天人女房』の天人は天上界に住んでいて、空中を飛ぶことができる超自然的存在-神さまの一人です。地上に住む普通の男にすぎない牛飼いが天人を女房にしたら、何が起きたか、はたして二人は幸せになれるのか、それを語ってくれるのがこの物語です。

感想・レビュー・書評

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  • 「天人女房」は、「羽衣伝説」とか「たなばた」ともいわれ、七月七日に行われる七夕祭りの由来の話ともなっているそうで、知っているようで、実はよく知らなかった、七夕のお話を読みたいと思い、いつもの図書館で借りてきました。


    「太田大八」さんの、高貴で品のある、艶やかな美しさを纏った天女に、多彩な色使いで素朴ながらも、神秘的な自然の描写も印象的な中、始まる物語は、まず、天から降りてきた二人の天女が、川で水遊びをしている姿に一目惚れした、牛飼いの男が、羽衣を一枚、自分の背負い籠に隠してしまう。

    そして、天に帰りたくても羽衣が無いため帰れずに泣いている天女に、男は素知らぬ振りで近付いて、しれっと自分の家に連れて行くという、えっ!?
    こんなあっさりとついて行って、大丈夫なのか。
    しかも、その次のページで二人は、既に夫婦になって七年経過しており、子どもも二人生まれて、幸せそうに暮らしている・・・まあ、良かったのかな。

    しかし、その後、とあるきっかけで羽衣の隠し場所を知った天女は、羽衣を纏って子ども二人も腕に抱えて、天に帰るが、ここで天女が男に置き手紙を残していった事に驚き、要するに、天女は嘘をついた男のことを許してあげたということなのかと思ったら、その手紙の内容が、「わたしと子どもが恋しくば、天にのぼってきてくだされ」と、なにやら男の愛を試すような感じもあり、さて、男はそれに勇ましく応えるのかというと、天への行き方が分からずに一人落ち込むだけで、さすがにこれは終わったかなと思ったら、何故か、となりの人が天に昇る術を知っていたという、これってご都合主義的展開?
    それとも、さり気なく天女が教えていたのか?

    まあ、それはともかく、男は大事なものを埋めようとして、牛のところへ行ったら、ちょうど牛も倒れて死んでいたというミラクルが続く中、それでも男は泣く泣く牛を埋めて、待っていたら、天へと続く金竹が生えて伸びだしてきて、七日待てと言われていたのに、待ちきれず、六日目に犬を連れて昇り、もうちょっとのところで届かないところは、犬を投げ上げて、そのしっぽにつかまり、やっと天の国に上がれたという、あんた、そんなに天女や子どものこと・・・というか、犬も凄いな。

    そして、ついに天女や子どもたちに再会する事が出来て、太田さんの絵だと、本当にみんな嬉しそうな顔をしているのが分かる中、天女は、ここでは何事もわたくしの言うとおりにしないと、ここにおられんようになると、よく言い含めておき、男は早速、天女の父神と母神のところへ行き、この家の婿にしてくれとお願いする。

    すると、「わしのいうことを、のこらずできたら、むこにしよう」と、昔話によくある展開となるが、ここでの要求がまた凄まじく、いずれも、天女のアドバイスが無かったら、おそらく出来なかったものばかりで、私には、天女の夫として、これだけの頼もしさを要求しているというよりは、絶対に男を婿にしたくない、父神の無慈悲で絶対的な意志を察せられるようで、まあ、神と人間が夫婦になるというのが、そもそも神の逆鱗に触れるような、人間の思い上がりだと捉えられなくもない気もするが、それにしても、父神の目の前でも平気で、それに反するようなアドバイスをする天女の愛は凄いなと思いつつ、ついに父神の前ということもあり、それに従うことの出来なかった男は、逆巻く水の中に落ちてしまった。

    天女は急いで機の棒を差し出したが届かず、それならばと、自ら座っていた敷板を投げ込んで、ようやくそれに捕まった男だったが、それでも流されてゆく。ああ、これは辛いなあ・・・と、この後は、私も知っている、あの有名な勘違いである。

    「月に一どは、あってくだされ」

    声は、ゴウゴウとうずまく波の音で、ききとれん。
    夫は、

    「年に一どか。わかった」と、へんじした。

    ああ、年に12回会えていたのかもしれないのにと思うか、天に留まり続けることが出来、年に一度だけでも天女に会えて嬉しいと思うかは、人それぞれだと思いますが(そもそも当人にとっては聞き取れてないから、嬉しいんだろうけど)、その後の展開は、なんとも夢のある壮大なもので、改めて人間も宇宙の一部なんだということを実感させられる。


    ちなみに巻末には、本書の再話、「稲田和子」さんの『「天人女房」について』という、天人女房について更に詳しい解説と、そこから日本のたなばた伝説となった七夕祭りの歴史など、興味深い事柄が色々書かれており、それは、このお話が中国で2世紀頃の古詩まで遡ることや、日本だけに限らず、朝鮮半島や東南アジアからヨーロッパまで世界の広範囲に類話がある人気の話で、バレエの「白鳥の湖」の原典のひとつも、白鳥乙女伝説だといわれていることに加えて、改めて七夕祭りが、五節供の一つで、五色のたんざくに、願い事を書いて笹竹につるし、庭先などに立てて星祭りをする伝統行事であることを実感出来たことも、私にはとても新鮮で、大人一人で、七夕祭りというのもなんですが、ふと夜空を見上げて、今年も無事二人は会えたかなと考えるのも悪くないなと思いました。

  • 高学年から。
    長い。

  • 読み聞かせをしました。

    牛飼いの男がかわいそうだと言いながら、話に入り込んで聞いていました。最後の展開で、私は、へぇーと思いましたが、子どもたちの反応はそこまででした。
    次に読み聞かせするときには、七夕の時期にしたいなと思いました。

  • 2021/01/24 5歳1ヶ月

  • 6歳娘に、図書館から。初めは天女の話なのに最後が織姫彦星になり、え⁈となる。子供は何で星になったの?と娘に聞かれ、私も分からず。でもなんか面白いようで、3回は読んだ。

  • 29年度  4-1
    14分

  • ちゅうとかあったけど、おもしろかった。

  • 天女の羽衣の昔話。
    2人の天女のうち、1人の羽衣を隠す。
    父親が歌っていた歌から羽衣の場所を知って天女は天へ帰る。
    一番大切なものを埋めろという助言に、馬が死にそこから竹が生えるが、犬が待ちきれずに飛びついて少し足りないところで成長が止まるが何とか雲の上に飛びつく。
    妻の父親は色々な難題を出してくるが妻の助言でなんとか切り抜ける。
    たくさんの瓜を収穫して来いと言われるが、1頭の馬に載せるだけで残りの瓜がみんな残りの馬に勝手に載るなど。
    しかし、最後に瓜を切る方向を間違え、大きな川になって2人は離れ離れに。
    1ヶ月に1回は会いたいという妻の言葉を1年に1回と聞き間違え、1年に1回七夕の日だけ会うことが許される。

    天の川の伝説と融合しているのが面白い。
    そんなパターンもあったとは知らなかった。

  • 2012年度  6年生

  • 七夕の話ではこれが一番好み

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著者プロフィール

稲田和子(いなだ かずこ) 1932年、岡山県生まれ。1955年ごろから昔話の採集、研究に着手。山陽学園短期大学名誉教授。再話に『くわずにょうぼう』『しょうとのおにたいじ』(以上、福音館書店)『天人女房』(童話館出版)、編著書に『日本昔話百選』(共著、三省堂)『かもとりごんべえ』(岩波書店)『子どもに語る日本の昔話 全3巻』(共著、こぐま社)などがある。

「2016年 『うりひめ と あまんじゃく 日本の昔話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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