デザインするな: ドラフト代表宮田識

著者 :
  • DNPアートコミュニケーションズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887523128

作品紹介・あらすじ

本書は、クリエイティブディレクター/アートディレクター宮田識が代表を務めるドラフトを描く。ドラフトという広告デザイン会社の活動を通して、感性が、広告や商品開発、ブランディングへ展開されていく様を描き出し、デザインと社会の関係を語っている。

感想・レビュー・書評

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  • アートディレクター、クリエイティブディレクターは何をすべきかを明確にしてくれる。デザインに関わるすべての人に必読の書。

  • ここで語られているのはデザインの技術ではない。
    宮田識というひとりの人間の人格であり、その力である。
    小手先のわざや思考法などでは到達しえない、デザインというものを生み出すための生き方そのもののように思える。
    ドラフトのデザイナーたちはなんと幸せなのだろう、とこの歳になって思う。若い頃には入りたいと思ったこともあったけれど今ひとつ気後れして踏み出す勇気が出なかった。その消極性がそもそも駄目なのだと思う。このような人にしっかり怒られて、苦労するという経験はきっと何ものにも代えがたいだろう。

    今はただこんなアートディレクターがいることが、嬉しい。

  • なぜだか無性にデザインがしたくなった。

  • 表現とは世界観を作る、それはただ作るではなくて商品の今後や開発などが作ろうと思った考えやそういうものを含むのもあるのだと感じた。

  • 久しぶりに一冊読みきった。僕この会社はいる。

  • 庭のあんずの狂い咲きに感づく、かどうか。

  • 「思いを形にするのがデザイン」「人や企業や社会がどうあるべきかを思い描いて実現していくのがデザイン」「思いがあるからイメージが生まれる」「志、仕組み、表現があれば道は見えてくる」などなど、こころにメモしておきたいフレーズがたくさんでした。

  • 本書は、広告やグラフィックデザインを手がけるデザイ
    ナー集団DRAFT(ドラフト)を率いる宮田識氏に関する初の評伝で、
    著者はデザインジャーナリストの藤崎圭一郎氏です。

    ドラフトは、一般的な知名度はあまり高くないかもしれませんが、
    モスバーガー、PRGR、キリン一番搾り、淡麗、世界のKitchenから、
    ラコステ等、国民的なブランドの成功を支えてきた、知る人ぞ知る
    クリエイティブ集団です。

    ドラフトの特徴は、一つのクライアントと、時には20年にも及ぶ長
    期間にわたって仕事を続けることです。また、単に広告やグラフィ
    ックデザインを手がけるだけでなく、売る仕組みや経営戦略的な部
    分も含めてデザインしてしまうことにも特徴があります。小手先の
    デザインではなく、商品や企業や社会はどうあるべきかという視点
    から、本質を見極め、形にしていくのが、クリエイティブディレク
    ター宮田識の姿勢であり、ドラフトの方法論なのです。

    違和感を見逃さず、本質を真摯に追求する宮田氏の言動は、その正
    直さゆえに、多くの人を魅了します。怒鳴り続けても、人が集まり、
    人が育つのは、そんな宮田氏のブレのない正直さが根っこにあるか
    らでしょう。しっかりと根を張った巨木のようなブレのなさに人は
    惹かれます。そして、その巨木に守られ、励まされるから、周囲の
    動植物達は自らの生命を花開かせることができる。ドラフトという
    集団を見ていて思い浮かべるのは、そんなイメージです。

    本書は、「道を識(し)る」「道を定める」「道を行う」「道をつ
    なぐ」という4部構成で、意外と遅咲きだった宮田氏の足跡を辿り
    つつ、その思想やドラフトの方法論を解き明かしていきます。「道」
    は、「ディレクター道」のことで、「人を同じ方向に向わせ、個性
    を尊重して、いっしょに成長していく」あり方を意味しています。

    宮田識という一人の人間を通じて語られるこの「ディレクター道」
    に、何かを生み出そうとしている人やリーダー的ポジションにある
    人は、きっと多くを学ぶことでしょう。これからのリーダーが身に
    つけるべき心構えがディレクター道にはあると言っても過言ではあ
    りません。

    3,990円と高価ですが、600ページ近い大部の半分以上は、ドラフト
    の作品写真になっています。作品集として後々まで楽しめることも
    考えると、決して高くはありません。是非、読んでみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    「個性はすでにその人が持っているもので、つくるものではない。
    個性を出すには、まず自分のことをよく理解することです」

    「デザインとは思いを複写することと考えると、グラフィックデザ
    インもファッションデザインもプロダクトデザインも建築もみんな、
    デザインという意味で同じものになる。(中略)自分の思い描く世
    界観を形にするという意味では、誰もがみなデザイナーなのです」

    「僕は、そもそも人や企業や社会がどうあるべきかを思い描いて、
    それを実現していくことがデザインだと思っている。そう考えると
    絶対に必要なことです、デザインは」

    ディレクションとは道を示すことだ。志があるから、進むべき道が
    見える。そもそも何のために歩むのか。そこに立ち帰られるから、
    道を誤れば、引き返して、新しい道を探すことができる。
    道を識る人が描き出す表現は力強い。人の心に響きわたる。

    「お金がないから映画館にも行けない。お茶も飲みに行けない。だ
    から歩いたんです。歩いたら、何かにぶつかる。じっとしていても、
    ぶつからない。朝から何も見つからなくても、疲れたと言わず、ず
    っと歩きつづける。不思議と見つかるんだよね。意志があれば必ず
    何かにぶち当たる。そのことは、いまもずっと信じてます」

    「『思い』がない写真は、単なる商品撮影なんだよね。技術のある
    カメラマンなら誰でも撮れる。思いがあるからアートディレクター
    の写真になる。思いが形を変えるんです」

    「ルールは変わるけど、マナーは変わらない。ルールは約束事です。
    規則や決まり事は、組織によって違うし、時代に合わせて変わって
    いく。マナーは、他の人に気持ちよいと感じてもらいたいと思って
    自ら率先して行うものです。人を思いやる気持ちは、いつの時代も
    変わりませんよね」

    「デザインは単純にカッコいいものをつくるだけじゃ済まされない。
    その商品やそれを売る企業が、社会から『ここにいてもいいよ』と
    認めてもらえるようにすることがデザインなんだよね」

    たとえ広告であっても、本当のことをやろうよ、本当のことじゃな
    いと伝わらないよ。そういう宮田の思いに、人がついていく。
    本当のものを見つけて、本当のことを伝えたい。その思いが、宮田
    識の真髄だと思う。

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    ●[2]編集後記

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    東京でも桜が開花しました。10年ちょっと前、4月上旬に結婚式を
    挙げた時には、千鳥が淵の桜がちょうど満開だったことを思うと、
    開花が年々早まっていることを実感します。やはり着実に地球は温
    暖化しているのでしょうか。

    それにしても桜は本当に日本人にとって特別な花ですね。梅やボケ
    の方が春の訪れを告げる意味では印象深い花だと個人的には思いま
    すが、桜の国民的人気にはかないません。そんなに桜に思い入れが
    なくても、この時期は、花見をしないと、何かとても大切なものを
    逃してしまった気になるから不思議なものです。

    サクラの「サ」は、サツキ(五月)のサ、サナエ(早苗)のサ、サ
    オトメ(早乙女)のサと同じく、稲田の神霊=田の神を指すのだそ
    うです。「クラ」は、その神が依りつく場所のことを意味する言葉
    と解されますから、サクラとは、稲穀の神霊の依る場、という意味
    になります(和歌森太郎著『花と日本人』角川文庫)。

    山の神は春先に里に降って、田の神になるとされてきた伝承と合わ
    せると、山から降りてきた神が、田の神となって休息するのが桜の
    花ということになります。つまりは、山の生命力が稲の生命力に転
    化する境界線に花開くのが桜なのです。そう言われると、桜の花が
    特別視される理由がわかる気がしますね。

    なお、花見は、桜に依る神の霊力を鼓舞するために酒を飲み、踊り、
    囃し立て、男女が睦み合う行為に原型があるようです。山から降り
    てきた霊力に接しつつ、その霊力をさらに増幅させる、そういう花
    と人との交歓のプロセスとして花見は生まれてきたらしいのです。

    桜は静かに愛でるものではなく、囃し立てて見るのが、神に対する
    礼儀なのですね。そう考えると、桜の樹の下でのドンチャン騒ぎも、
    眉をひそめるものでなく、むしろ歓迎すべきものなのでしょう。

  • DRAFTの代表、宮田さんの仕事観やそこから生まれた作品などなどについての本。思想と信念、人を育てるという意識をめちゃくちゃ感じられた。いいデザインとは表面ではなく、対象への理解と明確なコンセプト、永続可能な仕組みづくりがあるのだと実感。ものづくりに対する考えもさることながら、人を育てることの意識がすばらしいと思った。

    『あるタイミングで、ある「場」を与えてあげれば、その人がパーッと伸びる可能性がある。飛躍する場を与えてあげないまま、見切ったり、その人に合わない場を与えてしまったりすると、本当に伸びなくなる。真剣に付き合っていれば、いつかは伸びる』

    確かに、できる人が集まってきているのだろうけど、そこを更に伸ばすから優秀な人が輩出されてるのだろうなぁと思った。

  • センスのいいデザインを発信し続けているドラフトという会社に興味があって購入。自分が納得した上で仕事をするというのは、当たり前だけど難しい。私も本気で惚れ込んだ人たちと何かを成し遂げたいな。

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著者プロフィール

デザイン評論家、編集者。東京藝術大学美術学部教授。1986年上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。1990-1992年『デザインの現場』(美術出版社)編集長。1993年よりフリーランスライターとして『BRUTUS』『Casa BRUTUS』『Design News』『朝日新聞』などにデザイン、建築関連の記事を寄稿。2010年より東京藝術大学美術学部デザイン科准教授。2016年より現職。著書に広告会社ドラフトの仕事を取材した『デザインするな』(DNP アートコミュニケーションズ、2008年)。デザイン雑誌『AXIS』にて生物学を中心に科学者を取材する「SciTech File」を連載(2017年-現在)。生命進化との比較を通じて、人間の営みとしてのデザインとは何か? を考えるのが最近の関心事。

「2019年 『デザインに哲学は必要か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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