仕事と幸福、そして人生について

  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887596832

感想・レビュー・書評

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  • ビジネスパーソンなら、一度は
     「この仕事、疲れたな……」
     「何のために働いてるんだろう」
     「ホントは違うことがやりたかったのに……」
    と思ったことがありますよね。

    そんな時に読むと、なんとなく前向きになれる本です。


    この書籍の最も言いたいことは
    『仕事を通しての最も豊かな報酬は
    「仕事をすること」自体である。』
    ということ。

    つまり、仕事を通した経験が自分を磨く財産となる、
    ということが書いてあります。

    そして、仕事に対して「自分」を主体として考えることを
    おすすめしています。
     「『自分が』仕事と生活のバランスが良いと思えばそれで良い」
     「『自分が』向上するためにどうするか考える(他人との比較ではなく)」
     「自分の行動の主体は『自分』である」
     「最高の仕事の基準は『自分で』決める」

    さらに、仕事とは広い視野で眺めればひとりひとりの仕事は
    (殆どの場合)人に誇れる仕事である。

    と言っています。

     たしかに、自分から率先して仕事をしたほうが
    やらされ仕事よりよほど楽しいですし、
    そこから得られる経験も大きくなります。
    たとえ、それが失敗だったとしても。

    また、余暇の使い方についても
    「よりよい仕事をするためのストレッチ」
    「仕事だけでは得られない楽しみを得る場」
    としています。

    その意味で、「仕事」と「余暇」は相互補完の関係にあります。


     この本を読みながら、自分の仕事ぶりについての反省と
    考え方を見つめ直すと、きっと前向きに慣れると思いますよ。

  • 【働く理由・働く目的(1章, 3章)】
    本書の最も言いたいことは、「仕事の最も豊かな報酬は、仕事をしているという行為そのものの中にある」ということだ。
    21世紀になり、人は「仕事を持つ」働き方から、各人が「仕事をする」働き方に変化しつつある。その中で、仕事は、人を抑圧するものという見方と、人生に意味を与えるものという2つの見方がある。しかし、仕事は自分で選ばないといけない以上、何かの基準で仕事を選択しないといけない。筆者曰く、最も満足し喜びを得られる仕事は「自発的に自分の意志で行い、仕事の進め方やその結果生み出されるものが、自分のスタイルや価値観を反映しているものとなる仕事」であると述べている。別の言い方をすると、仕事は”創造的”である必要がある。いつでも新鮮な気持ちでわくわくして仕事に臨むためには、「①物事に取り組む情熱」「②失敗を恐れない勇気」「③体面を気にしないユーモア」「④偏見や先入観のない眼」を持って仕事をすることで創造的な仕事ができるのである。

    印象に残っている名言
    ーわたしはいつも、「何者」かになりたいと思っていた。今から思えばもっとはっきり決めておくべきだったわー   リリー・トムリン

    外圧的インセンティブは継続的かつ本質的なモチベーションにはならない。逆に金銭的なインセンティブは創造性を弱めたり、人間関係を悪化させるリスクもある。「手段としての価値」と「内在的な価値」を混同しないことが重要。仕事においては、生活費を稼ぐという手段としての価値を重視しすぎず、「内在的な価値」に目を向けるべき。ここで筆者は、内在的な価値のある仕事の特徴を4つ挙げている。それは、「新しいことに対する好奇心を持ち続け」、「自分の能力をフルに発揮してぎりぎりできるかどうかの適切な難易度であり」、「自分の選択に責任をもてている状態で」、「没入感のあるフロー体験ができる」仕事である。また、フロー体験とは、「明確な目標を目指しながら」「自意識を捨てた状態で」「自主的に新しいものに対して挑戦していること」である。

    印象に残っている名言
    ー人生の真の喜び。それは、偉大であると自らが認めた目的のために自らの力が使われること。ー     ジョージ・バーナード・ショウ

    【自己分析について(5章)】
    自分で考えてキャリアを構築していく時代に、自分の選択や決断に健全な「自信」を持つことは不可欠である。自己評価の2つの方法は、「自分の過去に注目する方法」と「他人からの評価に注目する方法」である。どちらも陥りやすいリスクを孕んでいるが、「自己評価の正当性を他人の評価で補強する」という重要な側面がある。適切な自己評価により自信を得る方法は、「過大評価しないように自分の限界を知り(できることとできないことを正確に知る)」「挑戦する際の心の支えとなるための過去の結果に問わられない楽観主義」を持って「自身の行動による成功体験によって自尊心を保つ」ことである。そのためには、他人の評価に真摯に耳を傾ける姿勢をもち(←自分の限界を知るため)、自立を支える内面の核(≒外部に依存しないための楽観主義の源泉)と知的な誠実さ(≒自尊心を傷つける行動をしないこと)が重要である。
     
    【ワークライフバランス・余暇(2章, 6章)】
    ワークとライフの適切なバランスなんてない。
    自分の仕事を誇れるものかどうかは大切。
    会社や従業員が忠誠心で結ばれることはもうない。これからは、自分の能力そのものに忠誠心を尽くすべき。会社ではなく、自分の仕事と、その仕事を尊重し励ましてくれる職場に、忠誠心を尽くすのだ。

    仕事が世界を創造していくことだとするならば、余暇は自身を創造していくことである。一か八か賭けをするような「遊び」の要素を含み、予期しなかった自分の姿を発見することが余暇の意義。長時間の散歩、思索に耽る瞑想、友人との会話、スポーツなど、手段はなんでも良いが、活動自体に没頭して満足感を得られることが余暇の本質である。要は、内在的に価値があることに対して好奇心の赴くままに没入し、仕事のことを忘れて、振り返った時に自身の態度の変化を確認することが望ましい。

    【成功の基準(4章)】
    前提として、自立したキャリアを歩むためには、自分自身で成功を定義づけしないといけない。そして、他者が自分と相容れない成功の定義が間違っていると思っても、他人の野心を認めて、善悪の判断をしないことが重要になってくる。成功の定義は人によって異なりどんな定義も許容されるが、「成功の目標を達成することよりも、成功に向かって努力する過程を重視し」、「成功の定義は、自分自身の価値観を反映していること」を満たす必要がある。つまり、成功するためには、決めた目標が何であれ、そこにいたるまでの旅もまた楽しめるような選択をすべきである。(欲しいもののために、今必要なものを追っている。その道中に大切なものがきっと落ちている。by H×Hのジン)欲しいものを「持っている」ことよりも、「手に入れる」ことの方が何倍も楽しい。仕事も例外ではなく、仕事によって得られる報酬だけでなく、仕事そのものが、自分が一番大切にしている価値と共にあり、自分の人生をどのように進めたいのかという基準を示すものである。お金に関する結論は、確かに重要だが、それほど重要ではないということ。また、目的としての権力に関しては、それを求めるのは他人を支配したいという弱さからである。成功のための要素として、「競争」と「嫉妬」が挙げられるが、競争は、協力するよりも良い結果は得られず、嫉妬は自分の欲求を知れたり、努力のモチベーションになるというメリットはあるものの、他人の評価を歪ませる悪い側面が強い。リーダーシップとは、「集団を目指すべき場所に連れていくために、そのための方法を伝えるなどの行動を通じて他人に影響力を行使していくこと」である。言い換えると、リーダーシップとは、影響力の有無だけでなく、目指すべきものの価値によって測られるのだ。

  • マーケティング・コンサルタントでありながら、哲学の教授でもあるジョシュア・ハルバースタム氏の著書です。

    本書は2000年に執筆され2003年に出版された本の復刊になります。
    2000年執筆ということと著者がアメリカ人ということで、統計データや生活に影響を与えるメディア等については、現在の日本と合致しない部分もあります。
    しかし、この本が論じている本質部分については、今を生きる日本人にも有用な普遍的なテーマであると思います。

    本書は以下の構成となっています。
    ・仕事とは?仕事の定義
    ・仕事とプライベートの境目
    ・仕事の目的とは?
    ・成功の基準
    ・自己評価
    ・余暇について

    仕事については、普段考えても大きなテーマゆえ、漠然とした内容になりがちです。
    この本は、体系的な切り口で書かれていますので、読む内容に沿って自分なりの考えを確認していくことができます。
    結果的に仕事について、上気した内容を自分なりに考えるとことができます。
    仕事というテーマは働く人にとって永遠のテーマですから、誰が読んでも有用だと思います。

    著書の意見は最期の章にまとめてありますので、最後に確認しやすいと思います。
    ただ、その意見は私の意見とは異なり、やはり人それぞれなのだなと感じました。

    一読の価値のある本と思います。

  • 【読書その34】アメリカの哲学者であり、経営コンサルタントであるジョシュア・ハルバースタム氏の著書。仕事について、ここまで哲学的に考えることは久しぶり。300ページくらいの本ではあるが、その内容は、仕事は苦行か否か。余暇とは何か、給料とは何かなど、考えさせらえるのは多い。また、テーマに合わせて、偉人の名言も多く紹介されており、その言葉の意味の深さに感心させられる。
    その中で気に入ったのは、バーナード・ショウの以下言葉。
    「人生の真の喜び。それは偉大であると自ら認めた目的のために自らの力が使われること。そして、世界が自分を幸せにしてくれないと身勝手な文句を言うのではなく、自分が自然の力となることである。」

  • ■概略
    タイトルの通り、仕事というものが人生においてどのような位置にあり、どのような役割を果たし、
    またそれがどう幸福に繋がるかについて、様々な観点から本質的な指摘をしています。

    例えば近年の傾向として終身雇用から成果主義的な風潮に移り変わりつつある社会について、筆者は
    「われわれは会社にではなく、自分の能力そのものに忠誠心を持つ。
     自分の仕事と、その仕事を尊重し励ましてくれる職場に、忠誠をつくすのである。」
    と述べています。
    「仕事を持つ」のではなく、「仕事をする」のであり、
    「私は○○会社の企画担当です」ではなく「私はデザイナーです」と語るべき時代だと。
    これこそが真のキャリアというものであり、またポータブルスキルとも呼ばれるものなのでしょう。

    ■感想
    上記のように仕事に関係する様々な事柄について新しい知見が多く、真剣に論じられています。
    が、一方で拝金主義や現在の「幸福」に対する一般的価値観を否定するために、
    理想論的で感情論的な、あまり論理的でない部分も、特に後半部分に目立ちました。

    ■一般的見解
    やはり、誰もが本書を読んでおもうことは、「そういうえばあまり考えたことがないなぁ」とうもののようです。
    雇用やワークライフバランスについては活発に論じられていますが、
    そういった目先のことではなくもっと本質的なことについては意外と人は盲目なのかもしれません。
    しかし、本当によく研究され、練られた内容になっています。

    ■総括
    仕事に追われる日々を送る私たちは、こういったことについて振り返る時間も余裕もなく、
    ただひたすら前に突き進むことを強いられている気がします。
    ですが、一度立ち止まって、仕事と幸福、そして人生について考えなおしてみる必要があるのではないでしょうか。
    この本は、そのきっかけとしてお勧めできます。

  • 「WORK」の改訂版。仕事の報酬は仕事であるという稲盛さんの主張に近いものを感じましたが、膨大なデータと研究資料に基づいた主張ということで、説得力がありました。

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