電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

著者 :
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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本棚登録 : 2516
感想 : 421
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784887598089

作品紹介・あらすじ

キンドルに続き、アップルiPad 登場。それは、本の世界の何を変えるのか?
電子書籍先進国アメリカの現況から、日本の現在の出版流通の課題まで、佐々木俊尚が今を斬り、未来を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 4/14までの110円ダウンロード・キャンペーンで購入。パソコン用ビューアをダウンロードしたうえで読んでみた。ビューア自体は簡素なつくりで、文字の少ない新書やビジネス書をサクサク読むにはいいが、文学作品をじっくり読むには正直つらいかもしれない。

    内容はアメリカの電子書籍状況、日本へ導入する際のハードル、そして作者/読者共同体への影響など、バランスがとれていて実に分かりやすい。目からウロコの新しい情報は特にないものの、ケータイ小説を例にとったコンテクスト消費の説明には丁寧なリサーチが冴えているし、情報は信頼できそう。基礎的情報を押さえておくには十分な一冊といえる。

    ところで、この本自体 twitter で情報が流され、講演会が開かれ、安価ダウンロード・キャンペーンが展開され……とコンテクストを意識した戦略をとっているのは明らかで、その辺ディスカバー21(D21)はさすが、と言わなきゃいけない。

    でも、わざわざ出版社ウェブサイトからビューアをダウンロードしたうえで書籍を購入、っていうシステムがとにかく面倒のひとことに尽きる。このビューアでほかに読みたい本があるかといえば相変わらず自己啓発本ばかりが並んでいてウンザリさせられるし。110円のお試しだから投げ銭にも悔いはないが、これで1155円だったら正直まじめに後悔しただろう。

    総じて、このまどろっこしさ、スッキリしない感じこそ、日本の電子書籍事情(目下)そのものなんだろうなぁという印象。

    追記(4/13):
    佐々木さんの Twitter をフォローすると、思考停止した旧弊な日本出版界への苛立ちがひしひしと感じられる。ひとりのユーザ/読者として私は佐々木さんの意見に全面的に賛成だし、それゆえ「当たり前だろ」と思ってしまうわけだけど、この意見は笑ってしまうくらい出版流通界には通用しないようだ。その点で、古い体質の業界に内部から揺さぶりをかけた、本書の意義はいや増す。
    http://twitter.com/sasakitoshinao

  • 電子書籍についてのさまざまな興味あることが説明されている。
    必要性、アテンションエコノミーに有効である。現在、米国では図書館の主導により、書籍の電子化が進んでいる。グーグルBOOKがビジネスでの利用目的の先人を切ったが、著作権の問題があり、図書館に引き継がれることになった。
    有効性、セルフパブリッシング、自ら発表(印刷して出版も)出来る。日本の出版業界の「売れないから、出版する」というジレンマから、抜け出す方法である。良書を育て、悪書を駆逐する手段ともなる。
    出会い、本との出合いの機会にもネットが活用される。また、ネット利用のスキルがなければ、生き残れない。SNSやブログの活用、インフルエンサーの利用など。コミュニケーターとして読者をともに、結末までの一体感を味わう。また、作品とは、著作物のみではなく、作者の発言や行動も、すべてが一連の作品であるとする。

    ビジネス書(自己啓発書)の使い捨て可能なものでは、必要な部分を切り取る利用法で、非常に有効だと考える。
    作者の全てがアートであるとの考え方も分かるが、それでは“謎”がなくなってしまいワクワクしない。

  • アイフォーンにダウンロードして読んだ、自分にとっては初めての電子書籍閲読。頁めくりは画面上で指を左にずらせばできる!やはり、感動でした。寝転がって最後まで一気に読みました。終章に近づくに従って、段々内容に感動。書き手の熱い思いが伝わってくる。紙でも読んで、線を引きたくなった。佐々木さんのすごいところは、一歩先を見ている部分。いつも何かしら独自の見解がある。それに魅かれて本を買う。その洞察力の秘密は哲学書を含め、たくさんの本を読むことだったという。たくさん書けるのもインプットが多いから。溜まった知見を外に出している。すべてをさらけ出しているかに見えて、一定の節度を持ってプライベート部分をオープンに。ニクイ!!まだまだすごい洞察が出るだろうな。好感。彼の本を読むと、希望を持って人生を生きられる。

  • レコード▶CD▶ストリーミングと変遷してきた音楽を例に、電子書籍の登場により本も音楽の同じような道を辿るのかどうかが語られる。

    ざっくりいうと、本の持つ一貫した情報量は音楽のストリーミングのような配信の形にはそぐわない。しかし、ビジネスの目で見ると出版業界の衰退は著しいのが事実である。 と言ったところですかね。

    すごく読み進めやすい1冊であり、とくに音楽の変遷との対比が良い。終盤の「読者からすれば電子書籍に不利益などひとつも無い」とはほんとにその通りだと思いますね。

  • “電子書籍”が普及して紙の本がなくなるかと言えば、答えはNOでありYESである。。。

    人間には手触りが必要である、移ろいやすい電子ではなくまとまったブツと思考が必要である、本屋での逍遙が必要である、あれどっかにあったよなと本棚を、あるいはページを繰って探し回る無駄な時間が必要である…

    などと、私ら紙の本体験がある世代は思い、NOと答えるだろう。そして私らの目が黒い間、紙の本がなくなることはない。

    だがしかし。

    生まれた時からタブレットPCしか触ったことがなく、完全にその世界に最適化された“本”とその読み方しか知らない世代は、当然ながらYESと…いやそうとさえ言わないのではないか。紙の本? なにそれ美味しいの?

    「本を検索エンジンだけで探すようになるとたこつぼ化する」とか「本がバラバラにされて消費されるようになってしまう」と“本”の行く末を危惧する向きがあるそうだが、そういう心配はまったく無意味ではないだろうか。ツールが変わり、世界観が変わり、ニーズが変わり、生活体験が変われば、そこには世代間の断絶だけがあり、「幼年期の終わり」があるのみだ。

    どっちにしても、いずれ出版文化の衰退とか業界・団体の沈降は(TVや新聞、その他既存の権威と軌を一にして)否応なく襲って来るのであり、ワシらの世代の知ったことではない。

  • 電子書籍の流れが分かる。そして、これからどこに向かうのか。

  • 電子書籍や出版業界の現状がわかりやすくまとめられてた。肝心の今後は、書き手と読み手をうまくマッチングできるシステム次第…ってことかなぁ。

  • タイトルから、電子書籍はこんなにすごいといったユーザへの影響が語られているのかと想像していたが、電子書籍がユーザーに与える衝撃と出版界に与える衝撃、が2大テーマだった。後半では、日本の出版界の変遷、構造の解説から、なぜ出版不況を招いたのか、どうして出版人や出版社が電子書籍に抵抗するのか、非常にわかりやすくまとめられていた。。。あとでもう少し書く。

  •  この本には直接的に出版の危機、取次の危機、製本の危機、印刷の危機をあおる文脈は出てこない。著者・佐々木さんがいかに気を使って書かれたか、だ。出版社から出されるコンテンツで“出版の危機”には言及出来ない。kindle,iPadなどのデバイス登場、プラットフォームの整備、ソーシャルメディアの台頭、そして出版社の360度の全方位プロデュース・マネジメント・プロモーション・2次3次利用が始まる、とギリギリの線でまとめきったのだろう。苦心惨憺の新書だ。音楽産業で展開されたことと、ほぼ同様の事が起きると佐々木さんは記すにとどまる。
     実は自分の親は印刷業のリタイヤ組。顧問としておさまっている。この新書を渡したが理解不能の様子。75歳にはkindle,iPad,SNSの世界は、アンビエントとして理解不可能だ。理解できなきゃ現役印刷業の方々に渡してくれ、と頼んだ。デジタル化で消える産業だ。なのに実はこの本には、取次・製本・印刷の各業種についての将来像は、何も書かれていない。
     既存産業の抵抗はまだ、大きそうだ。


     

  • iTunesとiPodが音楽業界の構造を根底から変えてしまったように、出版業界でも今まさに変革の波が音をたてて押し寄せてきている。電子書籍が出版業界と読み手にもたらすインパクトの大きさと、何がどう変わっていこうとしているのかは本書を読めば一目瞭然。今まさに読むべき最高に面白い一冊だ!

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2022年 『楽しい!2拠点生活』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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