防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション: クロスロードへの招待

著者 :
  • ナカニシヤ出版
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784888489348

感想・レビュー・書評

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  • 防災ゲームで多分一番良くできたもの。本棚登録まだだったのでしておこう。ゲームデザイナの人のコラムも参考になる

  • 防災というと、自分が防災グッズを備え、自宅や学校、職場で本棚が倒れないように対処し、自分が帰宅するにはどうすればいいか。

    自分、自分、自分だけで頭がいっぱいではなかろうか。

    しかし、現実は想定外の状況で、想定外の様相になってしまった溢れかえる人たちと共に、生存競争を展開しなければならない。

    RPGで共に戦うことが、突如現実として出現してしまったかのように。

    しかも、共に戦う仲間は、見知らぬ幼児、歩くことも容易でない高齢者、、車椅子やストレッチャーが無くては生きられない身しょう者、普段意思の疎通に慣れていない外国人、言動を理解するのが難しい知的・精神障がい者であったりする。

    全員で、避難、避難所ぐらし、復興、というゲームを展開しなければならない。
    仲間を倒してスコアを伸ばすのではなく、ひとりでも多くの仲間を救い、自分も生き延びなければならない。

    さて、今この感想を書いている、何も起きていない平和な時。本気でそこまで考えているだろうか。

    しかし、考えねばならない。どうやって。

    それを教えてくれるのがこの本で言う災害対応ゲーミング「クロスロード」だ。

    実際の災害で「クロスロード」を進むときに、常にありえないと思える選択に迫られる。
    それはどんな選択か、どんな質問か。今のうちに知っておかねばならない。

    脳を鍛える数独や百ます計算もよいが、阪神淡路大震災、東北地震を経験した私たちは、未曾有の恐怖を体験した人たちの言葉から
    投げかけられた究極の二者択一によって、思考脳、行動脳を鍛錬しなければならない。

  • docomo smartphone loungeで開催された「ザ・本とインターネット」セミナーに参加した際、書評ブロガーで有名な、データセクション株式会社の橋本大也さんが紹介されていた一冊である『防災ゲームで考えるリスク・コミュニケーション』。

    本セミナーは、東日本大震災の後ということもあり、サブテーマが「この危機をのりこえるための読書 Read For Japan」。今回の震災では、直接的な被害はありませんでしたが、今後、震災地になった際のシミュレーションをしてみようと思ったのが購入の動機でした。


    阪神・淡路大震災と、東日本大震災の体験を振り返ってみると・・・、

    阪神・淡路大震災(1995.01.17 午前5:46)は、地元の横浜では感じず。朝のニュースでも関西で地震があった程度の報道しかされず、普通に通学したのを覚えています。大学から帰宅後、大震災であったことを知り、マスメディアが発達しているにも関わらず、情報伝達の不十分さに疑問を抱いたことを今でも強く覚えています。マスメディアへの依存度が異常に高かった当時。

    東日本大震災(2011.03.11 午後14:46)は、会社のオフィス37Fで実際に遭遇。
    会社の電源が落ち、パソコンが使えず、ケータイのワンセグで被災地をはじめ、各地の被災状況を確認。また、同時に、twitterなどのソーシャルメディアを通じて知人の安否確認をしたり、詳細情報を入手したりと、マスメディアからソーシャルメディア(パーソナルメディア)への台頭を実感。


    より身近で有益な情報を入手でき、状況に適した判断と行動がしやすい環境が整った今、実際に、その情報に基づいて判断と行動につなげるノウハウが必要だと感じた一冊でした。
    そのノウハウは、一緒にいるメンバー(特に家族や同僚)との絆と対話力。
    唯一絶対の解(=正解)がない中で、合意形成された答えが、その時に一番正しい答え(=最適解)。



    以下、本書で気になったフレーズを引用。

    ●「アクティブなリスク」と「ニュートラルなリスク」

    ●リスク管理とは、リスクコミュニケーション(情報公開)とリスク削減(透明性)の循環。

    ●ゲーミングシミュレーションとは、ゲーム的側面を持ったシミュレーション活動。ただし、明確な理解がされている訳ではない。一度でも体験したことがあれば理解できるが、体験したことがない者には理解が難しい。

     →ワールドカフェと同じですね。
      情報が溢れる社会ですが、体験しないと得られない価値に「本質」や「未来」が見え隠れしています。

    ●ゲーミングとは、相互構成的なコミュニケーションの過程。伝達ではなく、対話することを重視。

    ●「多重話」「未来を語る言葉」

    ●不可逆性のコミュニケーション

    ●ゲーミングにおいて、ゲームの実施そのものよりも、実施後に行われるディブリーフィングが非常に重要な意味をもつ。

    ●正解の不在

    ●阪神大震災での多種多様な災害対応での共通点、それは、トレードオフ関係にある複数の選択肢間での選択(意思決定)。ジレンマを伴う意思決定とも言える。
     それぞれの職員が、自らのとった判断・行動に誇りをもちつつも、他の可能性にも思いを馳せて判断・行動していた。あの時・あの状況ではYESという意思決定をしたが、状況が変わればNOという判断も十分にありえたという事実に、YESという判断を下した当事者自らが言及している。

    ●経験の違いの共有。経験の差による判断の違いや、その判断に迷うジレンマ。異なる経験をもつ人々が多様な視点を共有する。

    ●相互作用形式。お互い「顔が見える」ということは、考える顔、悩む顔を直接見ることができるということ。お互いにもつ多様な視点を、その感情を含めて共有できるということ。難しい決断に対して、他者がどのように考えるのかを、また、お互いがもつ多様な視点を分かち合いやすくする。

    ●クロスロード

    ●クロスロードのカード例【神戸編1002】

     あなたは、避難所担当の職員。

     災害当日の深夜。市庁舎前に救援物資を満載したトラックが続々到着。上司は職員総出で荷降ろしを指示。しかし、目下、避難所との電話連絡でてんてこ舞い。指示に従い、荷降ろしをする?

     YES(荷降ろしをする)/NO(しない)

    ●クロスロードのカード例【神戸編1003】

     あなたは、援助物資担当課長。

     援助物資の古着が大量に余ってしまった。でも、庁舎内には保管する場所はない。倉庫を借りるのも費用がかかる。いっそ焼いてしまう?

     YES(焼く)/NO(焼かない)

    ●クロスロードのカード例【神戸編1010】

     あなたは、仮設住宅担当課長。

     大地震から1か月経過。仮設住宅建設へ向けての毎日。これまで確保した用地だけでは、少なくとも100棟分不足。この際、公立学校の運動場も使う?

     YES(使う)/NO(使わない)

    ●クロスロードのカード例【神戸編1016】

     あなたは、遺体安置所の責任者。

     今、遺体安置を行なっている。増え続ける遺体に対して、作業員はわずか数名。作業はまったく追いつかないが、数時間連続の作業ですでに身体はクタクタである。いったん休憩をする?

     YES(休憩する)/NO(しない)

  • 阪神・淡路大震災や新潟の中越地震などで実際に起きた様々な問題に対する対処方法や進むべき方法をゲーム感覚で導き出すという1冊。ただし解答はなく、各自がその場その場で対処しなければならなく、大人数で開催すれば千差万別な解答が出てくる。被災者、役所・学校関係者、医療関係者、身体障害者、高齢者、報道関係者、各ボランティア関係者、それから日本はもとより世界中から見守る者などあらゆる視点から見た状況とその判断を改めて考えさせられます。

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著者プロフィール

矢守 克也(やもり・かつや)
京都大学防災研究所教授
主な著書・共著書に、『防災ゲームで学ぶリスク・コミュニケーション』(ナカニシヤ出版、2005)、『〈生活防災〉のすすめ』(ナカニシヤ出版、2005)、『防災人間科学』(東京大学出版会、2009)、『アクションリサーチ』(新曜社、2010)、『ワードマップ:防災・減災の人間科学』(新曜社、2011)など。災害体験の聞き取りやゲームを道具として防災の知恵を伝えるなど、アクションリサーチ(実践研究)を通じて、防災人間科学の確立に向けた研究を行っている。

「2023年 『イラスト・図解でまるっとわかる! 家族でそなえる防災・被災ハンドブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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