死の同心円 (長崎文献社名著復刻シリーズ 2)

著者 :
  • 長崎文献社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784888511544

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  • ★日本の原爆記録
    第09巻:
    あの日から今もなお/炎と影/長崎原爆記
    日本図書センター

    ・『あの日から今もなお -母のヒロシマ原爆戦史-』(副島まち子)
    ・『炎と影 -被爆者20周年の手記-』(長崎被爆者の手記編纂委員会編)
    ・『長崎原爆記 -被爆医師の証言-』(秋月辰一郎)
    ○ 解説:「地獄図の中のきらめき」(山田かん)
    ○ 解題(黒古一夫)

  • 放射能汚染が蔓延している今の時代、一読の価値あり。

  • 長崎の爆心地から1.4Kmの丘にあったキリスト系病院で医長を行っていた秋月辰一朗医師。
    瓦礫と化した中で満足な治療も出来ない状態ではあったが病院のスタッフも患者たちも周囲の人間が壮絶な死を目の当たりにする中で彼等だけが生き残ったのだ。
    秋月医師は元々病弱であり、その体質改善としても行っていたのが玄米、野菜食、ワカメの味噌汁といった食養療法。
    すなわち石塚左玄氏と桜沢如一氏の食養から発展した現在のマクロビオテックの考え方でもある。
    『爆弾を受けた人には塩がいい。玄米飯にうんと塩をつけてにぎるんだ。塩からい味噌汁をつくって毎日食べさせろ。そして甘い物を避けろ。砂糖は絶対にいかんぞ。』
    これは塩はナトリウムで造血作用。砂糖は造血細胞に対しての毒素だそうなのだ。
    また面白いといってはなんだが、急性放射能症になった被曝者が死に際に酒を一杯やりたいと呑んだがその後、元気になったという話しも興味深い。
    秋月医師は傷ついた腸粘膜細胞が復活したのではと考えたそうだ。
    この本では秋月医師が仏教信仰ではあるが結核患者治療の為にカトリックの病院に赴任し、被曝した中で患者とスタッフが神に委ねる姿に戸惑い、薬品も医療器具も充分にないまま次々と町からやって来ては死んでいく被爆者に医師としての何が出来るのかと苦悩する。

    そしてこの本のなかで一段と強く語られていたのは原爆の被害を正当かするアメリカ政府と声を上げぬ日本政府に秋月医師が非常に苛立を感じていた事だ。
    『だれもほんとうの原爆を知らない』と秋月医師は言う。
    街は再生した。8月9日にしか原爆は語られぬ。
    何が起こったのかを目の前にした人間は消えていくのだ。
    それを見たままに医師としての考察も入れながら書かれた書であった。

    89歳永眠。

  • 長崎で原子爆弾で被爆したにもかかわらず、90歳近くまで生きた医師の体験記。
    戦争の悲惨さと被爆。
    原子力時代に生きる私達が、一度は読んでおきたい本であります。

  • 原爆投下時、長崎で診療を行っていた医師の記録。
    タイトルがなんかエンタメ小説みたいだけど、中身は真摯。
    修学旅行で広島も長崎も行ったので食傷してたせいか、実際原爆関連のドキュメントなんかを読むのは久しぶりかもしれない。
    ただ、この本は、いわゆる「証言」の範疇にとどまらない奇妙さもある。
    ひとつには宗教が絡んでいる。
    医者である筆者自身は敬虔な仏教徒(真剣なレベルでの)であるが、その病院はカトリック。
    このへんの、医者と周りの人・患者(も信徒ばかり)との微妙な感じ方捉え方の差はかなり面白いと思う。
    永井隆という長崎医師かつキリスト教者である人物の影響で、長崎は永井の「祈り」が強調されすぎている、というように筆者は書く。
    なんというか、べたべたに患者に寄り添うんじゃなくて、どこか冷めてる、ものすごく人間的というか、行ってしまえば自己中心的な面も感じられる筆者の行動は、わりと新鮮だった。

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