- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784888882934
作品紹介・あらすじ
昭和の始まりとともに出現した「流シ」の円タンは、増殖し続ける近代都市を自在に走り廻り、「モダン都市」東京を造り上げるメディアの一つとなった。しかし、流シは都市の「問題」として語られ続け、世の中が戦時体制へ傾斜するなかで、わずか十年ほどで消えていく。これは円タクを走らせたタクシードライバー達の記憶で構成する「モダン東京」円タク一代記である。
感想・レビュー・書評
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随分前に買い込んで、そのまま本棚の肥やしになっていたのを、このほど読んだ。
著者は、長年、東京のタクシードライバーを対象に研究してきた人だとのこと。
戦後、現在に続く時期の方ですでにまとまった仕事をしてきた人が、時間を遡って、自分の本業の周辺を固めたのかな、という印象を受けた。
大正後期あたりから戦前までの、タクシーの業態、どうやってタクシードライバーになっていくか、タクシーをめぐる世論、警察や行政の対応などが調査されている。
もちろん、その時期を知っている古株のタクシードライバーに対して筆者が行った聞き取りの成果も踏まえられており、それも貴重。
円タク間の熾烈な客引き競争の様子などは、かなり面白い。
この時期のタクシーについての基本的な情報は網羅されているのではないか。
筆者は「流しの身体(性)」をキーワードに、これらの膨大な情報を整理している。
組織に所属するのではない、流しのタクシードライバーたちの、車という機械を操る感覚や、人の流れを読んで車を移動させる日々の行動様式などを総称してそのキーワードで括っているように思われる。
(正直、時々、それは「身体性」なの?と思われる部分もあったけれど)
ともあれ、大変な労作だと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示