- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784890136704
作品紹介・あらすじ
推理作家は、どんな場所でアイディアを思いつき、プロットを組み立て、原稿を書き上げているのか。
コリン・デクスター、フレデリック・フォーサイス、ディック・フランシス、トム・クランシー、マイクル・クライトン、パトリシア・コーンウェルなど、CWA(英国推理作家協会)賞、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞受賞者の中から、選りぬきの30作家の創作現場を、本人たちの飾らない素顔とともに紹介する。
好評書『作家の家』『芸術家の家』に続く第3弾!
感想・レビュー・書評
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日本の写真家が欧米の推理小説作家30名のお宅を訪問し、小説の組み立て方、執筆場所、一日のスケジュールなどをインタビューした本。書斎やリビングなど、作家の生活を垣間見られる写真が豊富で楽しい本だ。
この本で紹介されているのは戦後から2000年代に活躍した作家たち。私の守備範囲外の作家がほとんどで、読んだことがあるのはジェフリー・アーチャーとパトリシア・コ-ンウェルくらいだった。だから、この本の面白さの半分くらいしか味わえていないとは思うが、小説を読んだことのない作家でも、執筆生活や書斎の様子を知るのは単純に楽しいものである。
推理小説作家という特性なのだろうか。わりときっちりプロットを立ててから執筆にとりかかる人が多い印象だ。そしてこれは欧米の作家だからか、執筆時間を一日のこの時間、と決めて、あとは自分の趣味に没頭する人が多い。ある意味理想的な生活だなあ、と思う。
住んでいる建物や書斎もそれぞれで、それこそミステリに出てきそうな田舎家の重厚な書斎あり、都会の高級住宅街のアパルトマンあり、リゾート地の別荘あり、とさまざまだ。
インタビューをする写真家の南三治郎氏は、きっと人懐こくて推理小説が大好きな人なのだろう。非常に好意的に迎え入れてもらい、家族と一緒に食事をごちそうになるパターンが多い。マスコミ嫌いのグレアム・グリーンに対しても果敢に挑み続け、3年がかりでインタビューにこぎつけている。インタビューの最後に日本人読者に向けたメッセージを必ずもらっていることもうれしい。
インタビューの内容ももちろん面白いのだが、南氏の撮影する作家の写真がなんともいえず良い。
住んでいる建物や書斎と一緒に撮った写真は、皆ちょっとかっこつけているようなよそよそしさが感じられるものの、ふとした瞬間に撮影されたスナップ写真は、作家の複雑な側面を表しているようで、思わず見入ってしまう。
小説を読んでからこの本を読むほうがより良いかもしれないが、この本を読んで興味を持った作家の小説を読む、というのも一つの方法だ。個人的に小説をぜひ読んでみたいと思ったのはカトリーヌ・アルレー。頭がよく、緻密な中に繊細さが秘められているように感じる。
巻末には、アガサ・クリスティが逗留したホテルに滞在し、オリエント急行に乗車した様子をまとめたコラムもあり、クリスティファンにもうれしい本である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「作家の家」はプレモリ=ドルーレ(仏ヴォーグの編集者)が書かれて、
「芸術家の家」はジェラール=ジョルジュ・ルメール(作家、歴史家、美術評論家)が書かれていますが、今回は日本人によるものですね! -
日本の作家のだと思って借りたら、海外の作家だった。よく知らない人ばかりで、ピンとこず
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"作家の自宅に訪問し、インタビューと書斎を写真で紹介したもの。
著名な作家たちの創作現場を垣間見れる。
すでに亡くなられている方も数名いらっしゃる。ミステリー好きな読者ならここに登場する著者の本は読んでいるはず。
読んでいなかったら、読んでみたくなること間違いなし。" -
この本は海外ミステリ作家の家(主に書斎などを中心に)を撮影すると同時に
創作方法などをインタビューしたという本です。
写真がメインでありますがインタビューも興味深いところが多かったです。
作家の書斎というと坂口安吾の今で言う汚部屋風の書斎をイメージしがちですが、この本に登場する書斎はシステマチックに片付いた部屋が多いですね。
しかし撮影時期が80年代から90年代初頭なので、まだコンピュータ化が進んでおらず、紙とワープロが執筆の道具となっているのでモノは多いです。そして壁一面の本棚というパターンも多いですね。
以下、インタビューの中から創作法に関して気になった部分をメモメモ。
LAコンフィデンシャル、ブラックダリアなどを書いたジェイムス・エルロイの経歴はかなり衝撃的です。
□ ジェフリーアーチャー
- □ 最年少で下院議員、投資に失敗し辞職。
▾ □ 借金返済の為、執筆を開始、
- □ 100万ドルをとり返せがヒット。
□ カトリーヌアドレー
- □ 下書きは全部手書き。手で書くと言う事は赤ちゃんん産むようなもの。それをタイプするというのは、赤ちゃんに服を着せて育てるようなもの。
- □ 各章ごとに違った色のマジックで書く
▾ □ プロットが決まれば、ベット脇に病人用のテーブルを持ち込み昼夜なく一気に書き上げる。
- □ 疲れたらすぐに横になれるから。
□ パトリシアコーンウェル
- □ デビュー前、暖房もないボロ机ひとつの部屋で、毎朝4時から午後5時までタイプを打ち続ける生活。
□ ロアルドダール
- □ 書くペースは、1日4時間で1ページ程度。消しては書き、消しては書きしているから原稿用紙が真っ黒。
□ ジェイムズエルロイ
- □ エルロイは10歳の時に母が半裸の絞殺死体となって発見された。犯人は見つからなかった。17歳の時にボクサーだった父を亡くし天涯孤独となった。
- □ その後ドラックに溺れたり、盗難を繰り返したりして刑務所の内と外を往復した。
- □ 29歳の時、ドラックを捨て小説家を目指し、ゴルフのキャディーをしながらチャンドラーなどを読み漁り独学で文書のたんれんに励んだ。
- □ 俺は石に齧りついても作家になりたかったんだ。30数回も刑務所に繰り返し放り込まれた人間が、他にまともな職に就けると思うかい?
- □ 日雇い仕事も長続きしなかったし、公共の図書館だけが安心して眠る事の出来る場所だったんだ。そこで読んだチャンドラーやシムノンの作品は、空で言えるほど暗記したね、!
- □ 学校教育を受けていないため、作家として大成した今も勉強を怠る事はない。今でも図書館こらチャンドラーやシムノンなどの名作を借り出し、暇を見つけては名文をノートに書き写す練習を、日々欠かさないという。
□ フレデリックフォーサイス
- □ ドゴール大統領と秘密組織OASの事を書こうと考えて、1970年の1月1日きっかりにタイプを打ち始めた。1日8時間、毎日これ以上もうダメだというくらいタイプを叩いた。で、1ヶ月で書き上げた。出版の当てはまったくなかったが。それがジャッカルの日。
- □ ジャッカルほ2人の知人の性格やものの考え方をブレンドして創作した。
□ ブライアンフリーマントル
- □ アイデアはドライブをしている時浮かぶ。アイデアが浮かんだらただちにプロットを考える。
- □ タイトルを最初に決め、次に結末、最後に最初の出だしを考える。
- □ 1日1章を書き上げ、毎回最後に、翌日書く分を3行くらいに要約しておく。この繰り返し。
- □ 1作書くために、リサーチが2ヶ月、書き始めてこら終わるまで6〜8週間かける。
□ ポーラゴスリング
▾ □ チャンドラーも言ってるけど、自分が予想外のことに驚いている時は読者もまた同じ。
- □ だから書き始める時は結末は決めない。
□ ギャビンライアル
- □ 世の中には多くの問題がある。私は本の中で創り出した人間が、それらの問題と取り組み、それを克服していけるように、勇気と知力をかたむけているんだ。
- □ 私達が自由にものを書けるという事、そして自由に好きなものを読めるという事、これは当たり前のようでいて当たり前ではない。世界のすべての人が、その自由を手に入れているわけではないよね。だから、この自由に恵まれていることを大事にしたいと思ったんだ。
- □ まずスクラップ記事の整理。そのための事前準備として毎日4誌に目を通し必要な記事を切り抜いておく。
- □ 1ヶ月に一度、項目別にファイルに収めていく。この資料を読み返しているうちに、アイデアが浮かんでくる。
- □ テーマが決まったら、もう一度それらの情報を整理しながら、大きなノートにプロットを書きなぐっていく。
▾ □ プロットが出来上がると、次に舞台となる街や光景を想定するために、スケッチしたり、100分の1の模型を作ったりする。
- □ プロットが完璧でも。その舞台に立ち、人物やものを実際に動かしてみないと、イメージも湧きにくいし、いろいろと矛盾点がでてくる。
- □ タイプを打つ時はこれらの模型を使い、登場人物に、なったつもりで、想定した場面のなかを動いてみる。
□ パトリシアモイーズ
- □ 場面の設定。その中で、どんな犯罪を引き起こすのかといった状況を決めると、プロットは自ずから浮かび上がってくる。
- □ テーマを考えたら、次に登場人物たちの名前、年齢、バックグラウンドと作中での役割を、書いたカードを作る。
- □ 基本プロットを、400〜500ページくらいにしてノートに書きつけ、そのノートを、見ながらストーリー展開を、頭の中で再構成して、どうでもいい紙にタイプする。
- □ 短編を書くのは簡単。少しの背景。多少の登場人物、ちょっとしたアイデア、ひねりの効いた結末ごあれば充分。
2016/11/10 05:56 -
パトリシア・コーンウェル
ロアルド・ダール
グレアム・グリーン
トム・クランシー
とか、そうそうたるメンバーの自宅写真とインタビュー記事。
有名どころばっかりで逆に驚く。
当然だがかなり昔の話で、鬼籍に入られている人多い。
そしてみんないい家に住んでる。
タイプライターか直筆かってのでの論争時代の話がメイン。
作品の作り方とかの個性が楽しい。 -
やっぱ外国の作家は、タイプライターを使っている所がカッコイイ。取材されたのが、結構昔(1980年代前半からの約10年間)なので、まだパソコンを使っている人もあまりいない。いても、ワードプロセッサーどまり。「何十年も使っているけど、故障したことなんですよ。」などと言ってる人が、何人かいました。あと、小説のプロットやアイデアを、付箋に書いたものや、現場の地図や写真なんかを壁一面に張っているものカッコイイです。
これが日本だと、昔の作家はみんな原稿用紙に手書き。散らかった部屋で、ボサボサ頭の坂口安吾。玄関入ってすぐの三和土で、気難しい顔の内田百閒。ものすごく綺麗な日本間で、ポツネンと一人座っている川端康成。偏ったイメージしか浮かびません。 -
最近出た本なのに、内容が古いところがある。
有名人気作家ばっかりで嬉しい。
ゴージャスな邸宅ぞろい。
売れなかった頃の家も見たいと思った。 -
ロアルド・ダール、パトリシア・コーンウェル、グレアム・グリーンほか、錚々たるミステリー作家のお宅拝見写真集。
たぶん資料的価値は高いのだと思うけど、文章も写真家が書いているので質問事項が紋切り型だったり取材対象にリーチするまでの苦労話が延々続いたり、読み物としてのクオリティは今ひとつ。
発行は2012年だけど20年ほど前のインタビューばかりで、タイプライターからワープロへの過渡期で鉛筆での手書き派もいたりして味わい深い。 -
取材の苦労がしのばれます。