タイに渡った鑑識捜査官

著者 :
  • 並木書房
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本棚登録 : 40
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890632794

作品紹介・あらすじ

警視庁きっての鑑識のプロが、タイの事件現場で見たのは、日本の緻密な科学捜査とはほど遠い現実だった。事件現場にはヤジ馬が入り込み、捜査官は手袋すら着用していない-自ら捜査の第一線に立ち、実地で教えた多くの鑑識技術は徐々にタイ警察に浸透し、検挙率は飛躍的にアップ。2004年のインド洋大津波では10名の部下を率いて最初に被災地に入り、3カ月間にわたって遺体の身元確認に従事した。タイの犯罪捜査に技術革命をもたらした警察OB感動の記録。

感想・レビュー・書評

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  •  体当たりだなぁと思うと同時に、あらすじにある妻についてほとんど触れられていないのは……まだ書けるほど心が落ち着いていないからなのかね、と思うことにしよう。

  • 鑑識の第一線で活躍していた戸島氏。妻の死が転機となりタイへわたることを決意する。当時のタイの現場管理はあまりにもずさんで現場にはやじ馬、マスコミは死体にまたがって写真を撮る始末。日本で培った技術を用いてタイ警察の発展に尽力した戸島氏の「第二の人生」とは。悲惨な事件だけでなく、タイでの思わず笑ってしまう様な暖かい逸話までも知ることができる。

  • 資料ID:21104121
    請求記号:

  • 警視庁で働いていたベテラン捜査官が、
    妻の死をきっかけに、一人でいても寂しいし…と
    JAICAでのシニアボランティアプログラムに参加して、
    タイの現地警察を指導して、日本式鑑識を伝えていく、という私好みの本。

    前任者は引き継ぎもせず去っていき、タイ語も分からず右往左往。
    それまでのシニアボランティアが、ただ眠たくなる講義だけしていたのを、
    こんな上から目線じゃなんの役にも立たない!!と
    タイ警察と実際に事件現場に赴いて自分も捜査に参加することで
    タイ警察の人々の心をいつの間にかつかみ、
    一度の帰国を挟んで、気づいたらタイ警察大佐にまでなって
    12年間?かな、タイ警察で働いていた、という
    根性の入ったおじさんです。 尊敬!!


    タイでは死体が出ると警察が行く前に、死体を搬出するボランティアの葬儀団が
    勝手に死体をいじってたり、マスコミが写真をとったり
    現場を保存するという意識がなかったので
    そこから日本式に現場を保存して、死体を触る人はゴム手袋をして…というところから
    日本式を教えるのではなく、伝えていこうと日夜奮闘。


    ところどころ興味深いのは、
    たとえばタイの葬儀団。
    タイでは死体の処理を手伝うことで仏教的功徳が得られる、と考えられているので
    なり手はいっぱいいるらしい。
    さらにマスコミが来る前に死体のうまい写真を撮っておくと
    それが高値で売れるという小遣い稼ぎもあるらしい。
    文化ですな!!

    ちなみにおじちゃんは、結構果敢に現地の屋台とかでも食べて、
    本当に危ない目に合っている。
    くだらなすぎてここで紹介しなかった世界各国をまわっていろんなものを食べては
    おなかを壊している女レベルじゃなく、
    普通に手術をしてぎりぎり助かったレベルの体験をしていたり、
    とにかくかっこいいのだ。

    極めつけはタイのリゾート地を襲った大津波の時。
    とにかく一人でも多くの身元を明らかにしようと、
    鑑識官としての経験から、
    一人ひとり丁寧に指紋をとる方式ではなく、
    あえて死体の指紋の部分の皮をはいだり、指をきりとるという
    一部の人には遺体への尊厳がないと非難されかねない方法で指紋を採取し、
    身元判明の為に指紋をとりまくる。
    タイでは15歳になるとIDカード作成のため指紋を登録するので、
    指紋さえわかればどんなに ひどい状態になっていても身元の判明は不可能ではないのだ。
    実際タイに行ったことがあるからわかるが、タイは本当に暑い。
    死体の尊厳と言っている間に死体は全部腐って指紋なんて全く取れなくなることは確実だ。
    彼がそれまでに気付いてきた信頼関係のおかげで
    この方式にもちゃんとタイ人の部下は付いてきてくれ、
    タイ警察チームは身元判明に多大な貢献をした。
    まさに職人!! 感涙を禁じえない。


    日本には指紋登録がないから、
    東日本大震災の時はこのような荒技は使えなかったようだけれど、
    この熱さ!! 
    正直、本一冊では彼の活躍の一端しか見ることはできない。
    彼自身、そんなにいちいちのエピソードを拾おうともしていない。
    こういう人、かっこいいな、と素直に思う。


    それから、軽いミステリーを見て、
    鑑識を馬鹿にしてるのか?? って時々イラついてみる。

  • 妻のお父さんが「面白かったから」と送ってきてくれた。

    タイ生活で経験したエピソードが読み切りの形式で羅列されていて
    非常に読みやすかった。

    タイに何回か行ったことある人や、住んでた人は、出てくる通りの名前に
    風景が浮かび上がって更に面白いと思う。

    事件の裏側も知ることが出来て、非常に興味深い。

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著者プロフィール

戸島国雄(とじま・くにお)
1941年生まれ。陸上自衛隊勤務を経て1963年警視庁入庁。1970年警視庁刑事部鑑識課写真係。鑑識課在職中に千枚以上の似顔絵を作成し、事件解決に貢献。三島由紀夫割腹事件、連合赤軍リンチ殺人事件、三菱重工爆破事件、ロス疑惑事件、ホテル・ニュージャパン火災、羽田沖日航機墜落事故、日航123便墜落事故、トリカブト保険金殺人事件、連続幼女誘拐殺人事件、オウム真理教関連事件など数々の大事件を担当。警視総監賞・部長賞など107回表彰。1995年JICA国際協力専門員として、タイ王国国家警察局科学捜査部に派遣され、鑑識捜査技術を指導。1998年帰国。2000年似顔絵捜査員制度の第1号に任命。2001年警視庁を定年退職。2002年3月タイ国家警察庁の要請で再びタイに渡り、JICAシニア海外ボランティアに任命。著書に『タイに渡った鑑識捜査官─妻がくれた第二の人生』『警視庁似顔絵捜査官001号』『警視庁刑事部現場鑑識写真係』(いずれも並木書房)。タイ王国国家警察庁警察大佐、警視庁警察学校非常勤講師、拓殖大学客員教授。

「2023年 『日本・タイ警察人生60年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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