ただ影だけ (フィクションのエル・ドラード)

  • 水声社
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891769505

作品紹介・あらすじ

1979年、ソモサ独裁政権の崩壊を目前に控えたニカラグア、ソモサの私設秘書官として権力の影で活動していたアリリオ・マルティニカは海から逃亡を企てるも革命軍に捕えられ、独裁政権の悪行に加担した嫌疑で民衆裁判にかけられる…。証言、尋問、調書、供述、手紙。事実のなかに想像を巧みに織り交ぜ、鮮烈な描写と圧倒的な語りの技法のもとに、歴史的事件の裏側をフィクションの力で再構築する現代ラテンアメリカ文学の新たな傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 舞台はニカラグア。一族独裁を引いていたソモサ政権終盤の内乱期、ゲリラ軍に捕縛された元ソモサ派の男の裁判を巡り、ニカラグアの社会情勢が書かれる。

    この作者自身が大統領ソモサ一族に抵抗するサンディニスタ民族解放戦線として闘い、その後樹立された政権では副大統領も務めた経歴の持ち主。メキシコ出身作家カルロス・フエンテスとは当時からの友人。
    しかしその後サンディニスタの大統領ダニエル・オルティガとは袂を分かち、サンディニスタの体質改善運動も行うが、その後は作家になったということ。
    小説の形式としては、政治活動から身を引いた作者が、ソモサ派の男を巡る裁判を書こうと資料を集めた、というもの。作者がインタビューを行う相手の章では「先生(作者のラミレス)がサンディニスタを抜けるとは思いませんでした。早くダニエルと仲直りしてくださいね」なんて言葉があったりする。

    レビュー前に小説の舞台となったニカラグアの政治情勢を。
    日本の読者にはニカラグアの歴史や政治事情は分からないだろうと、
    巻末にニカラグアの歴史と、本作に関わりがあったり、モデルとなった実在の人物紹介がされているので抜粋。(水声社さんと翻訳者の寺尾さん実にきめ細かい!!)

    まずは、1800年代から、スペイン、メキシコ、中米連邦のそれぞれから独立し「ニカラグア共和国」となる。
    この新たな共和国内で自由党と保守党の凌ぎ合いが続く。
    1856年には自由党に雇われたアメリカ人傭兵ウィリアム・ウォーカーが大統領になったりしている。これには「外国人傭兵が大統領?!?!」と思ったんだが、どうやら南北戦争前のアメリカは、個人が数十人の部隊を連れて中南米に乗り込み、自分の領土としたり独立宣言したり(そして失敗したり)ということは行われていたそうな。
    さて、そのウォ―カーも失脚し、その後ニカラグア国内では自由党と保守党の内乱が激しさを増す。
    1933年自由党アナスタシオ・ソモサ・ガルシア(タチョ)が大統領に就任し、ソモサ王朝が始まる。
    タチョ大統領暗殺後は長男ルイス・ソモサ・デバイレが大統領就任、その死後は弟のアナスタシオ・ソモサ・デバイレ(タチート)が大統領に就く。
    国内では独裁政権に対しゲリラ戦法が取られ、サンディニスタ人民軍、人民革命軍や反革命軍事組織など…(込み入っていて理解しきれず)の戦いが増し、ソモサ政権打倒へと進む。
     …ここでやっと本編の時代に追いついた。
     と言うわけで粗筋紹介と感想に入ります。
    (読みながら反乱軍なんだかゲリラなんだかサンディニスタなんだかよく分からなくなったので、レビューのその部分は間違ってるかもですが)

    なお、こちら「山は果てしなき緑の草原ではなく」のオマル・カベサスも同じような経歴で
    サンディニスタでゲリラ活動⇒革命政権樹立後は政治家⇒本を発表 だった。
    http://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4773894075

    ★★★
    ソモサ一族による独裁政権下のニカラグア共和国。
    海辺の農場でアリリオ・マルティニカがサンディニスタ人民解放戦線に捕縛される。彼はタチート大統領の私設秘書官だったが、大統領とその愛人との謀で失脚し、海辺の農場で再起を待つうちに国内戦線が激しくなり逃亡の時節を逸していた。
    アリリオ・マルティニカは、サンディニスタに占拠された自分の農場で取り調べを受ける。

    三人の取調官は、手榴弾により片腕を失ったことを通り名にしている”片腕の”カパック、零落した元名家の出身だがゲリラ兵士の弟が政府軍の拷問で殺されその立場を継いだ元イエズス会士ニコデモ、その妻である美貌の元弁護士の女性闘士ユディト。
    彼らはそれぞれ奇妙な偶然でアリリオ・マルティニカと繋がりがあった。

    アリリオ・マルティニカへの尋問と、当時を知る人々の証言や記録により、独裁政権下のニカラグアの様子が浮かび上がる。

    物語の中心はアリリオ・マルティニカだが、彼の学生時代の悪友、イグナシオ・コラルと、ハシント・パラシオスの人生も描きだされる。

    イグナシオ・コラルは零落した元名家の出身だが、時計泥棒の少年を追いかけ庶民の生活の厳しさを目の当たりにして元々繋がろうとしていたゲリラ活動へ本格的に加わる。やがて追われる立場になり政府軍に捕縛され、苛烈な拷問で殺される。
    イグナシオ・コラルの殺害とそれを誤魔化すための公式発表と殺害者への裁判結果に怒ったゲリラたちは彼の名を掲げて民衆の敵とみなした政治家の館を襲い人質を取る。
    (史実では政治家の家族を人質にとり、条件として解放されたゲリラの中に後のサンディニスタ派大統領ダニエル・オルテガがいたようだ)

    襲われた館の持ち主はハシント・パラシオス。ハシント・パラシオスの父、マカリオ・パラシオスは政治家で、民衆からは嫌悪されていた。
    マカリオ・パラシアスはアリリオ・マルティニカの妻、ロレナ・ロペスの後見人で、若い夫妻が堕落で財産を食い潰した時に、アリリオ・マルティニカをソモサ政権の軍人であり、敵対者に対して残酷な手段を講じるため”絹の手”と呼ばれるセクンディーノ・モンガロ司令官に紹介した。
    アリリオ・マルティニカは政治家として、ライバルを陥れ、自分を売り込みタチート大統領の側近となっていく。
    すでに政治家となっていたハシント・パラシオスは、アリリオ・マルティニカとは政治派閥は違い、彼らはつかず離れずの距離となっていた。
    ハシント・パラシオスの館が襲撃された時のアリリオ・マルティニカ、ハシント・パラシオス、そしてサンディニスタ兵士たち…。

    取り調べの合間に射しこまれる、アリリオ・マルティニカが過去に関わった裁判記録、同じ名前の父親の反政府運動とその結末、ハシント・パラシオス館襲撃時の通話記録、アリリオ・マルティニカを知る人物からの手紙やインタビューなどが差し込まれ、アリリオ・マルティニカの隠そうとした事実や、彼自身も知らなかった事情が明らかになっていく。

    拘束のアリリオ・マルティニカの前に、同じくソモサ派として捕えられたレオニダス・ガラン・マドリスが引き出される。彼は”狼少年”の綽名を持ち、追従と口先で強いものに媚入り生き残り、政権での地位を保っていた。
    アリリオ・マルティニカと狼少年は人民裁判にかけられる。彼らを殺せといきり立つ人民の前で自己弁護を行い、人民から盛大な拍手を得れば無罪、拍手を得られなければ銃殺となるのだ。

    そして彼らは人民の前に引き出される…。
    ★★★

    作者はこの作品を書き上げた後、アリリオ・マルティニカのモデルでありゲリラ兵に拘束され人民裁判かけられた男の資料を集めてインタビューを行ったところ、人々の証言があまりにも食い違っていたということ。
    権力により記録も記憶も書き換えられた人々の言葉から本当の真実を導き出すことは不可能。表紙の装丁も、言葉が風に流されるかのよう。真実とは風に流され残るはただ影だけか。
    それなら真実を想像により補い、小説として再構築することにした。

    小説としての構成も手法も展開も内容も本当に見事、常に興味を引き立てられ続けられた。
    登場人物たちには、綽名や呼び名や通り名がある。
    ゲリラたちのそれは、人物像を聖書の人物にとらえた綽名であったり、ソモサ政権の政治家たちは「狼少年」「ピラニア君」「カヤパ」など嘲るものとなっている。
    小説の手法では、AとBの現在の会話と、それを踏まえてのAとCのその後の会話が完全同時進行で記載されたり、
    何気なく史実の人物が登場したりしてきたり(解放軍へのインタビュアーはガルシア・マルケスだった、とか)、
    アリリオ・マルティニカの取り調べは、過去の回想と、現代の取り調べ官たちのやり取りが段落変え無しで繋がる。
    そしてそのアリリオ・マルティニカの名前が出てくるのは、裁判の証言となる周りの報告書や証言のみ。他の場面では名前が控えられ、作中の「現在」である取り調べなどの場面では「彼」「被告人」と書かれる。回想場面ではアリリオ・マルティニカの存在は薄められている。
    たとえば
     「○○」とAは言った。
     「△△」とBは言った。
     「□□」と言った。
    この最後のセリフがアリリオ・マルティニカのもの。
    一番最初にこの手法が出たときは、(この場面にはAとBしかいないかと思って)この「□□」はAとBどっちのセリフにしても妙なんだが?と思いつ読み進め、後でこの場にアリリオ・マルティニカがいたのか!と分かってページを読み戻ったりした。

    小説の最後では、使われた裁判記録や通話記録やインタビューなどの出所を紹介し、史実であるかのように描かれている。
    ニカラグア政治事情は全く知らない私としては、本編もさりながら、巻末の歴史と人物紹介を確認しながら「外国人傭兵が大統領?!」と調べたり、「このソモサ大統領は、タチョ?タチート?それとも長男?」などと確認しながらだったので結構時間かかったのですが、その確認作業も含めて実にすばらしい読書経験を味わえた。

    しかし乱れた国での生活の過酷さはかなりきつい。
    政府軍はゲリラ派と見做した村を襲いゲリラ処刑の名の元の殺戮、拷問と死体遺棄、ゲリラ派のブルジョア層への処刑や財産没収、誘き出された子供たちは銃の一斉射撃で殺され、連れ去られた女たちは輪姦され庭には腐った遺体が埋め尽くされ…という描写があまりにも日常として書かれていてちょっとorzな気分…。

  • 中米カリブ海に面するニカラグアの作家
    セルヒオ・ラミレス著作の初邦訳作。

    まずストーリーを読む前に、
    巻末のニカラグア史概略に目を通す事をお薦めしたい。

    なぜなら、登場人物はそれ程多くはありませんが、
    ラテンアメリカ文学の代名詞ともなっている
    話し手や時系列が文中で目まぐるしく
    変転する手法が用いられているので、
    登場人物の立場や背景といった
    予備知識が無いと途方に暮れる可能性があります。
    (※類似の「族長の秋」よりも複雑です)

    本著は、43年に渡り親子三代で
    ニカラグア政権を独裁支配していたソモサ一族と、
    ソモサ打倒を掲げる革命勢力との史実を、
    ソモサの私設秘書官だった主人公
    アリリン・マルティネカの顛末を通じて
    フィクションで再構築するという内容。

    解説は訳者の後書きに譲るとして、
    フィクションと史実の境界線を完全に無くしてしまう
    セルヒオ・ラミレスの手腕は見事だと思います。

    作者は、本書を書き上げた後に、
    本書の肝となる舞台の街へ実際に赴き、
    絶対に手直しを入れないという前提で、
    証言を訊いて回ったようです。

    そこで作者は、
    証言のあまりにもの支離滅裂ぶりを目の当たりにし、
    作者は本著への自信を確固たるものにしたようです。

    「フィクションは史実を超越する」 と。

    中々前に進めさせてもらえない泥濘のような構成、
    ジワジワと符号の一致をみせるサスペンスフルな展開、
    ラテンアメリカ文学特有の湿っぽさと土着感、
    そして史実が持つ迫真さが加わり、
    非常に重厚な読み応えを感じられました。

    ラテンアメリカ文学好きなら外さないのでは思います。

  • 「ただ影だけ」
    というわけで、昨日からラミレスの「ただ影だけ」を読んでいます。ニカラグアのソモサ体制からの革命を題材とした作品。この作家自身政治家でもあって、サンディニスタ刷新運動という政党率いて大統領選に出たこともあったけど、それに敗れてからは政治から身を引き著作活動に専念しているという。
    タイトルの「ただ影だけ」は歌の題名らしい。
    というわけで、昨日のところは革命前に逃亡しようとして失敗した男の話。ラミレスはサンディニスタ側なんだろうけど、この作品見る限りは両者に批判的な眼差しを見せている。
    (2017 04/04)

    鼓膜の内の石
    「ただ影だけ」…構成は二部構成内にそれぞれ、革命進む物語の筋の章(章数字のみの章)と、後にいろいろな人々が作者に革命時を振り返って証言する章(標題付きの章)のセットの繰り返し…みたい。
     突如、石の一つが鼓膜の奥にぴたりと止まり、思わず首を振る…
    (p33)
    どうやら、捕らえた者と捕らわれた者はかなり前の知り合いだったらしい…
    (2017 04/05)

    ボレロが導く回想
    「ただ影だけ」このタイトルは歌(ボレロ)から来ているのだけど、自分の予想以上に作品内に登場する。主人公含む三人の若者時代の回想で実際にかかっていたこの曲から、主人公が出世を望まず「ただ影だけ」の存在でいたいと言うところまで。
    またサンディニスタ側のニコデモ(彼は主人公の友人イグナシオの兄でもある)が考える「革命のような大きな動きの時には、小さな間違いは仕方ない」というところ。作者ラミレスはその小さな間違いを掬い上げようとしてこの作品を書いていることは間違いない。
    4章まで読み終え。
    (2017 04/09)

    回想の乱入
    もっといい題ないかな。
    「ただ影だけ」第5章本文読み終え。第1部はあとは第5章の挿入資料?のみ。
    謎解きとか話の内容が噛み合ってきてなかなか面白くなってきた。主人公の体制派とされるマルティニカと彼を裁く側の書記ユディットが、実は両者とも父親を反体制のソモサ襲撃失敗の際に殺された(マルティニカはユディットからそのことを知らされる、その資料が第2章の挿入資料)。またマルティニカの学生時代の親友で、今彼を裁いている司祭ニコデモの弟でもあるイゴールを拷問死させ死体を火山火口に投げ捨てたという責任者のアリバイをマルティニカが偽造?していたり(挿入資料3、4章。ここでその責任者の罪を暴露した医師がまたこの後暗殺されたり)。
    ということで、印象深い文章とか技法とかもいろいろあるのだろうけど、なんか先に進んでしまうのね。その中から一つだけ挙げれば、マルティニカ始め捕虜が街中入って群衆に取り囲まれる場面で、彼は眼前の自分に向かってくる群衆とともにかっての母親の姿を回想している(というかひとりでに立ち上がってくるというか)、そこの書き方がなんの断りもなく並置されていて、太字で書かれている箇所も過去と現在どちらも使われている。太字部分は彼からしてみれば突然入ってきたこれまでの意識の流れとは無関係な定型ことばみたいなのが多い。
    (2017 04/11)

    賭博と愛
    「ただ影だけ」第5章挿入資料。ここは第一部のラスト、作品全体の折り返しだけあって、主人公マルティニカの妻の作者へのメールという鍵になるもの。作品末の資料のメモ(ここもフィクション)とともに。
    ここでの新たな展開は、この妻がイグナシオと不倫していたということ。その前にルーレットで夫を巻き込んで破滅寸前までいったという経歴…賭博と愛とは似た何かの束縛からの自由の希求なのかも、と彼女は語る。
    (2017 04/13)

    盗まれた手紙
    「ただ影だけ」第7章まで。盗んだ手紙を隠すのに一番の方法はその手紙を額縁に入れて飾っておく、一番目立つところが一番気がつかないと言いながら、イグナシオはマルティニカの家に匿ってもらう。なんだか石田三成が徳川家康に匿ってもらったような感じ?
    なかなか引用がしにくい作品でもあるなあ。
    (2017 04/19)
    (補 やっぱりここはポーなんじゃないの?)

    マルケスとコルタサル
    「ただ影だけ」進んでいるけど表層的読みしかできなくて、「ただ筋だけ」ってな感じなんだけど、焦点はマルティニカと妻、イグナシオとの関係に絞ってきたのかな。表層でめだったのは他作家への言及。マルケスはキューバでサンディニスタに協力し、イグナシオがマルティニカの家を出る時の置き土産が「石蹴り遊び」。そいえば新版出ましたね「石蹴り遊び」…
    (2017 04/20)

    真実が作り出される時
    「ただ影だけ」昨日読み終わり。
    あれだけニコデモ司令官ほかの取り調べがあったのに、結局は群集裁判、怒り狂っている群集の前に出て面白い話して拍手喝采が沸き上がればOKという流れの中、抜け目のない俗称狼少年はソモサのプールでの失態話をして無罪放免。マルティニカはあたふたしている間に処刑が決まってしまう…という本当かよ的な展開。本当は…どうだったのだろう。作者ラミレスがほぼ作品を仕上げたあと、舞台となったトーラの町で聞き取りしたらみんな言うことが違ったという。その真実とされているものの危うさ?は、最後の補助資料の語り手がカパックの手の怪我を全く記憶していないというところでも明らかに。この補助資料の語り手は当時少女だったという人。ラミレスとおぼしき作者に向けて、「(FSLNの)オルテガと早く仲直りしなさいよ」と言ってくるなど、虚構と現実が分別するのが野暮に思えるほど程よく溶け合っている。
    現実のラミレスは第一次オルテガ政権の時には副大統領を担当していたが、その後別れてサンディニスタ刷新運動という政党を立ち上げて大統領選に臨んだが敗れ、それ以来政治から身を引き作家、ジャーナリズム活動に専念。再選の為憲法を変えたオルテガを批判する一方、「さらば、仲間たちよ」という革命回想記も書いている(虚構率はどのくらい?)。
    (2017 04/22)

  • (後で書きます)

  • サンディニスタやコントラは知っていても、詳しいコンテクストは知らなかったニカラグア。この本は実在の人物をモデルとしたアリリオ・マルティニカを中心にその当たりの歴史を虚実とり混ぜて語り、とてもおもしろかった。仏語では物語も歴史もhistoireだけれど、スペイン語ではどうなのかしらん。ところで、ソモサのプールでのエピソードは本当なんだろうか? それにしても独裁者って似ているものねー。

  • ラテンアメリカ文学の良作には技巧的な小説が多い気がするが、本作もそう。
    出来事としては3日足らずの事件。様々な登場人物の語りと、手紙や記事の引用を輻輳させる技法により、事件の背景にあるニカラグアの半世紀の歴史を浮かび上がらせる小説技法が見事だった。良書。

  • 「本流」魔術的リアリズム!神話化する革命と対峙する小説とは。ラミレス『ただ影だけ』:Book News
    http://www.n11books.com/archives/26804950.html

    水声社のPR
    「小社より新たなラテンアメリカ文学シリーズ、
    〈フィクションのエル・ドラード〉刊行開始!

    アイロニーと距離感、内面性とユーモア。
    セルヒオ・ラミレスは銅のような三面記事から
    言葉と想像力で黄金を生み出す錬金術師だ。——カルロス・フエンテス

    1979年、ソモサ独裁政権の崩壊を目前に控えたニカラグア、ソモサの私設秘書官として権力の影で活動していたアリリオ・マルティニカは海からの逃亡を企てるも革命軍に捕らえられ、独裁政権の悪行に加担した嫌疑で民衆裁判にかけられる……

    証言、尋問、調書、供述、手紙。事実のなかに想像を巧みに織り交ぜ、鮮烈な描写と圧倒的な語りの技法のもとに、歴史的事件の裏側をフィクションの力で再構築する現代ラテンアメリカ文学の新たな傑作。

    ◎ 次回配本は2013年5月、現代アルゼンチン文学の最重要作家、
    フアン・ホセ・サエールの『継子』(仮)を予定しております。どうぞご期待ください。」

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