傷だらけの店長 〜それでもやらねばならない〜

著者 :
  • パルコ
3.83
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本棚登録 : 285
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891948245

作品紹介・あらすじ

出版業界専門紙「新文化」の異端連載が待望の書籍化。最後まで抗い続けた書店店長のどうしようもなくリアルなメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 出版業界専門誌に連載された、とある町の書店店長の苦心の記録。理想と現実の間に挟まれて、刻々とすり減っていく店長の姿が切ない。いずれ時代に淘汰されるだろう書店員たちに向けた、魂のメッセージです。

  • うーん、なんと言っていいか言葉を失ってしまう。まず第一に、本好きの一人として書店の置かれている状況に胸が痛む。これについてはあちこちで言及されるようになって久しいが、本書ではそれが実感となって迫ってくる。暗澹とした気分になる。

    最後の方になって湧き上がってきたのは、「書店員」に限らず、仕事ってなんなのかという思いだ。筆者は、早朝から深夜まで煩瑣な業務に忙殺され、休みもろくにとれない日々の中で「客も取次も営業マンもみんな消えてしまえ」とまで思う。一方で、探していた本を見つけてあげた客の嬉しそうな顔に、書店員になろうと思った頃と同じ喜びを感じる。大好きな本を多くの人に届けたい、その思いに変わりはない。それでも、店長をしていた支店の閉鎖と共に書店員をやめていく。

    ああ、そうなんだ、と思う。どれほどオーバーワークでもそのこと自体が人を消耗させるわけではない。むしろちゃんとした仕事は必然的にオーバーワークになるとさえ思う。働いたらソン、みたいな態度の人はなんにもわかってないなあとよく思った。がむしゃらに仕事をする中でしか見つけられないものはいろいろあるのに、と。でも、望んで就いた仕事でも、そしてそれを一生懸命やっても、いや必死にやったからこそ、見えてくる辛さもまたある。本を「売る」ということが、この世の中で経済活動として成り立って行かねばならないという、いかんともしがたい現実。その前で「好きな本を人に届けたい」という思いは立ちすくむ。好きな仕事が苦痛になる。無力感にさいなまれる。

    そうなんだ、と思う。私も、職種や状況は違うけど、同じように20年以上続けた仕事をやめてしまった。時々働いている時の夢を見ることがある。目が覚めて「もうあそこに行かなくてもいいんだ」と思うと心底ほっとする。でも、やっぱり好きだったんだ。そのことを思い出させてもらった。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    出版業界専門紙「新文化」の異端連載が待望の書籍化。最後まで抗い続けた書店店長のどうしようもなくリアルなメッセージ。

    書店員に夢と憧れを持っている私めには、冷や水をぶっかけられたような気持になる悲しみの一冊でありました。万引き、押し寄せる新刊、大型店舗の進出に翻弄されて、自分がなぜ書店の店長をしているのか見失う毎日。書店員をやめていく同僚たち。なぜ・なぜ・なぜ。ひたすら自分に問いかける日々。心血注いて耕した棚は独りよがりなのか?それとも・・・。
    書店の辛さは色々なもので見聞きして分かっていたつもりですが、それでも店長の辛さと書店員さんの辛さはまた別物なんだと思います。マネージメントに縛られるので、趣味的な本棚を作って悦に入るような事は出来ないので、まず売上を考えなければいけない辛さ。頑張っている部下たちに金銭的に将来的な展望で報いることが出来ないもどかしさ。全くもっていい事無です。甥っ子に本屋になりたいと言われて反対し、甥から「では何故本屋になったのか?」と問われ口ごもりながら「そりゃ本が好きだから・・・」微笑ましいながらも本屋という稼業の救いの無さが良く出ているエピソードでしょう。趣味でするならこんなに楽しい事は無いけれど、口を糊するための生業とするにはあまりにも将来性が無さすぎる。そういうことなのだろうと思います。
    作家ではなくて、退職した書店店長が書いていると思うと特に哀切な感じがします。本の世界、ますます先行き暗いです。

  • 「傷だらけの店長」伊達雅彦◆膨大な仕事量、万引き犯の襲来、安い給料、そして休みは取れない。ある書店店長の戦いの日々と、その終わり。本屋業界が厳しく、著者の仕事が辛いのは分かったけど…本音なのだろうが書き方があまりに露骨で、書店に行きづらくなりそうなほど殺伐とした気持ちになる。

  • 書店員としては読まねばならんな、と(笑)

    感想という感想が出てこない。それが一番かな。
    書店員として読むとあまりにリアルで、楽しいとか
    面白いの次元じゃないので・・・w

    「本誌よりもでかい付録に辟易」には膝たたいた。
    どうやって梱包すりゃいいんだよ!!!どっち本体だよ!!ってw

    どこの職場でも、どこかでやりがいとか感じるんだろうけど、
    伊達さんが「まだ頑張ろう」と思えたいくつかの話が素敵だった。
    本の大半が「客なんて来なくていい」「取次が邪魔」「バイトが使えない」
    とかネガティブな内容なんですが(笑)

    自分の店が閉店に追い込まれて、崩れゆく店舗を見て
    伊達さんは何を思ったんだろう。絶対本屋に未練あるだろ!
    その後のことが書かれていないからすごく気になる。

    この本はまず書店員に読んでもらいたい。
    あるある~~~!!!というものから、
    え、そこまで???みたいな話まで。店舗によるんだろうけど。

    書店員じゃない人が読んだらどうなのかな。感想聞きたい。

  • 気にはなっていたけど読まずにいた本書。
    飯田橋のブックオフで購入。買ってよかった!

    本を愛する著者である書店店長の壮絶な闘い。
    本を愛する故の、理想と現実の闘いとも言えます。

    雑誌の付録つけ、万引き犯の対処、客の質問、そして売り上げ。
    書店員の過酷な実情がよく分かります。

    大手チェーンと自分の店を比較して、勝負にならない規模への
    恨み節の場面があります。自分も大手を利用して、一気に本を
    買いこんでいますが、何が便利かと言えば探しているものが
    ほぼ確実に見つかる利便性かと思います。しかし、それが出来ない
    小規模書店(一応著者の店もチェーン)は、確かに厳しいですよね。
    著者のような羨ましい、敵わない、という見方は何か心に残りました。

    会社から押し付けられるノルマが書店にもあるとは知らなかった。
    自分が売りたい本を頑張って売っても、ノルマ品が悪ければ
    さぼっていると同じなんて、こんなひどい話もあるんだ。

    余談ですが、昨年の宮部みゆきの「ソロモンの偽書」の
    店員がTシャツとか着て売り込んでいる姿、あんまり良いものとは
    思わなかったなぁ・・。

    商品構成について本部と揉める場面。
    データの売れ筋である『良好書』を置きなさい、だとー!
    良好書って何だ!そんな本、どうせ占いとかダイエットとか
    しょーもないものだろう!
    俺のこだわりの棚の方が、絶対いいんだよ!
    という、勝手な妄想だけどこんな著者の叫びが聞こえてきそうです。

    自分の棚づくりを理解してくれる人との、砂漠のオアシス的な出会いです。
    ただ、この著者の場合が車谷長吉だったので・・・、素晴らしい!と
    言い切れないところですが、こういう出会いは書店員なら
    嬉しいだろうな。

    本書ではハローワークに通ったりもしている著者。
    この本の刊行から約3年。どうされているのでしょうか。
    成功出来るとかは分からないので
    軽々しいことは言えないが、こういう人こそが自分だけの本屋を
    起こすべきだろう、応援したいなと思った。もう書店業界から
    去っていなければよいのだが・・。

  • イライラしながら読んだ。
    余り気持ちの良い文章でもない。
    素敵な内容の話も、筆者にかかれば
    なんだか、殺伐として淋しく感じた。
    けれど彼が焦ったり、怒ったり、恨んだり、自制したりするその感情の持て余し方を、私自身が良く知っている。
    何よりも、本を書店を愛してやまない
    その気持ちに共感する。

  • うなずけるところは数多い。
    閉店後、誰にも邪魔されずにする商品出しは楽しさを感じる。お店で起こるあらゆることが店長にやってきて、休みの日も店のことが気になり、店からの電話が掛かってくるたび、鼓動が早くなる。
    確かに休日も気が気ではない。夜中に目が覚めて、お店のことを考えだして、あれもこれも心配になって気づくと朝、そんな夜をいくつ数えたか。指を折っていけば仕事のストレスは数限りない。でもそれって、本屋だけじゃぁないと思うし、負の感情を正のパワーに変えて頑張っている人はたくさんいると思う。結局、仕事のストレスは仕事で発散するのが一番いいと思う。大変なのは分かる。分かるけれど、「それでもやらねばならない」という義務感、使命感以上に、生意気かもしれないが「それでも楽しみたい」と思う。

  • 同じ書店員としてはとてつもなく身につまされる内容でした。
    おそらく全国の書店員が今おなじような悩みを抱えているんじゃないでしょうか。
    それでも毎日書店員は本を出し続けます。
    傷だらけになりながら。

  • 困ったが、困っていない。

    本書のベースになっている「新文化」の連載を、私は毛嫌いしていたのだった。
    なんで業界紙で、ネガティブな話を読み物にするのか。
    確かに構造的な問題やら不景気やらはあるかもしれないが、
    記事としての分析はともかくとして、救いが見えない連載を
    する必要があるのだろうか、と。
    筆致は淡々としながらもユーモアがあり、ほろっとさせられたりして
    つい読まされてしまう。
    そんなところにも腹がたった。
    誰が、何のためにこんなにうまい文書いているんだ。
    なんか、よくなるのかね、これを読んで。
    そう思って、気になりつつも頑張って読んでいなかったのでした。

    今、単行本を通して読んで、
    突きつけられた事実に向き合うのを避けていただけだったのかな。
    直視しても、何かがよくなるわけじゃないから、と、言い訳をしていた
    だけかもしれない。
    と、思った。

    本書は、暴露本ではない。
    告発本でもない。
    一書店店長の、仕事風景である。
    迷いや怒りややりきれなさや喜びのある風景である。

    迷いや怒りややりきれなさや喜びのある風景は、どこにでもあるかもしれない。
    出版社に勤めているものとして、それっぽい感想を述べることもできるかもしれない。

    でも、
    働いていた店が閉店になり、会社に残る道もあったが、その道を拒み、
    これからどうするかを、ちょっと、ゆっくり考える、ということにした、という
    その決断に対しては、私は「おつかれさまでした」という言葉しか持たない。

    最初から、本書について何か書くのは無理だと分かっていた。
    昨夜酔っ払って勢いで書いたけど、とても公開できるものではなかった。
    途中で寝落ちして、本当によかった。危なかった。

    ひとことでいえば本書はそんな本でした。

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著者プロフィール

だて・まさひこ
尚美学園大学教授。
共編著書に
『ユダヤ系文学と「結婚」』(広瀬佳司・
佐川和茂・伊達雅彦 編著、2015年、彩流社)、
『ホロコーストとユーモア精神』(広瀬佳司・
佐川和茂・伊達雅彦 編著、2016年、彩流社)、
共著書に『ユダヤ系文学に見る聖と俗』
(広瀬佳司・伊達雅彦 編著、彩流社、2017年)。

「2018年 『ホロコースト表象の新しい潮流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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