えーえんとくちから 笹井宏之作品集

著者 :
  • パルコ
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784891948405

感想・レビュー・書評

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  • えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい
    をくぎると、
    えーえんと/くちからえーえん/とくちから/永遠解く力
    となっていて、
    一度目はえーえんと/くちから
    二度目はえーえん/とくちから
    三度目は永遠解く力
    と、なめらかにシフトしていく。
    きれいだ。

  • えーえんとくちから

    えーえんとくちから

    永遠解く力を下さい


    言葉は本来こんなにも自由で
    豊かなのに、どうしてこんなにも
    貧しく縮こまっていたのだろう。


    そんな
    反省を込めて
    尊敬も含めて
    すごく良い本でした。


    意味なんてかえって
    虚しくなってしまうほどに。


    短き永遠にご冥福を



    えーえんとくちから

    えーえんとくちから

    永遠解く力を下さい



    読むのにかかった時間:30分

    こんな方にオススメ:なんだか生きづまっているひとに

  • 2011年No.1。詩集。もっと彼の詩を読みたかった。もっと詩を紡ぐことができる人なのに。

  • 透明で つよく やさしく

    力を与えてくれる

    ぎゅっとそっと抱きしめていたい

    そう思ったのは この本だけだ

  • 京都の『恵文社一乗寺店』をふらふらと歩いていて、思わず手にとってしまった本。
    「えーえんとくちから」「えーえんとくちから」「えーえんとくちから」泣いているのか嘆いているのか、それとも何か光を手にして全身にはエネルギーがみなぎっているのかさっぱりわからないけど不思議なタイトルだ。地球人としての生も宇宙人としての生も、宇宙人からみた地球という惑星も全部経験しつくして、あらゆる触角を手にした人なんじゃないかな。この笹井宏之という人は。

  •   食パンの耳をまんべんなくかじる 祈りとはそういうものだろう

    夭折という言葉がくすぐる少し甘美な感覚を意識しないでいるのはとても難しいけれど、それを解っていた上でやはり思う。彼のように、生き急いだように見える人が時々居て、その人の残したものの中には不思議なほどに人が生きるために必要とされるもの(時折、自分はそれを保育園で並んでもらうことのできたあの半透明の肝油ドロップに喩えたくなる)が凝縮しているように思えてしまうのだ、と。そんな人たちは、普通の人がもっとゆっくりと少しずつ使ってゆくそのエネルギーのようなものを、短時間のうちにたくさん注ぎ込んで大きな炎を灯すことができたのだと思えるのだ。しかしその灯火はよく見ようとすると、ふっと消え去る。その残された暗さとのコントラストが凝縮というイメージをより鮮明にする。

    結局のところ、生きた時間が短かったとしても、そこに詰まっている何か人生において大事と思われるものの総量は、より長く生きた人のそれと同じであるような気がしてしまうのだ。しかしそれは、繰り返しになるけれど、夭折という言葉の響きに惑わされた感覚の導く考えに過ぎないのかも知れない。

      ひとりでにりぼんむすびになっていたひもの痛みの、はかりしれない
      われはつねにけものであれば全身に炎のやうに雨は匂へり

    しかし、そのエネルギーの凝縮には、確かに、ただ単に多くのエネルギーを使ってみせたというだけではない、心の在り方の足跡とでも言えるものが示されて、ある。運命を受け入れて見せた時のような状態、止揚と呼ぶのがふさわしいような心の状態があるように読み取れるのだ。そういったことは笹井宏之の歌集にも、やはり、ある。自分の死を必ずしも予期していなかったとしても。それは悟りという仏教的なことばにしてしまうと、諦観が強すぎるように思われるが、やはり宗教的な感覚とは分かちがたく、苦しみを受け入れ、恐れもまた自分自身の一部として認め、葛藤を昇華してゆく心の動きで、遠くが見えているかのように、こちら側に残されたものには見える状態だ。言い換えれば、既に彼岸へ旅立ってしまった心持ちが言葉に潜んでいるように思えるということなのだ。

      うしなったことばがひざをまるくして(ことばのひざはまるいんですよ)

    笹井宏之の残した歌には言葉の繰り返しが多い。そのリズムは音楽的で、ダンスのステップのようでもある。そのリズムは(あるいは口にした時の音は)一見、解り易い。しかし言葉の意味するものは決して明確ではなく、読む者をどこでもない場所へ導いてゆく。その口当たりのよさと結果の難解さがこの歌人の最大の特徴なのかも知れない。一方で、そうは思いつつ、自分はもう一つの特徴である暗喩が前面で出た歌に惹かれている(その音の軽快さが返って近づきがたさと結びつくのかも知れない)。

     「ねえ、気付いたら暗喩ばかりの中庭でなわとびをつづけているの」
      五月某日、ト音記号のなりをしてあなたにほどかれにゆきました

    だから、ここに引用した歌は必ずしも笹井宏之の代表的な歌とは言えないだろうとも思うけれど、歌人の喩えの巧みさ、そしてそれを口にする不親切さ(それは三十一音中で要請される潔さでもあるはず)に惹かれ、思わず書き写したくなる。

    歌集の残り頁が少なくなるにつれて、次第に迫ってくるものは重さを増し、最后の歌にたどり着く。そこに詠まれた光の明るさは、どうしてもそれが天からさしているものを連想させる。それはやさしく、それでいて衝撃的に潔い。それを書き写そうとしても、手は動かない。

  • 26歳の冬に永眠した笹井宏之の歌集を、偶然にも26歳の誕生日に贈ってもらった。(本当に偶然だったそうで素直に驚きを隠せない)

    それだけでも意味のあるものに思えない?


    『無題

    わたしのすきなひとが

    しあわせであるといい

    わたしをすきなひとが

    しあわせであるといい


    わたしのきらいなひとが

    しあわせであるといい

    わたしをきらいなひとが

    しあわせであるといい


    きれいごとのはんぶんくらいが

    そっくりそのまま

    しんじつであるといい』

    (作中より引用)


    なんて希望的観測。

    私もよく似たようなことをぼんやり思っていたから、ことばになるとなんだか不思議な感じ。

    理想論と言われようとも、思うくらいはいいじゃない。

  • 笹井 宏之さん
    もし会えるのなら 今一番会いたい人です。

    去年だったか一昨年だったか
    NHKのドキュメンタリーの再放送で笹井さんのことを知って
    以来、会ったこともないのに、笹井さんのことを時々おもう。

    こんな短歌がどこから出てくるのかと聞かれて
    「背中」と答えた笹井さん。
    胸を掴まれた。
    ものすごく、つよく、インスピレーションを与えられた。

    本が手に入らなかったので、ブログをたびたび読んでいましたが、
    そんな笹井さんの新しい本が出版されて、やっと手に入った。

  • 「透明で、永遠かと思えるほどの停滞を軽々と飛び越えてしまうあざやかな言葉。『ケータイ短歌空を飛ぶコトバたち…』『あなたの歌に励まされ~歌人・笹井宏之こころの交流』NHKドキュメンタリーで大反響を呼んだ、やさしい言葉。」

    著者等紹介
    笹井宏之[ササイヒロユキ]
    1982年8月1日、佐賀県有田町生まれ。2004年短歌を作り始める。2005年第4回歌葉新人賞受賞。2007年未来短歌会入会。未来短歌賞受賞。2008年歌集『ひとさらい』(BookPark)刊行。2009年1月24日インフルエンザによる心臓マヒにて永眠。享年26歳。2011年第二歌集『てんとろり』(書肆侃侃房)刊行

  • なるほど

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著者プロフィール

1982年佐賀県生まれ。2004年より作歌をはじめる。2005年、連作「数えてゆけば会えます」で第4回歌葉新人賞を受賞。2007年、未来短歌会に入会、同年度の未来賞を受賞。2008年、第一歌集『ひとさらい』(Book Park)刊行。2009年1月24日、自宅にて永眠。2011年、『えーえんとくちから笹井宏之作品集』(PARCO出版)を刊行。第二歌集『てんとろり』刊行、併せて『ひとさらい』再刊(ともに書肆侃侃房)。2018年、その早逝を惜しむ声を受けて、書肆侃侃房が短歌新人賞として笹井宏之賞を創設。第1回受賞者が2019年2月に短歌ムック『ねむらない樹』vol.2にて発表される。ブログ「些細」http://sasai.blog27.fc2.com/

「2019年 『えーえんとくちから』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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