アラスカ原野行

  • 平河出版社
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感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892031472

感想・レビュー・書評

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  • アラスカに関する著書の多くは「美しさ」や「素晴らしさ」を綴り「憧れを抱かせる」ものが多い。
    しかし「現実」のアラスカとはどういうところなのか…?
    本書は僕の知りたかった「現実」を少し伝えてくれた。

    ニュージャージー出身の著者は雑誌『ニューヨーカー』のノン・フィクション・ライターとして活躍。
    本書も著者自らの体験談・経験談である。
    内容は三部構成。

    最初は著者自身が参加した「川の学術調査」の話でいろいろな分野のスペシャリストと共にコバック川の支流サーモン川をカヌーで下る。
    文明社会に生まれ育った著者が手付かずの大自然と向き合い、静かに語られるその内容は共感を持って受け入れることができる。

    続くテーマはアラスカの州都移転問題。
    州都ジュノーは交通の便が悪く、アラスカの中心部からも離れているため州民投票により移転する方向で話は進んでいた。
    州都用地選定委員と行動を共にした著者の視点で州政府と州民の思惑が綴られる。
    アラスカの政治面が垣間見れて非常に興味深い。
    (本書では選定調査の段階まで書かれているが、その後地価の吊り上げなどのため再州民投票により州都移転は中止された)

    最後は金鉱採掘者や原野での自立生活に憧れてやってきた白人、そして先住民などアラスカに生きる人々の生活が語られる。
    先住民に関する著書は他にも多くみられるが、文明や貨幣経済社会を離れ原野の中で自給自足の自立した生活をしたいとアラスカへやってきた人々の話は他ではなかなか見ることが出来ず非常に興味深い。
    こういう人たちの考えや理想、現実、葛藤など、この部分にこそこの本の大きな価値がある。
    「原野に生きる」とはどういうことなのか…生易しい憧れなど打ち砕くリアリティ溢れる内容にただただ唸らされる。

    残念なのは内容が古いこと。。。
    1970年代半ばの著書なので現代と状況は大きく異なるであろう。
    「今」のアラスカはどうやら自分たちの目で確認するしかなさそうである。

    夢や理想ではなく現実のアラスカと向き合いたい人には読んでおいて欲しい一冊。

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著者プロフィール

文筆家。米国では現代ノンフィクションの草分け、名文家として広く知られる。1931年、ニュージャージー州生まれ。プリンストン大学卒業後、『タイム』記者を経て、『ニューヨーカー』のスタッフライターに。以来、長年にわたって同誌に寄稿している。ピュリツァー賞に4回ノミネートされ、1999年に受賞(一般ノンフィクション部門)。2017年には、長きにわたる出版文化への顕著な功績が認められ、イヴァン・サンドロフ賞(全米批評家協会)が授与された。現在も執筆のかたわら、プリンストン大学で教鞭を執る。著書多数。邦訳書:『原爆は誰でも作れる』(小隅黎訳、文化放送開発センター出版部、1975年)『アラスカ原野行』(越智道雄訳、平河出版社、1988年)『森からの使者』(竹内和世訳、東京書籍、1993年)『バークカヌーは生き残った』(中川美和子訳、白水社、1995年)『ボイドン校長物語』(藤倉皓一郎訳、ナカニシヤ出版、2014年)ほか。

「2020年 『ピュリツァー賞作家が明かす ノンフィクションの技法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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