立命館の再生を願って

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  • 風濤社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892193521

感想・レビュー・書評

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  • 大学経営について事例研究として学ぶ上で非常に参考になり、経営者への辛辣な批判や所属組織の法令順守については、自らの所属する組織並びに現在の職務に対して省みざるを得ない内容であると感じた。

    しかし、感情・経験・私見を主体とした分析であるため、著者が批判している内容が果たして現実にあったことなのか判別がつかないため、過度に当該著書を参考にしたり、賛成の意向を示すことは憚れるものと考えられる。

    それでも、非営利組織である学校法人経営に民間手法を取り入れたり、民間の経営理念を導入したり、民間出身者を登用したり、実績に応じた人事評価制度を設けたりすれば、経営は最適化され、改善されることは幻想であるかもしれないという考えを持つことができたことは貴重なことであると思う。

  • 本書ほど読者によって読み方・受け取り方が異なる本はなかなかないだろう。私は著者が冒頭と最後に記しているように、一私学関係者としてこの事例を興味深く読んだ。

    経営者層の立場でなくとも、描かれていることがらを整理し、少しでも合わせ鏡としてとらえることができれば、教材として価値のある著書になると思う。法人の規模や大学・法人の成立過程は、私学ごとに異なるので、私学経営論は、一般化は難しいので、本書のような性格の本から、事例研究的に学ぶほうがよいのかとも感じた。

    経営者の強力なリーダーシップと機関運用の民主的手続きのバランス、業種を問わない人事権・財政権に裏付けされた権力行使、カネと政争の問題は、普遍的な組織課題であるし、社会の中のヒト溜まりにはどこでも起こり得る事象であろう。この意味で、デリケートな実体験を基に本書のような事例研究のテキストを、世に送り出してくれた著者に拍手を送りたい。学問的に綺麗な言葉で構築された論文からは、なかなか得られない現場・運用上からみた点検項目がいたるところに散りばめてあるからだ。

    4章後半からは「学生」に係る記述が少なってくる。関係者間の政争が中心になる。この展開も何かを象徴しているといえよう。

  • 立命館大学の職員であった著者の手による、立命館の内情の開示と批判の書。
    歴史的には右に振れたり左に振れたりと忙しい立命館大学であるが、
    ここ20-30年くらいは、まさに躍進という形で成長を遂げてきている。

    その裏で何が起きていたか。

    カリスマ的なリーダー(元理事長の川本氏)が次第に独裁、
    教職員をないがしろにするなどの行動を取るようになったこと。

    北海道に系列高(立命館慶祥高校)を建てるときに、
    合併先の高校の理事長の未亡人に、
    勤務実態のないままで年間1000万円を支払う密約を交わしていたこと(!)。

    新キャンパスの構築にかかる用地買収において、不明朗な金の動きが存在し、
    そこに特定の職員が関係していること。

    などが書かれている。

    立命館関係者としてはさぞやリアルに感じられることであろうし、
    おそらくは、他の大学関係者にとっても、他人事ではないような、
    大学行政の側面なのだろうと思われる。
    なので、広く大学の行政や経営に興味がある人は読んでみても良いかもしれない。

    ただし、おそらく著者は文筆業としてのしっかりとしたトレーニングを受けていないのか、
    随所に文章が拙いところが散見される。
    また、校正が甘いために、変な文章もチラホラ。

    「はじめに」では、
    「自分が職員だったときに直接進言しても改善されたなかったため、社会を経由して批判するために」
    と書籍の狙いが語られていたが、
    こうしたツメの甘さは書籍自体の説得力を落としていまいかねないので、用心して欲しいものだ、と一読者として少し思う。

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著者プロフィール

熊本県立大学教授
著書・論文:『室町連環 中世日本の知と空間』(勉誠出版、2014年)、「物語草子における形式の問題―『横座房物語』の場合」(『国語国文』第86巻第2号、2017年)、「京師巡覧〈稲荷〉贅註」(『朱』第62号、2019年)など。

「2020年 『乱世を語りつぐ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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