鈴木いづみプレミアム・コレクション

著者 :
  • 文遊社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892570483

作品紹介・あらすじ

史上最速の小説家、待望の傑作集。没後二十年を経た鈴木いづみ。サイバーパンクを先取りしたSF小説や、アルトサックス奏者である夫・阿部 薫との壮絶な生活を綴ったエッセイ「ふしぎな風景」など、早すぎた天才作家鈴木いづみの代表傑作を厳選。コレクション未収録作品「あまいお話」収録。 写真/荒木経惟 エッセイ/高橋源一郎

感想・レビュー・書評

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    ■2022年8月19日(金)23:00 〜 2022年8月20日(土)00:45
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  •  鈴木いづみ、という名前だけは、阿部薫を通じて知っていた。
     その阿部薫にしても数曲を聴いたことがある程度だったのだが。
     ひょんなことから、鈴木いづみと僕が同じ誕生日であることを知った(勿論、歳は違う……月日が一緒だったのだ)。
     余談になるが、前田敦子も同じ誕生日だ。
     それで興味を持ち、古本屋で見つけた本書を読んでみたのだ。

     読んでみて、本当にビックリしてしまった。 
     ここに収められているのは、七本の短編と四本のエッセイなのだが、それらのどれもが、唯一無二であり、僕にとってはかなり衝撃的な内容だった。
     文章や構成はけっして技巧的ではなく、むしろ素人っぽいといえるかもしれないが、そんなことはどうでもいいこと。
     彼女の短編には(ジャンルとしてはSFに含まれるとのことなのだが)、むき出しの狂気があり、虚無感に浸った登場人物があり、悪夢のような世界が展開している。
     それらが妙にからっと明るいテンションで、作品によってはとてもコミカルに描かれている。
     精神的にもシステムとしても廃れていくその近未来社会からは、クリティカルな印象も受けるが、どちらかというともっと観念の世界に近いように思える。

     エッセイを読むと、不器用なままに物事を真摯に感じとりながら生き、その結果感受性豊かな故に意識が飽和状態を越えて破裂してしまったんじゃないか、そんな印象を受ける。
     小説以上に異様な世界が展開されている箇所がいくつかあり、彼女自身が抱えていた異様な(分裂症的というのは正確な表現なのかどうか判らない)世界を垣間見ることが出来る。

     彼女自身がエッセイで語っているように、これらの作品は想像力の産物ではなく、妄想力によって彼女が同化した姿なのかもしれない。
     同化であるならば、主観の範囲内なのだろうし、少なくともテクスト論の範疇で語ることは出来ない。
     彼女は首をつって自殺してしまったが、彼女はテクストと共に生きている。
     テクストから生身の彼女の息吹を感じ取ることが出来るのだ。
     作者は死んではいないのだ。
     こうやって変な理屈をこねくり回すのが男のダメなところ、と彼女に言われてしまいそうでもあるが……。

     時間をかけてでも彼女の残してくれた作品は全部読破しようと思う。
     同じ誕生日というだけで、何気なく手にした本ではあったが、これが人生で何度もあるとは限らない「出会い」となった。

  • もったいないなぁ。死んでしまったなんて。
    狂っているというか、普遍的な乾いた女の子らしさが存分に発揮されていると思う。
    岡崎京子的な。
    彼女は死ななければ、70年代というものを背負えなかったのかもしれないけど、それでも彼女が生きていたら、今何を書いていたのだろうかと妄想せずにはいられない。
    彼女の一言一言が、本当に共感を覚えることばかりで、古本探そうかと思う。
    想像力がなくて、妄想力があるってこととかね。

    ぜったい退屈 が一番好き。絶望だけど、幸せで、退屈なんかじゃない。
    中二病かもしれないけど、ここまでの作品に仕上げたら、もうこれは芸術だ。

    今じゃ絶対現れないタイプの天才。

  • 狂気の詰め合わせ。
    だけどなぜか不快にはならない。切なさすら感じたかも…。
    書かれたのは70年代なのに、それをまったく感じさせない。いや、ところどころの描写にその時代の空気を感じるんだけど、まるで現代を見抜いているかのよう。

    「女」についても考えさせられた。
    初っ端の「女と女の世の中」からもう。今でこそ男女平等が叫ばれてるけど、あの時代に、現状とは逆に男を有徴化するという発想を生み出す人って…ほんとすごい。
    あと、母親っていうのがキーワードの一つなのかもしれないと思った。

    エッセイも面白かった。

    女の頭の良さ→自分を保護する者を嗅ぎ分けるしたたかさ、単純な行動
    女は想像力でなく妄想力=演技力で生きてる

    ほぁぁぁ…

    かなり自身の思想が小説に反映してたんだってことを知った。

    45億人全部の人生を生きたいって言葉が印象的。
    存在自体が伝説…ってこういう人のことだな。
    あああ、気になる。もっとこの人のこと知りたい。

  • ピンク女優から作家へ転身、阿部薫との破天荒な結婚生活、早すぎる自殺など…彼女の壮絶な人生に目が向きがちなんですが、一度作品を読むと止まらなくなる。言葉ひとつひとつが研ぎ澄まされていて「誰も私に近づかないで!」と言ってる感じ。狂っているようにも見えるけど、実はどれも真理をついていることに気づく。70年〜80年代にこういう感覚の作品が出ていた事に驚き。

  • 偶然本屋の棚で見つけて、忘れられなくて購入。
    すごい引力。凝縮感。いろんな虚飾が剥がされて、「見ちゃダメ!」 なところが露になっているような焦りと興奮を感じる。ポルノというほど明け透けではなく、一見ガーリッシュな膜がかかっているようなところが、読みやすさにつながっている。でも、やっぱけっこう過激だぜ、これは。

  • 2011/1/1購入

  • あぁ大変な人だよホント。と思いながらも気が向けば気に入ったところだけ読んでしまう。

  •  ニュータイプの出現。

     世間には、普通に生きることが容易ではない感性をもった人が確かにいるのだ。

     あなたは人類を死滅させようというの!とか、言葉のいっこずつが真面目に狂っている。

     でも中二病とか、バカにしたいような気にはさせられない。物語が神話的でむしろちょっと怖い。

     アウトサイダーアーチストの作品を見るように、彼女の作品を読んでいます。奇異だけれど、原始的な感覚をとらえてはなさないような・・・。

  • 2007

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著者プロフィール

ISS 及び日本コンベンションサービスの会議通訳者として稼働後、1978年に渡米。ミシガン州にて1984年、鈴木・マイヤーズ&アソシエーツ㈱を設立。1989年、アメリカ翻訳者協会(American Translators Association : ATA)に加入後、日英両方向の認定翻訳者となり、日本語部門長、理事、翻訳認定試験審査委員などを歴任。現在は認定委員会委員及び通訳方針諮問委員会委員(Interpreting Policy Advisory Committee)を務める。1991年に創立されたミシガン翻訳者通訳者ネットワーク(Michigan Translators/Interpreters Network:MiTiN)の発起人の一人で、長年会長を務めた後、現在は理事会アドバイザー。2003年、カリフォルニア州にて日英の認定法廷通訳人の資格取得。全国司法通訳者翻訳者協会(National Association of Judiciary Interpreters and Translators : NAJIT)会員。

「2016年 『裁判員裁判時代の法廷通訳人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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