- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784892570834
作品紹介・あらすじ
夢見るは、自分自身も含めた人間すべての消えた、清潔な世界だ。珠玉の短篇集。
感想・レビュー・書評
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この人の基本姿勢は、孤独、幽囚、憂い、さらには車への偏愛などに帰せられるが、
二カ所、大変美しいところがあった。
「英雄たちの世界」わたしは星を見ない、愛し愛されていたことを思い出してしまうから。
「山の上高く」山の持つどこかよそよそしい完全さがわたしを死にたい気持ちにさせる。人間は憎むべきものだ。かわいそうな月。
しかしやはり、集中随一なのは「ジュリアとバズーカ」。この雰囲気を出せる文章は、他にない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アンナ・カヴァンの世界は雪や氷に閉ざされ風の吹きすさぶ凍てつく世界か、熱さに肌や喉の奥をジリジリと焼かれるような灼熱の世界に分かれる。極端だ。その2つの世界が同時に出現するのが表題の「ジュリアとバズーカ」。これは面白かった(と言っていいのかどうか)「炸裂する世界はなんて寒いのだろう」寒さと熱をくぐり抜けてたどり着いた先には何もない。まったき虚無の世界。寒くなったらまた「氷」を読もう。次は「愛の渇き」!
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かつてサンリオSF文庫から出ていたものの復刊。国書刊行会の『アサイラム・ピース』に続き、立て続けにカヴァンが入手可能になろうとは……(しかしこの状況下でバジリコの〝氷〟は品切れだとか。何故……?)。
カヴァンの清潔に対する拘りは解説でも言及されているが、車に対する拘りも強く感じた。
『以前の住所』『メルセデス』『クラリータ』、そして表題作『ジュリアとバズーカ』が好きだ。 -
カヴァンが見ているのは自身の願望と恐れだろうか。
閉じ込められた狭い場所から世界中へ、果ては宇宙までと空間を広げ、またもとの場所に戻ってしまう。その繰り返しだ。
先日読み終えた『氷』と重なる箇所がいくつも見られるが『氷』という作品への感じ方が少し変わったというか広げられた。
カヴァンはヘロインで仮に自分を消滅させることで生に留まっていたように思える。車とスピードという凝縮された時間も一種の麻薬のようではあるが、それは唯一肯定的な生であったのかな。
彩りが違って好きなのは「ある訪問」
登場する豹に安心感があるから。 -
悪夢なのに目が離せない作品群。著者の経歴と切っても切り離せない作品群。普通に暮らしていると思っていても、いつこちらの世界に引き込まれているかと思うと怖い。
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生涯精神を病んでいたカヴァンの短編集。
「クラリータ」は、目覚めると体中にニキビができていた「私」が美しく意地の悪い「クラリータ」と対面するというものだが、その異様さが第3者の視点からでなく、精神を患う語り手カヴァン自身の視点から読むことができ、おもしろい。
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https://www.lib.city.kobe.jp/opac/opacs/find_detailbook?kobeid=CT%3A7200183225&mode=one_line&pvolid=PV%3A7200320365&type=CtlgBook -
2014/2/9購入
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疲れている時にはいり込んで読むと何かを超越した癒やしを感じるか、精神が崩壊するかもしれない。とりわけ「英雄たちの世界」がすごかった。「メルセデス」も大概です。どのお話もこれといったあらすじはなく、あまりに率直なさびしいや寄る辺の無い不安や、虚無的な感情を共有することを余儀なくされる。その感触が色濃く残る。でも不思議と嫌な気はしない。本を閉じたいま、他作品がどうなっているのかとても気になる。
本物の気配に満ちていて、そうとしか生きられない人間の切実さを感じるところがかなり好き。