- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784892571015
感想・レビュー・書評
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パジター家の人びと、とりわけ7人姉弟(女4男3)を中心に、若年から老年までの心もようの移り変わり=「歳月」が描かれる。
『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『波』のあとの作品だが、英国ミドルアッパー階級の不自由しないが平凡な暮らし、人物の内面のゆらぎや幸不幸の感覚、美しい自然描写など、代表3作で見られたウルフらしさは本作にも感じた。しかし500頁超の読み始めから読了まで、けっきょく主人公は誰で、主題は何なのかがいまいちわからず、退屈だった。
没落貴族というほどではないが、4人姉妹ということで谷崎の『細雪』を連想。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文月葉月のナイトキャップ読書。パージター家の人々、その独白。個の孤独を内側に立たせ 空間の意義を放棄し 時空に漂い 内奥を凝視する、極めてエレガントに。物語の期間、ヨーロッパでは空前の犠牲を払った第一次大戦が起きているが、その“家”には希薄な蜻蛉のような ある種の暢気さが漂っている。それでも彼女は言う“To the New World!”と。“We shall be free, we shall be free, Eleanor thought”…エリナの忘却、終戦という人為的境界線をつくることはできても、もはや平和は人々の想いの中にしか存在しないであろう予感、未来への絶望を引き受けた安堵感。また 読みたい。
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難解なウルフ論にはもちろんついていけないが、読むと面白くないわけではない、という位置づけでそこそこ読んでいるウルフ。2013年に新刊が店頭に並んだのが珍しく読んでみた。
…で、私は何について600ページ近くを読んでいたのか、読み終えてもよくわからない。タイトル通り、歳月=The Yearsを読んでいたのだろう。パジター家の年代記だが、誰が主人公とも何がテーマともつかない。淡々と老いて移ろいゆく人々、背景にあるイギリスの季節と風景の繊細な描写が続く。その美しさに、読み手としてウルフの時間そのものに加わりたくなる。
中心人物といえるのはエリナで、後書きでウルフが自分をなぞらえていたのだと読み、親近感を抱く私はだいぶこじらせている(苦笑)孤独で活動的でひねくれたオールドミス。