歳月

制作 : 野島秀勝  大石健太郎 
  • 文遊社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892571015

感想・レビュー・書評

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  • パジター家の人びと、とりわけ7人姉弟(女4男3)を中心に、若年から老年までの心もようの移り変わり=「歳月」が描かれる。

    『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『波』のあとの作品だが、英国ミドルアッパー階級の不自由しないが平凡な暮らし、人物の内面のゆらぎや幸不幸の感覚、美しい自然描写など、代表3作で見られたウルフらしさは本作にも感じた。しかし500頁超の読み始めから読了まで、けっきょく主人公は誰で、主題は何なのかがいまいちわからず、退屈だった。

    没落貴族というほどではないが、4人姉妹ということで谷崎の『細雪』を連想。

  • 2016/8/2購入

  • 文月葉月のナイトキャップ読書。パージター家の人々、その独白。個の孤独を内側に立たせ 空間の意義を放棄し 時空に漂い 内奥を凝視する、極めてエレガントに。物語の期間、ヨーロッパでは空前の犠牲を払った第一次大戦が起きているが、その“家”には希薄な蜻蛉のような ある種の暢気さが漂っている。それでも彼女は言う“To the New World!”と。“We shall be free, we shall be free, Eleanor thought”…エリナの忘却、終戦という人為的境界線をつくることはできても、もはや平和は人々の想いの中にしか存在しないであろう予感、未来への絶望を引き受けた安堵感。また 読みたい。

  • 難解なウルフ論にはもちろんついていけないが、読むと面白くないわけではない、という位置づけでそこそこ読んでいるウルフ。2013年に新刊が店頭に並んだのが珍しく読んでみた。
    …で、私は何について600ページ近くを読んでいたのか、読み終えてもよくわからない。タイトル通り、歳月=The Yearsを読んでいたのだろう。パジター家の年代記だが、誰が主人公とも何がテーマともつかない。淡々と老いて移ろいゆく人々、背景にあるイギリスの季節と風景の繊細な描写が続く。その美しさに、読み手としてウルフの時間そのものに加わりたくなる。
    中心人物といえるのはエリナで、後書きでウルフが自分をなぞらえていたのだと読み、親近感を抱く私はだいぶこじらせている(苦笑)孤独で活動的でひねくれたオールドミス。

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著者プロフィール

1882年―1941年、イキリスのロンドンに生まれる。父レズリーは高名な批評家で、子ども時代から文化的な環境のもとで育つ。兄や兄の友人たちを含む「ブルームズベリー・グループ」と呼ばれる文化集団の一員として青春を過ごし、グループのひとり、レナード・ウルフと結婚。30代なかばで作家デビューし、レナードと出版社「ホガース・プレス」を立ち上げ、「意識の流れ」の手法を使った作品を次々と発表していく。代表作に『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『波』など、短篇集に『月曜日か火曜日』『憑かれた家』、評論に『自分ひとりの部屋』などがある。

「2022年 『青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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