- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784892712340
作品紹介・あらすじ
生島遼一、伊吹武彦、天野忠、富士正晴、松尾尊〓(よし)、師と友。忘れ得ぬ人々、想い出の数々、ひとり残された私が、記憶の底を掘返している。自由なスタイルが、時代の杭ともなる、文の輝き。
感想・レビュー・書評
-
タイトルになっている「天野さんの傘」。著者の山田さんの思いが伝わってくる良いお話でした。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1人でじんわり読みたいような文章である。
中でも「天野さんの傘」「裸の少年」がことにいい。 -
新聞の書評欄で取り上げられる。おやおやと思いうれしくなる。小沢信男氏の本と続くのは偶然。東京堂を覗くがまだなかった。東京堂になければ本屋さんで買うことができないと思い注文する。
以前、小林秀雄の言葉として「本を眺める」ということが書いてあったと記憶するが、山田稔の本はまさにそう。どんどん読み進めるということではなく、一章を読んでは本をたたみ、表紙を眺める。会話、漢字、ひらがな、行変えなどでページの趣を眺める。
過去との記憶を行きかう文章は心地よい。
読んだ中では、小沼丹や洲之内徹や前述の小沢信男にも見られると思う。 -
やっぱり山田稔さんの文章は読みやすくて好きです。
老人のエッセイという部類で考えると、庄野潤三さんよりは堅く、串田孫一さんよりはくだけた感じ。私の中では洲之内徹さんと山田稔さんは同じ匂いがします。
私は自分がじめっとしている分、からっとした男性的で、クールで、客観的な文章が好きです。
山田稔さんの文章は、「ちょうど良い塩梅」だよなぁといつも思います。
庄野潤三ほど女っぽくなく、串田孫一ほど堅くなく、長谷川四郎ほど線が細くなく、洲之内徹よりは近しい感じがし、室生犀星のような飄々としたところがあり、外国文学の良いところも感じ、エスプリとニヒルとドライのスパイスも多からず少なからずのいいバランス。
山田さんはいいとこどりの文章を書く人だと思います。
そんな山田稔さんの文章スタイルが出来上がる元となった話などが書かれていてとても興味深く読みました。
どの話も興味深く、胸に残る、心にじんとくる文章でした。
装幀も好きです。装幀は林哲夫さん。