就業不能リスクとGLTD(団体長期障害所得補償保険): ―労働力不足時代の福利厚生プラン―

  • 保険毎日新聞社
3.50
  • (1)
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 4
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892932939

作品紹介・あらすじ

本書は、生保・損保の各社員向けに、就業不能保険のその歴史について第一章で解説し、第二章~第四章で、就業不能保険の中身や各社の保険商品について、詳細に分析する。保険商品の給付条件や関連する公的制度にも触れ、その申請の流れについてもわかりやすく説明している。さらに各社の保険商品の特徴や違いは、一覧表としてまとめてあり、一目でわかるようになっている。
第五章では、精神疾患による就業不能リスクをとりあげ、社会問題として職場での対応の必要性に着目し、第六章以降では、企業での取組みとしてGLTD(団体長期障害所得補償保険)の中身について解説し、GLTDの導入事例を紹介している。人材不足のなか、働けない社員が増えるのは企業にとっても重大な問題で、企業の福利厚生の1つとして導入することを強く勧めている。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 就業不能リスクとGLTD 
    田伏秀輝・森田直子

    自分自身が携わる保険商品の中で、今後何を軸にしていきたいかと考えた時、「多くの日本企業へのGLTDの導入」に考え付いた。そういった中で、社外の学習ツールとして、この本を読んだ。生保分野はやや難しく、損保分野は既知のものが多かったが、他社でとった統計などは面白かった。
    GLTDとは、Group Long Term Disabilityの略称で、和訳すると団体長期就業不能である。従業員の長期の就業不能を補償する保険なのである。基本的に、一般企業に勤めている場合、就業不能になるとまず有給休暇を消化し、健康保険の傷病手当金が給与の2/3の金額で1年6か月支給される。その後、障害が一定以上認められれば、障害年金を受給できる。しかしながら、傷病手当金の補償額や、期間終了後の就業不能状態の継続は現行の社会保障制度ではカバーできない。故に、保険会社として、傷病手当金の上乗せや、期間終了から最大定年の65歳まで、ずっと給与の60%(~20%)を補償するこのGLTDを推奨している。
    この商品を販売する問題意識は、「少子高齢化社会における就業人口の減少」と「メンタルヘルス患者の増加」である。
    前者は、労働人口が減少した中でも生産性を高く働くために、社員の健康にも意識を向けた「健康経営」という考え方にもつながる。また、今後の採用においても、福利厚生面で優れている健康経営企業が生き残り、ブラック企業と呼ばれる企業が淘汰されていくことを踏まえると、GLTDの様な福利厚生制度の導入は必然とも思える。後者は、メンタルヘルス患者は再発率が約50%という事実である。再発の原因は、やはり貧困である。自分の食いぶちの為に、メンタルに不安を抱えたまま復帰し、再発してしまう。休職中の収入をサポートするGLTDは、この点において、再発の根本原因を断つ。
    GLTDは、社会保障制度が未熟なアメリカで多く導入されているが、今後、弱体化が予想される日本の社会制度を補完する上で、極めて重要な仕組みであると言える。

    そもそも、なぜこの商品を広めたいという想いに導かれたかといえば、自分自身のルーツにもつながる。大学時代、フランスの思想家・アレクシス・ド・トクヴィルの解説書を読んだ時、衝撃を受けたことを記憶している。まさしく市民革命がおこりゆく歴史的文脈において、来たる近代市民社会についてじっと腰を据えて、問題点を突いていく彼の筆致に心を震わされた。近代市民社会は、革命の中で、社団というコミュニティを徹底的に破壊した。地縁・血縁等々の、顔の見える共同体を破壊し、個人はまさしく砂塵となったのである。ドイツの社会学者テンニースは、この社会変化をゲマインシャフト(農村的地縁血縁共同社会)からゲゼルシャフト(利益・機能追求の都市社会)への移行として論じた。そう、今の多くの先進国はゲゼルシャフトなのである。このような社会の中で、次は資本主義の論理が、人々を分断した。消費単位がより細やかなほど、企業は売り上げを上げやすい。自給自足的な共同体は、企業の前で無力にも自分たちでできることをアウトソースする個人へと分断されていった。こうした文脈において、人々は恐ろしいほどに「負けしろ」を失っている。かつては、負けたとしてもゲマインシャフトが救ってくれた。しかし、現在の社会では、負けた場合、特に個人が就業不能に陥った際に、最低限救ってくれるセーフティネットが存在しない。存在自体はしている国の社会保障制度も、今後は徐々に弱体化していく。そうした中で、求められる社会変化は、「共同体の復権」である。「共同体の復権」には2通りあると考える。一念発起した人間(勝手に師匠にしている内田樹氏など)によって、弱者とは自らの変容態であり、保護するべきするものという根本の共同体倫理を人々に賦活し、文字通り足元から共同体を復権すること。そしてもう一つが、現存する企業が、共同体の役割を果たすことである。一日の大半を過ごす、企業で、就業不能に対するセーフティネットを構築することである。確かに、企業は営利組織であり、公的扶助団体ではない。しかしながら、今後の環境変化を踏まえ、健康経営やそれに立脚した福利厚生制度の充実は、企業における競争優位の根本となる。そう考えた場合、社員の健康に配慮し、社会的弱者に転じてしまった同志をセーフティネットで救うことは、利益を追求する上で必要なことではなかろうか。私がやりたいことは、後者である。内田氏の様な、文筆で世の中に呼びかける影響力がなくとも、一人の企業人として、企業を共同体に変革させるこの動きを、広めていくことは社会的使命ともいえる。。

  • 内容が少し浅い気がしますが、就業不能保険はもっと日本に浸透させるべき保険だと思います。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

【田伏秀輝】
㈱ファーストプレイス取締役
2002年より、GLTD制度導入のコンサルティング、導入後の運用サポート業務を始め、顧客からは、「幅広い情報提供と迅速丁寧な対応」に多くの感謝の声をいただき、高水準の契約継続率を維持。また、人事部・管理部向けに、法人保険のプロモーション事業を展開しており、ユーザビリティを常に追求したサイトを構築することで全国のお客様より数多くの引合いをいただいている。
【森田直子】
保険ジャーナリスト、㈲エヌワンエージェンシー代表取締役、保険業界向けメールマガジンinswatch発行人。
保険・金融分野専門の執筆家。大手生保営業職員・保険代理店での営業経験を持ち現場知識に強く、庶民感覚を重視したわかりやすい文体に定評がある。保険業界誌、経済誌各誌の記事執筆のほか、保険会社WEBサイト、大手保険代理店WEBサイト、保険会社のご契約のしおり等、募集文書含め多数の執筆を手掛けている。

「2018年 『就業不能リスクとGLTD(団体長期障害所得補償保険)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森田直子の作品

就業不能リスクとGLTD(団体長期障害所得補償保険): ―労働力不足時代の福利厚生プラン―を本棚に登録しているひと

新しい本棚登録 0
新しい本棚登録 1
新しい本棚登録 0
新しい本棚登録 0
ツイートする
×