竹林はるか遠く―日本人少女ヨーコの戦争体験記

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892959219

作品紹介・あらすじ

終戦直後の朝鮮半島と日本で、日本人引き揚げ者が味わった壮絶な体験を赤裸々に綴る、息もつかせぬ、愛と涙のサバイバルストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 良かった、感動したなどという読後感がひんしゅくを買うのであれば、「心を打たれた」と言い換えよう。
    これまでも戦争物を数多く読んできたけれど、11歳の少女の目を通して語る体験談は初めて。
    終戦時の朝鮮半島を縦断する決死の逃避行と、引き揚げ時の苦労談は、淡々と語っているからこそ凄まじさが伝わる。
    1986年にアメリカで出版され、日本語版ははるかに遅れて2013年7月19日に世に出されている。
    たったひとりの少女の自伝の出版がこれほど遅れた理由は何なのか、それはもうこの際どうでも良い。
    今はただ、ひとりでも多くの方に読んでいただきたい。
    読み手の考え方で、突っ込みどころも数々存在する作品だが、著者のヨーコ・カワシマ・ワトキンズさんの意図するところはただひとつ。
    後書きにあるように【この物語を通して、戦争の真っ只中に巻き込まれたときの生活、悲しみ、苦しさを世の中に伝え、平和を願うためのもの】なのだ。
    そしてもうひとつ。
    【戦争とは恐怖そのもので、勝負はなく互いに「負け」という赤信号】という言葉も、深くかみしめたい。

    なんでも韓国では、2005年に出版されるもその後発禁となったという。在米韓国人たちも、あちらで教材として扱われることに対してかなりの反対運動を繰り広げたと聞く。
    ということは、たぶん描かれていることは真実であるに違いない。
    本書の内容について予備知識が多少あった私が読むと、レイプ場面などはむしろ簡潔にさえ感じられる。
    ヨーコのお母さんが同じように自伝を出せば、更に熾烈を極めたものとなったろう。
    その母親が亡くなる場面では、涙・涙だったが。 

    ヨーコの姉・好の、ナウシカばりの凛々しさと賢さ、たくましさ。妹を思う優しさ。
    目的意識の明確さと自己管理能力の高さがなせる技だろうが、今の子供たちには圧倒的に欠如している部分だ。
    だがそういう私も、子どもの頃どれほどこのふたつを手に入れたかったことか。
    兄・淑世を決死の覚悟でかくまった朝鮮人夫婦の温かさ。ここも見逃せない。
    親交を深めた人々も、何人も登場する。
    食うや食わずの状態でも真っ先に子どもたちの教育を優先させた、賢明なお母さん。
    そんなお母さんの願いがかなって、その後のヨーコを教育が確かに支えていったこと。
    そして、心を鼓舞してくれるものはいつも家族の絆だったことも忘れたくない。

    こんなにも学ぶべきものがたくさんあるというのに、ページをめくる手が止まらなかった。
    遅読の私が、わずか数時間で読み終えたのだ。
    昨年新聞の書評で見てから「読みたい」と思い続け、ブクログの皆さんのレビューがそれを後押ししてくれた。
    ありがとう、レビュアーの皆さん。ありがとう、ヨーコさん。
    そして日本でも、アメリカのように中学の教材として使われることを心底願う。

  • 手に取った時は、文字も多く読めるかな?
    と思ったが読めばあっという間でした。
    読み進めていくのがとても辛かった。
    でも続きは気になるし…

    朝鮮半島から戦後の、引き上げの話です。
    16歳の姉と11歳の自分、母、18歳の兄。
    父は仕事でほとんど帰ってこい。

    18歳の兄が親に相談もせず、勝手に入隊することを志願
    母や姉も猛反対で、それでも兄は入ると言い張り
    口を聞かない数日が過ぎ、学力検査の結果はひどいもの
    兄は最後には家族の意見を聞き入れ、わざと試験に落ち泊まりの工場勤務へ

    戦時中であっで、習い事は続けなさいとキツく言う母
    茶道、花道、習字、日本舞踊、詩歌の詠み書き
    慰問先で、この先自分たちを助けてくれる人との出会い
    しかし、その慰問先は傷付いた兵士たちで主人公はあまりの怪我に怯え優しく接せれなかった。

    数日後に慰問先で出会った伍長さんに逃げなさいと言われ兄の帰りを待つ時間も許されないまま
    逃げることに

    16歳の姉だってまだ子供なのにたくましく
    母親だってまだ若かっただろーに
    引き揚げまでの過酷なお話。
    語り部さんの書いた作品なので、すごい緊張感やらが伝わった。

    日本へ帰ってから、まさかの母親が死んでしまい。
    学校から帰りが遅い姉は妹に内緒で仕事をして帰ってくる。
    それを知った妹は知らないふりをしたが姉が自分を養ってくれる優しさに気付いて助け合って生きていく姉妹。

    兄も1人遅れて逃げるが、何度も殺されそうになり
    最後は優しい家族に助けられ日本へ

    続巻、これから読みます。

  • 著者・ヨーコさんは、終戦後の満州からの引き揚げを経験し、

    日本に戻ってからも苦労をしながら学問を続けて、
    後にアメリカ人と結婚、渡米されています。

    この本はそんなヨーコさんがご自身の戦争体験を元に、
    1986年に書かれた一冊、アメリカの学校では副読本にもなっているとか。

    人の醜さと高潔さを同時に伺える、そんな印象が残りました。

     日本人の陰湿さも、朝鮮人の暖かさも、
     朝鮮人の残虐さも、日本人の高潔さも、

    その全てが綯い交ぜになって、人の本質が紡がれている、

    戦争は極限状態の連続ですが、人はその極限状態で、
    民族などとは無関係な“生の本質”をあらわすのでしょうか。

    一貫しているのは、共産主義勢力のエゲツなさ、
    これは、ソ連も共産支那もかわらない、さすがの毛沢東。

    ん、こちらであれば、小中学生にもフラットに読ませられると思います。
    戦争の悲惨さと陰鬱さ、その中でも失われない人間の尊厳、、

     “戦争とは恐怖そのもので、勝負はなく互いに「負け」”

    これに尽きると思います、ただこの一言に尽きると。

    圧倒的な暴力の前では人は無力で、翻弄されて、理不尽に“奪われていく”、
    そして関わった人は誰もが、何かしらを“失っていく”、それが故に、、

    戦争に“勝者”というものは存在しないのではないかと、
    そんなことを、真摯に伝えてくれると、そう感じます。

    そして、こういった書籍を副読本として使うアメリカの懐の深さは、さすがだなと。
    いつの日か息子が読むように本棚に並べておこうと、そんな一冊です。

    • nejidonさん
      こんばんは♪
      本棚で見てから、この本のレビューを心待ちにしていました。
      きっちりおさえるべき点はおさえてあって素晴らしいです。
      私もこ...
      こんばんは♪
      本棚で見てから、この本のレビューを心待ちにしていました。
      きっちりおさえるべき点はおさえてあって素晴らしいです。
      私もこれから読む予定の一冊です。
      小中学生でも、というところに強く惹かれました。
      読みこなして、中学生向けのブックトークに使いたいものです。
      2014/03/14
    • ohsuiさん
      nejidonさん
      ありがとうございます!

      戦争の怖さ、ということがダイレクトに伝わってくる内容でした。
      5年生くらいになれば、ヨ...
      nejidonさん
      ありがとうございます!

      戦争の怖さ、ということがダイレクトに伝わってくる内容でした。
      5年生くらいになれば、ヨーコが同世代でもありますし、想像力を持って読める内容と思います。

      読み継いでいきたい1冊ですね~
      2014/03/17
  • 高橋源一郎の「飛ぶ教室」の書籍紹介で知って読んでみた。高畑勲の「火垂るの墓」の主人公がどれだけボンクラだったのか分かるようなサバイバル物語であった。朝鮮から引き上げる途中の朝鮮人たちの非道な行いを告発してあるが、そのせいで全米で教科書の副読本として採用されたの知った朝鮮人たちが毎度のごとく妨害活動をしたらしいが、この物語は戦争に負けるとはどういうことかを示しており、日本人こそが読まなければならない物語だと思う。3人兄妹が再会したところで物語は終わっているが続編も読んでみたい。勝てない戦争はしてはいけない。

  • 単なる戦争の物語ではない。
    生き方について考えさせられる良書。
    児童文学っぽい装丁にためらわず、皆に上下巻で読んでほしい。特に下巻の方が染みる。
    自分も苦しい時に、困っている人に親切にできるか?
    そんなことを考えさせられる。

    アメリカの道徳(っぽい教科?)の読みものに採用されたことがあるそうだが、日本で是非、映画化されて欲しい。

  • 朝鮮半島の北に位置する羅南という町に雍子は住んでいた。父母と姉と兄との五人家族。しかし戦火は一家にも近づいてきた。父親が仕事で満州に出張し兄が学徒動員で工場に働きに行っている間に三人は家を捨てて逃げなければならなかた。共産軍が近づいてきて日本人と知られれば殺されかねなかったからである。羅南から赤十字の仕立てた列車に乗ってまずは京城を目指す。そして釜山から船で日本へ。辛く危険な逃避行が始まった。

  • 私も三人兄弟で、兄、私と妹がいて、凄くヨーコの家族と重なって読めました。特に姉の好の威張っている態度の裏には愛のある行動は凄く共感しました。
    最後三人兄弟が揃った時めっちゃ感動して泣きました〜

    生きる強さと、やはり戦争は本当に繰り返してはいけないものだと改めて感じました。

    文章は比較的に読みやすくて、電車の中で読み終えました。

  • 生々しい。
    戦争の恐怖、今の平和さを痛感する。
    生きるという強い意志と絆。
    周りの人々の過酷さが見えるから頑張れるのだろうか。
    戦争はしてはいけない。

  • 感動しました。
    戦争時の生々しい体験記として希少です。
    日本人として読んでおきたい一冊。

  • 難民になるとはどんなことなのかが、よくわかる。

    印象深いのは、京都に戻ってから、お母さんが最初に決めたことが、子供達の学校のこと。家も仕事もない状態、先が読めない状態で、子供の教育を真っ先に考えられるだろうか?

    いろんな意味での育ちの良さが、逞しさや凛と生きることにつながっているのだなぁと感じられた。

    反戦だけでなく、今を生きる、明日を生きることを考えさせられる本です。

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