昼、介護職。夜、デリヘル嬢。

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  • ブックマン社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893088598

感想・レビュー・書評

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  • 「介護職の女性なら誰でもデリヘル嬢をしていると、言っているのではない。なぜこのようなタイトルの本を書いたかというと、介護の本当の現場を一人でも多くの人々に知ってもらいたかったからだ」という家田荘子さんの思惑通り、私はこの本を読み、いろいろなことを知り驚きました。

    介護という仕事はきつくて低賃金、その事はもともと知っていたので、あらためて「本当に偉いなあ、尊敬する」。
    ただ、今回初めて知ったのはお爺ちゃんたち(そして一部のお婆ちゃん)のエロっぷり!
    とっくに枯れていると思っていましたので。

    「取材をするうえで浮かび上がってきた問題がある。
    四人に一人が高齢者というこの国で、見ないフリをしてきた性の問題だった。
    高齢者に性欲はないものと、この件については無視をされ続けてきたが、『性の難民』が高齢者の間で増えているのも現実である。
    自分がそういう年になっていないから分からないが、体は老いていっても、認知症でなければ、心のほうは死ぬ直前まで成長をし続けられるものらしい。
    だから恋もしたいし、いろいろと意欲や希望も湧いてくるし、体はしぼんでも、個人差で性欲の衰えない人々もいる。
    それが人間だとして、当たり前のことなのだと思うが、高齢者に関しては、ずっとこの国では蓋をされてきたように思える。」

    介護してくださる女性にひどいセクハラ行為を行うお爺ちゃんたち。
    明日から彼らを見る目が変わりそうな私。
    しかしさらに読み進めて知ったのは、「可愛い」「若い」「スタイルがいい」の三項目のそろった介護士さんには、お爺ちゃんたちは引いてしまい、エロ行為はせず、全面的に「いい子」になろうと努めている。
    そうじゃない介護士さんに、セクハラするのです。
    「してくれるでしょ?するよね?もう年なんだから」という口調。
    余談ですが高畑淳子さんの息子さんの事件を思い出しました。

    あとがきに「父親(元国家公務員のエリート)のセクハラでヘルパーさんが次々やめてしまう事実を知って驚愕した娘」の話がありました。
    私の父はそういう面をまったく見せずに亡くなってくれて、ほんとうに良かった。
    お酒とたばこに感謝…。お母さんごめんなさい。

  • 「介護の仕事が好き。」
    報酬が低くても好きな方がいらっしゃるからこの業界、今ギリギリで何とかやっていけてるのかもしれない。
    家族の知らないところで、大変な苦労がある。そんなこと知らなかった。。。
    「報酬が高くなってもデリの仕事は続けたい・・・」この気持ち、男の私にはまだわからない。

  •  タイトルの通り、昼に介護職として働き、夜や休日にデリヘル嬢として働く女性にインタビューした形式のノンフィクション。

     介護という世間に対して正しい職業と、デリヘルというセックスワーカーを両立させている女性が多数いる。それは介護職だけでは食べていけないほどの低賃金であることに加え、いま、介護されている人たちの、介護する人へのみくだしのまなざしがある……という話なのだが、どうにもなんだか「ノンフィクションの形式を取った作者のメッセージ」という気がしてならない。
     この本に出てくる彼女らは、きらきらとしながらやりがいを持ちプライドを保ちつつ両方の仕事に片足ずつを突っ込んでいる。だけど、そうじゃない人も居るんじゃ無いか? その声を拾わなくて良いのか? 本当の低賃金による苦労はそこにあるのか? となる。
     個人的には、ブラック企業のことを「自分を鍛えるのに良い場、向上心がないから辛いって言う」のに似ているような気がする。

     なお、この本に出てくる女性がニセモノだとか嘘だ言うつもりは無い。立派に働いているし、よくぞきちんと立っていると思う。
     だが、彼女らを選ぶ作者さんの視点は、果たしてフラットなんだろうか……と疑問を感じた。
     数をそろえるなら考え方の違うバリエーションが知りたい。あるいは、ひとりの個人をもっと深く。もしくは、介護という業態をもっと深く掘り下げた内容が知りたくなった。
     もしかしたらこのシリーズで何作も書く第一作かもしれないなとも思う。

  • デリヘル嬢、という言葉にいやらしさを感じていた、そんな自分を恥じた。介護職と大差ないのかも、そして究極の介護職がデリヘルなのかもしれないと感じた。

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著者プロフィール

愛知県に生まれる。作家。僧侶。高野山本山布教師。行者。日本大学芸術学部を卒業し、女優など10以上の職業に就いたあと、作家に転身。
1991年『私を抱いてそしてキスして――エイズ患者と過した一年の壮絶記録』(文藝春秋)で、第22回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。2007年、高野山大学で伝法灌頂を受け僧侶となり、同大学大学院修士課程を修了する。高野山高校特任講師。
著書には映画化された『極道の妻たち®』(青志社)、『少女犯罪』(ポプラ新書)、『四国八十八ヵ所つなぎ遍路』(ベストセラーズ)、『女性のための般若心経』(サンマーク出版)、『熟年婚活』(角川新書)、『孤独という名の生き方』『大人の女といわれる生き方』(以上、さくら舎)などがある。
現在も執筆と取材の他、山行、水行、歩き遍路を欠かさない。高野山奥之院または総本山金剛峯寺に駐在し(不定期)、法話をおこなっている。

「2020年 『別れる勇気 男と女のいい関係のカタチ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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