国民のための戦争と平和の法―国連とPKOの問題点

  • 総合法令
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893462763

感想・レビュー・書評

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  •  本書が出版されたのは1993年。カンボジアのPKO活動のために自衛隊が派遣された翌年である。著者は社会学者の小室博士と元外交官の色麻氏。少し古い本ではあるが、安保法案が成立したのを機に、読んでみた。
     本書のテーマは「国際法」の中でも「戦時国際法」である。これまで聞いたこともなかったが、日本も加入している1949年のジュネーブ条約では国民に広く認知させることが義務付けられているとのこと。スイスでは学校教育の中で扱っているとのこと。安保法案が必要になるぐらいの国際情勢であるならば、戦時国際法の認知度を高める施策も同時に検討すべきであろう。
     国際法は国際社会のルールである反面、小室氏は西欧社会型正義の押しつけであることに警鐘を鳴らしている。カンボジアのPKOでは二人の日本人が現地でなくなっているが、現地の実情を無視した西欧型ルールを導入することの難しさとリスクの認識不足を指摘している。また、自衛隊については憲法9条の観点から議論がされてきたが、色麻氏は軍隊と警察官の違いを明確にし、国家権力の構造上の問題を指摘している。自衛隊の活動範囲が広げられようとしている現代においても、両氏の指摘は傾聴に値する。

  • いくつか小室先生の著書を拝読している者にとっては内容の重複があり、また1つの本としての纏まりのなさなどから評価はマイナスしています。

    しかし、真の平和主義とは戦争を遠ざけるものではなく戦争というものを理解し、それに備えることが必要という考えを受け入れられる気がしてきました。特に、国際法を批准していながら戦時法など何も知らない日本人というのはあまりにも無知すぎるなと。むやみに戦争をできるように法整備を変えようとする現政権の動きには到底賛同できませんが、かといって護憲すれば良いというこれまでのスタンスは変える必要があると感じます。

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    ""Peace keeping Operation""を「平和維持活動」なんて「訳」するのが、まず問題なんですね。""Operation""とは、作戦(活動)。71

    作戦をして血を流さないですむなんて思うことは、血を流さないで手術をするということと同じです。72
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    人びとが怯えきっていた米ソ戦争が、単なる杞憂におわったのでしょう。根本的理由は、アメリカもソ連も、戦争をするつもりだったことです。88

    (可能的)両戦争当事者、ともに、「戦争をなくすことができる」という幻想をいだきませんでした。89
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    十九〇七年のハーグ平和会議のとき、「開戦ニ関スル条約」なるものが成立しました。264

    わが国は、真珠湾の武力攻撃の前に、宣戦布告を通告する国際法上の義務があったということになります。しかるに問題は、そこで決着しないのです。265

    法になるには、その社会で、慣習として名実ともに法的確信が生まれなければなりません。

    当時の主要国の著名な国際法の著書では、おしなべて、開戦は、事前の宣戦布告か、開戦の意志を伴った事実上の武力行使によって行われると書いてありました。268

    第二次大戦前のアメリカの教科書にも、「開戦ニ関スル条約」は、僅か二十八カ国の批准を見ただけで、すぐに時代遅れとなってしまったとして、開戦のルールは、従来の慣習法の通り、事前の宣戦布告は義務的としていない例が少なくありませんでした。

    形式的には法として定立されながら、遂に法とはならなかった一例と心得てよいのです。
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    十九〇七年のハーグ陸戦法規は、捕虜の送還について、いかなる規定を設けているのでしょうか。つまり、シベリア抑留開始の時点での現行法の問題です。

    「平和克復ノ後ハ」という字句に注目して下さい。

    「平和克復」とは、実際に停戦が実現したときではなくて、法的に戦争が終了したときを意味します。291
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著者プロフィール

小室 直樹(コムロ ナオキ)
1932年東京生まれ。京都大学理学部数学科卒業。大阪大学大学院経済学研究科、東京大学大学院法学政治学研究科修了(東京大学法学博士)。この間、フルブライト留学生として、ミシガン大学、マサチューセッツ工科大学、ハーバード大学各大学院で研究生活を送る。2010年逝去。著書に『ソビエト帝国の崩壊』(光文社)、『「天皇」の原理』(文藝春秋)、『日本の敗因』(講談社)、『日本人のための宗教原論』(徳間書店)、『日本人のためのイスラム原論』(集英社インターナショナル)、『小室直樹の資本主義原論』『日本人のための経済原論』『数学嫌いな人のための数学』『論理の方法』(以上、東洋経済新報社)ほか多数。

「2015年 『小室直樹 日本人のための経済原論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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