- Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
- / ISBN・EAN: 9784893665652
作品紹介・あらすじ
遙かなる時代、闇に支配されていたユグドラル大陸に十二柱の神々が降臨した。神々は人間の姿をとり、聖戦士となって闇を滅ぼし、世界に光を蘇らせたという。そして時は流れ、ふたたび邪悪なる闇がこの世に忍び寄ろうとしていた…。光神ナーガ対暗黒神ロプトウスの対決と、運命に翻弄される十二聖戦士の末裔達の愛と戦いをドラマチックに描く。
感想・レビュー・書評
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ファイアーエムブレム聖戦の系譜・セリス編を、ウォーシミュレーションゲームの大家・鈴木銀一郎がノベライズ。
鈴木銀一郎先生といえば、ボードゲーム界の父とも呼ばれ、ウォーシミュレーションゲームデザイナーとして早くから活躍された伝説の人物である。2021年に亡くなられたが、主力商品だったモンスターメーカーのノベライズを含め、主に1990年代にいくつかの小説作品を残している。著書『ゲーム的人生論』にて、ファイアーエムブレムというコンピューターのシミュレーションゲームについても初代からどっぷりとプレイされていることが書かれており、そのお立場からも、本作・聖戦の系譜のノベライズの話が持ち込まれたのは自然な流れだったといえる。
鈴木先生の著作をいくつか読んだことがあるのだが、本職ではないとはいえ、非常に味のある文章を書く人である。また本書においては、ウォーシミュレーションゲームの専門であるがゆえの、独自の視点で物語に言及する部分もあり、単純なノベライズに収まらない独特の魅力があった。
聖戦の系譜という複雑で壮大な物語世界について、ゲームの設定をもれなく吸収し、うまく活かしている。後半のセリス編について、文庫本一冊という制限のある枚数の中で、書くべきことはすべて書ききっていると思う。そもそも、聖戦の系譜という原作自体が非常に面白い物語であり、そこに銀一郎節とでもいうべき魅力ある文体がのっているのだから、面白くないわけがない。ゲームを改めてプレイしたいと思いながら、同時に鈴木銀一郎著の小説を他にも読みたくなってしまった。
また、ファイアーエムブレムというタイトルはいずれも、別メディアにおいては、様々な絵師さんによってキャラクターを描かれることが通例となっていて、本書のイラストも物語の雰囲気に合っていて、とても好みだ。
アルヴィスの心理が原作でどう描かれていたか詳細までは覚えていないのだけど、彼の内面の描写は小説ならではといえるだろう。ここは正直、泣けるものがあった。セリスVSアルヴィス戦が盛り上がるのは原作同様、十二魔将が空気なのも原作同様で笑った。
基本的なストーリーは原作ゲームと同じだが、既プレイであるがゆえに読んでいて楽しかった。聖戦の系譜を隅まで堪能できる充実した一冊だ。いや~聖戦の系譜は面白いわ、やっぱり。詳細をみるコメント0件をすべて表示