スメルズライクグリーンスピリット SIDE:B (POE BACKS) (ポーバックス Be comics)

著者 :
  • ふゅーじょんぷろだくと
4.53
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本棚登録 : 1104
感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893938060

感想・レビュー・書評

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  • いきなり冒頭よりホラーちっく展開。鬼気迫るものがある柳田ですが、彼もまた理性を保つことができないほど限界ギリギリまで追い詰められていたのかと思うと、複雑な気持ちになります。
    パンドラの箱…開けたら最後と言うのがすごくわかる言い回しです。
    柳田の魔の手から三島を救い出したのは、桐野とそしてなんと夢野!
    夢野は好きな子をいじめちゃう王道パターンだったらしい。好きだと自覚したのはいいけれど、深く考えもせずに男の三島に恋心を抱いてしまった夢野のツケは当然大きくて。

    そこからの三人三様の在り方がすごかった。
    ド田舎だから、噂もすぐに尾ひれ背びれがついて広まってしまうのですが、それに対するそれぞれの母親の反応がこうも違うものかと思わされます。
    三島の母親は強かった。息子にとっての幸せが何であるか理解できる人。世間体なんかよりも本人の気持ちを一番に考えてる。
    桐野のところは正反対でしたね。むしろ、桐野の方が母親の幸せを一生懸命に考えている。それは、母親がずっと辛い思いをして苦しんできたのをよく知っているから。溺愛されてきたのもわかってる。とても優しい心の持ち主です。
    夢野は、お母さんに背中を押されて三島のことを男だけど好き、とやっと認識することができたような。ここの母親は心が広いですね。おおらか。
    どの母親も自分なりに子供のことをとても愛しているんだなと、しみじみ。

    家出シーンは、青春のキラキラと危なっかしさがいっしょくたになって、すごく印象的でした。胸がキュンとなる。「楽しかったねぇ…」という桐野の一言が胸に痛くて痛くて。二人が別れるところでは涙が止まりませんでした。同じ道は歩くことができなかったふたり。
    どちらの選択も間違っていなかったと思います。三島のように自分らしく生きることも、桐野のように家族の幸せを考えて生きることも、どちらも悪くないです。桐野は母親の犠牲になったわけじゃなく、自分でしっかり選び取っているところに「強さ」を感じます。

    映画の「モーリス」を思い出しました。結婚したクライブが、自由に生きるモーリスを思いながら誰もいない窓の外を眺めるシーンが切なかった映画です。最後の桐野の瞳が切なかったです…
    現実的には桐野のような生き方をするゲイが一番多いはず。だからこそ、彼の幸せを祈らずにはいられません。決して柳田のように壊れてほしくないです。
    一方で、三島と夢野がうまくいってるのがわかってよかったです。夢野がものすごく成長してびっくりするくらいイイ男に!三島のおかげですね。

    BLというよりは、ジェンダーものとしてとらえたい良作です。

  • これは同志がどうしても袂を分かたなければならない、そんな物語だった。SIDE:Bに入った途端に頭の中から、いつもBLを読む時に抱く期待とか欲望とか吹っ飛んでた。そんなモノ必要なく読んでしまった…素晴らしい!!ある意味、BLのご都合主義・ハッピーエンド信仰を拭い去ってますよね、帯の「オトナが泣けるゲイ男子の青春」、正にそうだな、って。三島は最初から強い精神力を持っていて、彼の挫折と再生の物語でもないですし。ひと夏だけ繋がった友情のお話として完成している。正に「さらば、青春の光」と言う物語だった『スメルズライクグリーンスピリット』。読んだ後寝ながら、銀河鉄道999のあの最終回のナレーションが聴こえて来てしょうがなかった。一瞬光って、そのまま光り続ける事が出来ないから素晴らしく美しい…誰の心の中にもある一瞬の煌めき。私自身は、桐野のように愛する母の為に「普通」の道も行けなかったし、三島のように自分の心のままに動く事も出来なかったなー、と昔を思い出してしまった。柳田の性癖は仕方ないけども、大人の男と恋愛関係を結べていたら普通のゲイの男になれる可能性もないだろうか、と。三島くんが同情したのも、自分のセクシャリティーをひた隠しにしなければならん先生の闇が見えたからだろうし。三島くんはこう言う面でも強いから優しくなれる…三島くんに受け入れてもらえれば自分は救われると言うのはどう見ても柳田の身勝手な要求でしかないが、柳田先生以外の、同じ様な境遇になりそうな男の子たちの親は、皆イイ人と言うのではなくて、子供を個人として考えて、答えを押しつけるんじゃなくて子供に聴いて確認させている、と言う部分が段違いだった気がする。一番信じて貰いたいのはまず肉親であって欲しい、と誰もが思っている、それだけのことだったんだろうなぁ。再読してまた色々考えたいが、BLらしいハッピーエンドだったかと言うと、違うと思う。途中でBLどかどうでもよくなって読んでたのもそれが大きな要因になっている。三島は「女装」が好きな自分もゲイである自分も獲得して大人になったが、彼本来の性癖から求めるタイプは「毛深いガチムチ系」で、夢野ではなかっただろう。夢野も、三島に恋をしていながら、彼の自分と同じ性器を目にした途端に夢から一度は醒めている。桐野はオネェな自分を開放するよりも愛している母親の普通の幸せを選択し、本当の自分を解放しない道を選んだ。「夢に見る幸せ」=「桃源郷」へ、誰も辿り着いてない。何もかもが好転しハッピーエンドを迎えている訳ではないけれど一読してこの作品が素晴らしいと感じられたのは、ギャグと言うモノに「非日常」的に捉えてしまい、これが過剰なフィクションである、と言う風に思えない非過剰さで描かれた物語だったからじゃないか、と思った。幸せを演出する為の「過剰さ」が一切ない。過酷で被害者を被害者たらしめる執拗ないじめの描写でもなく…。そして、決して三島くんの挫折と再生の物語ではない、と言う所。三島くんの母親の存在感抜きに彼の強さは語れないが、総て母のお陰ではなく、三島くん自身が獲得した部分も大きく、同情や共感を呼ぶような作品ではなくて、「秘密の友達」と言う、誰の過去にも一度くらいはあったであろう、あの、甘酸っぱい、やっぱり「青春の光」の物語なんだろうな、と思った。Bの方も、表紙がフェイクになっていると思う。三島と手を繋いでいるのは夢野ではなくて桐野だよね?この表紙を見ても、これが単に男の子同士の恋愛モノであるBLではないのが解る。三島になりたかった桐野の姿だろうなぁ、と。
    BLと言うジャンルに入ってて全然構わないんだけど、通常BLで描かれる面とは違う角度から描いていて、改めて凄いなー、って思った。BLで読みたいものの別の扉が開いた感触!!

  • 正直、後半こんなに切なくなるとは思わなかった。
    悩みを抱えている人の悩みを完璧に"理解する"ことはできなくても、
    その人のことを"理解したい"と思う気持ちが相手に伝われば、きっとその人も少しは心が軽くなると思う。そのシーンで一番泣いた。

    しかし辛くとも、本当の自分を隠して生きていく桐乃は男らしいと思いました。

    番外編は少年時代の先生が見れますよ。

  • ■笑い涙なのか切ないのかわからない涙がぽろっとこぼれる、そんな作品。ボーイズラブ漫画として扱われてるけど、主題はそれじゃないですね。こちらに伝わってくるのは、
    「みんな自分が100%思うようには生きられなくて、そんな中でどこかに自分の身の置き場を作っていかなきゃいけない。ただ、それを他人に強いられた我慢や妥協だと思って生きていくのか、それとも自分の選択だと痛む胸を張って生きていくのか」。
    で、この作品はどんな道であれ自分の意志で選んだ道こそが正しいんだとエールを送ってる。
    ■以前に「中学生くらいの頃に思い描いてた仕事に就ける人の割合が●%」ってデータを見たことを思い出しました。彼らが抱えたほど顕著で残酷ではないんだけど、でも大なり小なり私たちも同じ痛みを経験したことがあるから、この作品がじわっと沁みてきます。
    正直、ゲイの人たちの悩みをリアルに再現してるわけではないだろうと思うし、作者にもそれをする意図はないと思う。むしろ、私たち女の読み手の実感と男の子への自由さの憧れ(だからこそ彼らは変化の最中にいる、中学生なんだろうね)との中間くらいに漂うくらいのリアリティになってるところが、絶妙なんだろうなー。
    ■母3人もいいキャラですね。夢野母の息子への接し方を見て、彼女のこれまでの生き方を推測して、ああ、だから夢野はハーフっていう設定なのか!とわかった。
    主役の3人もあぶない先生も魅力的だったんだけど、主役3人の母親に心情を寄せてしまう自分に愕然ともしたのでした…(笑)。

  • Aサイドからの続きです。
    前半の大志(ボブの子)が変態教師に攫われたところがホラーチックで怖かったです!!
    普通のBLの流れを期待していましたが、全く別物でした。
    田舎の高校生が自己の生き方や性自認、将来についての葛藤を本気で考えて結論を出したお話になっています。
    多くの人に読んでもらい感想を聞きたい1冊です。
    ***************************************
    友人に泣けたといわれて興味を持っておりました。
    やっぱり評価されるだけの事はある作品だなぁと思いました。
    それぞれの性格、感情が混ざっていて 、凄く読みごたえのあるお話でした。
    ちゃんと最後の結末まで書ききって頂けているので読了感もすっきりでした。<t>

  • この画力だからこそ伝わる恐怖とおぞましさと夢野の可愛さ

    ちゃんとBLなのに展開に新鮮味溢れすぎてBLじゃないみたいに感じたけれどちゃんとBLです
    トントン進んでいっちゃうように見えて、でもでも深いところもじっくりじわじわ追究されているので中身のある素敵なマンガだとおもいました

    おもしろかったーー!!!

  • レ…のシーンがちゃんと凄惨なシーンとわかる様に描かれていて、かつ直接的な描写じゃなくてよかった。読む上で辛さがなかった。 桐野との思い出はひと夏の出来事として箱にしまってとっておくようなエンドで、みんなそれぞれの道を歩むことにしているラストが、なんかブロークバックマウンテンとかスタンドバイミーを思い出した。もっと後味悪い話かと思っていたけど読了後は清々しい気持ちになった。青春。

  • カテゴライズ的にはBL漫画だが、ボーイズラブというより思春期の少年達の性に対する苦悩や葛藤、LGBTQについて、といった内容。BL漫画だからといって読む漫画でもないし、BL漫画だからといって読まないのも勿体無い。全ての人へオススメしたい作品。

  • 「SIDE:A」と「SIDE:B」で一つの物語。

    三島は柳田に車に連れ込まれ
    柳田の隠されてた本音を聞かされる
    自分を受け入れて欲しいと行動に出るが!
    危機一髪のところで桐野と夢野が助けに入る。
    この事で三島に対し自分の気持ちに気が付く夢野、
    同じゲイとして絆が強くなる桐野。
    しかし田舎町でいつの間にか3人の事が噂になり
    それが三島、桐野、夢野の母親の耳に入り日常が崩れていく。

    3者3様母親の対応。
    母親の受け止め方でその後の人生が変わって行く。
    ひと夏の友情と
    セクシャルマイノリティである苦しみと
    青春を描いた物語

  • 夢野が好き。

    核となる人物が三島・桐野の2人だけじゃなくて、夢野がいて3人ってとこがミソだと思うんだよな。なんなら柳田入れて4人。
    そして、それぞれの母親と父親の関係もキモな気がする、なんとなく。

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