- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894191068
感想・レビュー・書評
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良い意味でも悪い意味でも重いです。表現や考え方が普通じゃないので、芸術性に関心の無い人には分からないかもしれませんが、わたしは 何てひとだ…とおもいました。比喩的すぎるくらいの言語感覚がまた惹き付けるものがあります。
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初著者。別板で『星兎』が面白いと言ってたのを見て気になっていた人で、何故か職場にこれだけあったので借りてみました。
筋だけ言えば、小学生の主人公が、宝物の手作りの恐竜を公園の木のてっぺんにくくりつけたら、そのうち子供も大人も、客観的にみるとくだらないけど何かが詰まったものをぶらさげる空間になってしまい、市やマスコミに巻き込まれて大事になってしまう、ということなのですが。
かなり表現が独特で、美術系な人、かじった人には堪らないですが、そうでない人にはさっぱりなんじゃないでしょうか。
廃墟系が好きな人にも評価が高いようです。
その場にあって輝いていたもの、力を持っていたものが、場から引き離され美術館に収められたとたんつまらなくなっている場面や、現代アートとして売り込まれたものの空々しさなどを短い文章で切り取って読者に体感させる筆力はすごいと思います。
ブックデザイン / Yusuke Matsuoka
カバーフォトグラフ / Yoshihiko UEDA -
主人公の少年が木のてっぺんに怪獣のおもちゃを括り付けるところから始まる、幻想小説。
少年のイノセントな憧憬を丁寧に描写される。
それは消費社会=現実という巨大な壁に無残にも破壊されるという道程を辿ることによりある意味で輝く。
しかし、真の絶望は完膚なきまでの破壊ではなく、取り込まれていくことなのかもしれない。
どうしてもこの感想を書く時に私たちは少年のイノセントな憧憬を奪う写真家側の人間にならざるを得ないのだから。 -
再読。個人的にはこれが寮美千子の最高傑作だと今も思う。「名前をつける」という行為をここまで児童文学として昇華した例を私は他に知りません。
古来、日本でも諱(いみな)というものがあり、本当の名前は隠しておかないと呪われたりするから要注意だったし(※今でいう個人情報的な)、孫悟空だって名前を呼ばれて返事したばっかりに瓢箪の中に吸い込まれちゃうし、現代においても流行や現象、新種の病気でも昆虫でも、名前をつけられた瞬間にそれは「発見」され、可視化する傾向があるわけで。
うさんくさい「命名芸術家」の言うことも、必要なのは鏡だというカメラマンの言うことも、どれもムカツクけれど頷ける。少年カイだけが、透明な瞳ですべてを理解している。子供発信の奇妙な儀式が社会現象にまで広がるあたりは『ノーライフキング』に近い感触かも。 -
読み始めると面白かったけれども、導入するまでがきつかった。
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たぶんこの語り手は作者に近く、作者はいつも退廃の美を世界に探し出そうとしているのだろう、そのような視点が想像できる。
この作中で起きる現象はいろいろな社会現象の寓意にもとれる。
しかし単純に役に立たないものが漂流する木と、それへの名づけ、という観点から不気味な物語として把握したほうがおもしろそうだ。
世の理の変容と定着。 -
同作者の星兎を読んでから十余年、ふと他の作品も読みたくなり手に取ったのがノスタルギガンテスでした。
ああ、そうだった。こんな感覚があった、と思い出させてくれる本。
もっと幼い時に出会っていたら違う見方ができた気がすると思うと、惜しい。
博物館の琥珀の表現が大好きです。 -
大好きだった本。