遺産相続者たち: 学生と文化 (ブルデュー・ライブラリー)

  • 藤原書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894340596

作品紹介・あらすじ

ブルデューの原点。大学における形式的平等と実質的不平等の謎を科学的に解明する文化的再生産論の古典的名著。

感想・レビュー・書評

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  • 性差はもちろん、階級(親の職業)、地域(地方、都市部)により高等教育を受ける割合の偏差が出ることは日本社会にも当てはまる。この再生産の仕組みを60年代のフランスの統計調査をもとに読み解くという内容。
    教授は、大学で能動的にのみ得られる知の広がりや、大学の意図する教育に反しさえする知を評価することで、自律性を得ようとする態度において、学生を評価することと、学生のディレッタント傾向がお互いに尊重しあう態度において釣り合っているという指摘に代表される、果敢さが楽しい。

  • 最近、特に流行りっており、ありこちで見かける「文化資本」という概念(キーワード)を理解するためには必須の著作。
    読んでみるとわかるのだが、広く使われている「文化資本」という単語の語義は音楽や芸術といった経済・人的・人間関係などの資本に分類されない「文化」であれば何でも含まれるという形で"誤用"されている。

    確かに、経済資本などのカテゴリに分類されないものが入れられるのだが、別に芸術分野を始めとした文化的活動に限った話ではない。

    生まれ落ちた家庭の環境(例:クラシック音楽を好む、読書習慣がある)が子どもが学校で評価される際に役立ち、それは低階層家庭よりも高階層家庭で見られる環境であるため、学校は生徒を評価していると言うよりは子どもの背景を評価しているのだ・・・といったことなのだ。

    民俗学などで、地域特有の祭りに見られる行動を文化資本だ!と主張している著作もみられるが、それは正確ではない。正統文化や学校文化の中で評価される際に出身家庭の差が如実に現れるということなのである。

    しかも、この概念はヨーロッパでの研究に基づいたものであり、それをそのまま日本に適応させることには若干の疑問を持たざるをえない。

    原著(日本語訳だが)を読むことの重要性を思い返した1冊でした。

    ※レビューというよりは概念全般の話になってしまい申し訳ありません。

  • 買ったのは二年生の前期、自殺論の翻訳者である宮島先生の授業にて参考文献リストの内、タイトルがかっこいいので勢いのままに…だがそれからは軽く読んでぽいっ…だったので反省、いまさらまた読みなおしたわけなのです。
    苅谷さんの二冊の新書でも言っていたことだが、日本の教育における平等観は学級を最低単位にした「面の平等」を想定しており「均質な空間・時間を用意してそこで繰り広げられる教育・学習においても、等量・等質めざす」もの、つまり主に貧困などにみられる経済的要因による差別から解放された差別のないみんなが同じ条件で学べる空間としての”学校”という場所を考えたわけだが、差別への意識が「経済的要因」のみを考えてたから、本書の文化的要因はするりと盲点になって、その姿をみせずして影響力を誇ってたわけだ。とまぁ自分の今年のゼミ論の関連分野に関しては興味深く読んでたけど、2・3章は正直あんまり理解できてないという状況なのでまた再読候補に任命ということです。
     あと文化資本概念と関連させて、自分なりに興味をそそられたのはネットワークの量と質(紐帯の強度)について。そもそもこの概念は、階層レベル・家族レベルの影響を主として含んでいるけど、関係の個別性に関しては何も言っていない、というか意図していないじゃないかと勝手に想像汗。僕が気になったのは、日本が明治以降近代化してから、家族形態がものすごく変化した。それまでは三世代家族が普通だったが、都市に出ていく人々が増えたためにその時期から核家族が急に増えていった。文化資本の観点から家庭内において子供に文化を相続させることができる人々が4人から2人へと減ったわけだからなにかしらの変化があったりしなかったの?って思ったのです。祖父・祖母の存在の有無が文化資本伝達になんらかの影響が…って思ったのだがこの考え、的外れな気がすごく強い。その有無などどう把握すればよいのか、とか。だから気にしないでいただきたい。
     ちなみ着想を得たのは、ゼミ友の卒論テーマがソーシャル・ネットワーク関連で彼のテーマ&参考文献のグラノヴェターさんの「転職」という本の影響を受けたんだがなー。文化資本とネットワークの関係…いやそもそも文化資本概念自体ネットワークを含んだものだしな。

  • このタイトルに惹かれてついつい手にとって読んでしまった本。
    学校はその判断基準によって文化的な不平等を正当化させる機能を持っている、というのがこの本の趣旨です。
    趣味や習慣などの文化的な差は学校での成績の良し悪しにつながり、その成績が就職先の良し悪しにつながることにより経済格差をもたらす。そしてそのような趣味や習慣は家庭環境により育まれるためまるで遺産相続のように親から子へと受け継がれていくものであるが故に、ある程度永続的に続く性格をもっているのである。
    ブルデューに興味のある方、日本でも問題になりつつある経済格差に興味のある方、趣味や習慣が経済活動にどのように影響を与えているのか知りたいという方、オススメです!

  • ブルデューの原点(らしい)。例えば、肉体労働者でクラシック音楽を聴く者は少ないといったような文化的階級について書かれた本。

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著者プロフィール

(1930―2002)社会学者。アルジェ大学、社会科学高等研究院を経てコレージュ・ド・フランス教授。著書に『ディスタンクシオン』(藤原書店)など。

「2015年 『人民とはなにか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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