地中海〈6〉 (藤原セレクション)

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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894341364

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  • 帝国、社会と称された章を含んでいる。帝国という言葉をアナクロニズムを意識しながらも書かれているのは、地中海の東西に君臨したオスマン帝国とスペイン帝国。まずはこの二つの帝国のざっとしたプロフィールを描く。オスマン帝国については、戦争と宗教が混在し、好戦的な集団が多い小アジアから生き残り発展したことを奇跡と評している(p.18f)。また、地中海諸国がオスマン帝国に東方から圧力を受けて大西洋に目を向け進出したという見方を退けている。逆に、大西洋の彼方の新大陸の発見があったからこそ、地中海の重要性が相対的に下がり、オスマン帝国は容易に侵出したのだという見方をしている(p.26)。この二つの帝国については、1580年以降での同期が書かれている。スペインは地中海から大西洋へ目を向けるのと同じくして、オスマン帝国は地中海からアジアへ目を転じる。この16世紀末の20年間に、二つの帝国が同じリズムで動いていることが注目されている(p.45f)。

    こうした16世紀の帝国が近代の帝国と大きく異なるのは、その権力基盤が脆いことだ。この時代の国家は弱く、まだ地方都市のほうが力を持っている(p.65-68)。財政基盤においても「国民」に対して直接的な徴税権を持っていたわけではない。こうした背景で、17世紀初めに帝国は衰退し、中規模な国家が力を得る。18世紀に帝国は復活するが、その帝国はもはやスペインやオスマンではない(p.81f)。

    社会については、大公や貴族などの領主、商人などのブルジョワ階級、貧民層と強盗団(山賊)・奴隷という三つの層について語られている。国王に抵抗しバランスを取る貴族の姿が描かれ、またブルジョワ階級がそうした貴族に憧れる姿がある。ブルジョワ階級は金で爵位を買ったり、婚姻関係で貴族の身分を得たりする。かくして、16世紀にはブルジョア階級は自壊していくことになる(p.118-130)。山賊などの陸上の強盗行為についていえば、これは別に16世紀になって新しい事柄ではない。いつでもあったことに注意がなされる(p.147f)。富裕層と貧民層の間の断絶は16世紀を通じて拡大する。これは地中海特有の出来事なのか、それとも世界全体が17世紀の「驚くべき生気の後退」(p.167)に向かっていることなのか。その問いに答えを出さないまま本巻は閉じている。

    ここまで6巻読んで思ったことに、宗教改革の話がほとんど出てこない。16世紀の社会変動の話をしているのに、なぜほとんど出てこないのだろう。後の巻の目次を見ても大きく扱われている印象はない。北ヨーロッパでは宗教戦争という形で大きな社会改革の流れが起こるが、地中海は「ある種の魔法の呪縛にかかっている」(p.134)状態であって、単発的な社会改革の試みは多く起これど、それらがひとつの潮流を作ることはなかった。宗教改革の扱いが殆ど無いのは、こうした理由があるのか。

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