あら皮 〔欲望の哲学〕 (バルザック「人間喜劇」セレクション(全13巻・別巻二) 10)

  • 藤原書店
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本棚登録 : 74
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894341708

作品紹介・あらすじ

若きラファエル・ド・ヴァランタンは、死んだ父のわずかな遺産で放蕩三昧に明け暮れたが、その空しさに気づき、裕福なロシア人女性フェドラとの恋も破れて絶望におちいり、自殺まで考えるようになる。そのような時、たまたま入った骨董屋の主人から一枚の「あら皮」をもらいうける。それは、持ち主の願いをたちまちかなえてくれるが、同時に、願いがひとつ実現するたびに縮まっていく魔法の皮である。ラファエルは豊かになり、可憐なポーリーヌと束の間の幸福な生活をあじわうものの、あら皮は木の葉ぐらいの大きさに縮小してしまう。やがてラファエルは病気になり、温泉地に行って保養するが健康は回復せず、パリに戻ってくる。そしてポーリーヌへの激しい欲望に苛まれながら息絶える。

感想・レビュー・書評

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  • 『あら皮』1830-31年・・・哲学的研究

    ラファエル・ド・ヴァランタンという青年が自殺しようとセーヌ河岸を彷徨っていたが、身投げにはまだ日が高くそれまでの時間を潰すために一軒の古物商の店に入った。
    そこで、ラファエルは店主から一枚のあら皮を譲り受ける。
    そのあら皮を持っている者は、望みをすべて叶えることができるが、そのかわり、命が縮まっていくという。あら皮もそれにあわせて縮んでいき自分の余命をその皮によってみることができるらしい。
    半信半疑のまま、ラファエルはそのあら皮の所有者となる。
    あら皮を手にしてから、ラファエルの望みは次々と叶った。
    彼が自殺をしようと思い詰めたのは、フェドラというパリの社交界の華の公爵夫人にふられ、経済的にもいよいよ窮したためだったが、伯父の遺産が転がり込み、パリでも一、ニを争うような邸宅を建て、高額の年金までも月々受け取る身分になった。
    それは、金持ちになることをラファエルが望んだからなのか、あら皮は確実に縮んでいく。

    この不思議な護符に恐ろしさを感じるラファエルだったが、貧しい日々を送っていたときの下宿先の娘ポリーヌと再会する。
    ポリーヌとは心を通わせていたが、フェドラにいれあげてる時には純粋な貧しいこの娘との愛は深入りすることはなかった。ポリーヌも帰国した父が財産を築いていたため裕福な家の娘となり、かわらずラファエルを愛しているという。
    ポリーヌとラファエルは結ばれ、幸せの絶頂にいたが、あら皮は小さく小さく縮み、ラファエルも健康を害していった。
    あら皮をなんとか大きくしようと手を尽くしてみたが、あら皮は火の中に放りこんでもビクともしないのだった。
    医者を何人も呼び治療にあたったが、ラファエルの衰弱をとめることはできず、ついに死んでしまう。

    この類のストーリーは、現代ではそんなにも珍しいものではない。TVのショートストーリーでも似たような話を見た記憶があるし、ファンタジー系の本にも不思議なものを手に入れた主人公がさまざまなことに遭遇したりなど。
    しかし、それらは、バルザックのエピゴーネンにすぎないようにも感じ、この『あら皮』ほどの完成度を持つことはないだろう。

    『あら皮』は1830年から31年に書かれたものだが、爆発的に売れ、バルザックは一躍読書界の寵児となった。
    バルザックの生前だけで『あら皮』は15年の間に7たび版を重ね死後も世界中で版を重ねる小説となっている。
    訳のことがあるにしても、バルザックのくどすぎるともいえる描写は相変わらずで、決して読みやすい小説ではなくその難解さを超越して大衆に国内外で人気を得たのも『あら皮』のストーリーの斬新さと作品の完成度にあると思える。

    これまた人気作品となった『ペール・ゴリオ(ゴリオ爺さん)』は1834年に書かれているが、『ペール・ゴリオ』の主人公であるラスティニャックを早くも『あら皮』に登場させている。
    また、同じく『ペール・ゴリオ』ほかたくさんのバルザック作品に登場する医者のビアンションも出てくる。

    上にバルザックは難解と書いたが、難解ではなく、バルザックの丹念な状況描写、人物描写に精魂こめてつきあうのがちょっぴり疲れる部分もあるものの、だんだん慣れてくるとバルザック的読書術というものも取得していくものである。(笑)
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    ■小説89篇と総序を加えた90篇がバルザックの「人間喜劇」の著作とされる。
    ■分類
    ・風俗研究
    (私生活情景、地方生活情景、パリ生活情景、政治生活情景、軍隊生活情景、田園生活情景)
    ・哲学的研究
    ・分析的研究
    ■真白読了
    『ふくろう党』+『ゴリオ爺さん』+『谷間の百合』+『ウジェニー・グランデ』+『Z・マルカス』+『知られざる傑作』+『砂漠の灼熱』+『エル・ヴェルデュゴ』+『恐怖政治の一挿話』+『ことづて』+『柘榴屋敷』+『セザール・ビロトー』+『戦をやめたメルモット(神と和解したメルモス)』+『偽りの愛人』+『シャベール大佐』+『ソーの舞踏会』+『サラジーヌ』+『不老長寿の霊薬』+『追放者』+『あら皮』+『総序』 計21篇

  • 呪文の刻まれた「あら皮」に念じると願いが叶う。しかし寿命も削られていく。男は金を手にし、恋を叶え、、地位と名誉を手にするが...。
    「暗黒事件」のようなロマンティシズムを求めて読んだら、哲学的思索の続く作風であった。決してつまらなくはないのだが、中華料理を求めて入った店で、冷や麦を食わされたような印象。しかしながら哲学一辺倒ではなく、神秘主義的な妖しさも漂い、一筋縄ではいかないところは流石。

  • あら皮に遭遇する空間。
    Wunderkammerには世界が濃縮されていて、悪魔と契約したものしか知りえない、秘術すらもそこにおさめられているのである。
    もしくは、いままでいた世界とは違う、その別世界にあら皮という通行手形をもってはいりこんでしまったのかもしれない。そして2度ともとの世界へ帰るとなんてないのだ。すべての時間旅行と空間移動がそうであるように。
    あら皮を所持してからの彼の日々は、ヴンダーカンマーを飾る品々のように、魅惑的な引力とどこか妖しげな輝きに満ちている。


    ところで、
    「あら皮」っていうと、ついスルメみたいなのを考えちゃうんだよね~。
    じゅうじゅうエキスを吸い取ってるうちに、小さくなっちゃって、お・し・ま・い、と。

  • <閲覧スタッフより>
    約100篇もの小説に2000人を超える人物が登場する『人間喜劇(La Comédie humaine)』。何人もの登場人物が複数の物語間を縦横無尽に動き回る「人物再出法」と言う手法が特徴的です。『人間喜劇』は、バルザックの射程の広さを実感するオムニバス劇場です。
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    所在記号:953.6||ハオ||10
    資料番号:10128497
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  • 【09.3.25/図書館】
    今まで読んできたのと、雰囲気が違うな…と思ってたら、シリーズ内での分類も違うし、初期の作品ゆえにかキャラが固まってないっぽい。
    ラスティニャックに微妙な違和感が(笑)
    内容は、普段にも増して風刺色強し。
    全体としては、控えめ大人しめな印象を受けた。
    主役がいつも(?)に比べて印象薄いのかも…まぁ1つ前に読んでるのが娼婦の栄光と悲惨だからねー。
    そりゃ尚更ねー。

    挿絵が多かった。けど、使用された挿絵が、種類複数あって混乱した(笑)

  • 古いのはちょっと…というそこの貴方!
    これはただの古い臭い本ではありません←
    ファンタジーあり!人生で大事なものを教えてくれる哲学書なのです!
    賭博や金儲け…欲望溢れるパリの街で一人の人生に絶望した若貴族はとある怪しい商人に出会う…
    童話といってもとても残酷な童話。
    別にグロいシーンがあるわけじゃないのに読み終わった後に吐き気がしたというダークな作品です!

  • ラストがすき。解説のタナトス/エロスっていうのがまさにそう。寓意性、物語性からいって「あら皮」はこの時代の仏文学っぽくない。そのくせ安っぽくならず、読みやすい。

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著者プロフィール

オノレ・ド・バルザック
1799-1850年。フランスの小説家。『幻滅』、『ゴリオ爺さん』、『谷間の百合』ほか91篇から成る「人間喜劇」を執筆。ジャーナリストとしても活動した。

「2014年 『ジャーナリストの生理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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