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Amazon.co.jp ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784894343320
みんなの感想まとめ
家族の動態や社会指標を通じて、国の力を分析する視点が新鮮で、歴史的な流れを読み解く力を与えてくれます。著者は、アメリカの経済的脆弱性や依存関係を鋭く指摘し、他国との協調による多軸的な世界の形成の必然性...
感想・レビュー・書評
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エマニュエル・トッドは、家族の累計や、出生率、内婚率、乳児死亡率や識字率といったバロメーターを用いて国力の分析を行い、乳児死亡率増加からソ連の崩壊を予測したことで有名です。彼の著書を読むと、家族というミクロの動態から、世界のパワーバランスというマクロなトレンドを引き出していくというダイナミズムに引き込まれる思いがします。
アメリカが経済的に他の先進工業国に依存している状態を指摘し、帝国(スーパーパワー)としての力と普遍性を失いつつあることから、欧州、日本、中国、ロシアなどが協調し、多軸的世界を構築していくことになる歴史的必然の可能性を提示しています。本書が書かれたのは2002年なのですが、この後2008年にリーマン危機により、その金融依存の経済構造が露呈すると同時に、その影響が世界経済に甚大な影響をもたらしたことは、いみじくもトッドの指摘する経済依存関係を裏付けることとなりました。
一方、イスラム圏のテロは、識字率の向上と出産率の低下により表されている近代化の前進の過程に発生する暴力であり、いずれは沈静すると楽観的にみていますが、今日のイスラム国をはじめとするテロの地理的拡大をみるに、その見方に賛成するかどうかは時間を要すると覆います。また、ロシアの帝国としての普遍性をもつ性格や、経済的なポテンシャルが少し過大評価されている点についても、プーチンというカリスマ以降の状況を注視することが必要かと思いました。
アメリカが理念の普遍性によりさまざまな民族を統合し国力を拡大してきた一方、人種を分類することによる統治という差異主義との2項対立により成り立っていることも指摘していますが、トッドは、ロシア、中国、アラブ、パリ盆地、ローマなどが人間と諸国民を一般的に平等と把握する傾向があり、アングロサクソン(英国)は差異主義であるととらえています。フランスがその植民地においてヴェトナムやアルジェリア人のフランス人への同化(assimilation)を目標としていたのに対し、大英帝国は間接統治を行うのみで、インド、アフリカ、マレー人を英国人として同化させる意図を持たなかったことがその気質にあることを説明する部分には、フランスに住んだ経験からストンと納得できる面もありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の海外報道はアメリカ一辺倒だが、ヨーロッパでは若干趣が違う。
2008年のロシアとグルジアの紛争のときには、CNNをはじめとするアメリカの報道機関は、グルジアが先に手を出した事実をまったくといっていいほど報道しなかったが、イギリスのBBCは明確にそれを伝えていた。日本の報道はどうだったのだろう。主にアメリカ風ではなかったか。
(だからといってロシアが正しいというわけではない。グルジアはまんまとひっかかったのかもしれない。)
日本におけるアメリカの影響は圧倒的で、戦後、軍事的にも経済的にもアメリカなしではやっていけない状況でここまできた。本書でも、第二次世界大戦の敗戦国である日本とドイツが、アメリカの世界支配のための戦略的属国として扱われている。
ヨーロッパからはそう見えるらしい。事実そういうことなんだろう。
ある時期までのアメリカは、この2国の経済発展をテコに、共産圏諸国と対決しながら西側世界の再建と復興を導いてくれる自由主義世界のチャンピオン、良い帝国だった。
しかしベルリンの壁が崩れ、敵対するものがいなくなって以降、アメリカはおかしくなる。経済的にはもっぱら消費するばかりで、あらゆる国から巨大な負債を負うようになった。
イランやイラク、北朝鮮といった小国と敵対し、あちこちで軍事力を行使しているが、これは自分の強さを誇示するためにやっているだけで、その口実はこじつけもいいところ(北朝鮮の場合はそうとはいえないと思うけれども)。
どこでなにを始めるか予測がつかない国になってしまった。
じつは世界はアメリカをもう必要としなくなりつつあり、アメリカの軍事行動は、それに対するアピールなのである。世界はこれだけ悪人がいるので、自分たちの力が必要なのだという。
しかしアメリカの役割はもう終わったのではないか?
経済的に疲弊し、軍事的に凶暴化するアメリカをもてあましながら、世界はその後を模索している。その枠組みはおそらく、独仏を中心とするユーロ、ロシア、日本とそれぞれの連携ではないだろうか。世界の中心は、これらの国々が属するユーラシア大陸に移りつつある。
2002年、9.11テロ事件の1年後に発表され、世界中でベストセラーとなった本。
アメリカ中心の世界観を打ち砕き、なかなかすっきりした気持ちにさせてくれる。
著者はソ連の崩壊を早くから予言した人物としても有名。 -
対イラク戦争に際して、国連安保理におけるドイツ、フランス、そしてロシアがアメリカの参戦論に対して揃って反対票を投じたことは記憶に新しい。そして、残念なことに、わが国はいつものようにあわてて賛成の態度表明をしたことも。あらためてその存在感を示したシラク仏大統領だったが、彼の強硬とも言える姿勢を支えていたのが、エマニュエル・トッドの『帝国以後』における世界情勢の分析であったことをはじめて知った。
9.11のテロ事件以来、顕著になったアメリカの極度に単独主義的な対外軍事行動に対して多くの論者が批判を繰り返してきた。ノーム・チョムスキーに代表される反アメリカ的な論者に限らず、それらに共通する理解の基盤には「帝国」化する軍事的経済的超大国アメリカの姿がある。しかるに、トッドは言う。「世界を支配する力がないために、アメリカは世界が自律的に存在することを否定し、世界中の諸社会が多様であることを否定するのである」と。かつてこんなことを言った者がいただろうか。
帝国には二つの特徴がある。一つは軍事的な強制力、今ひとつは、普遍主義的平等主義である。ローマには二つともにあった。アメリカにはこの二つが欠落している。海空の圧倒的な軍事力に比べヴェトナム戦争を通じて明らかになったように陸地における米軍の戦闘能力は疑問視されている。タリバン制圧にはロシア軍の助力を仰がねばならなかったほどだ。また、普遍的平等主義については、テロ事件以来ますます雲行きが怪しくなってきているのは言うまでもない。
そうなのだ。逆説的に聞こえるが、アメリカは、強いから軍事行動に走るのではない。内外に不安要素を抱える国であるがために「小規模軍事行動」をちらつかせ、世界にとって自分が必要であることを誇示せねばならないほど「力のない国」なのである。その証拠にアメリカが相手にするのは、軍事的にも経済的にもたいして影響力を持たないイラクのような小国だけである。
9.11以来「イスラムの脅威」めいた言説が喧伝されるようになったことが、アメリカの「ならず者国家」制圧の論拠になっているが、それに対しても、トッドはイングランド革命やフランス革命の大虐殺を引きながら「メディアが倦まず弛まず描き出して見せる危機や虐殺は大抵の場合、単なる退行的現象ではなく、近代化の過程に関連する過渡的な変調なのである」と、論じている。
イスラム諸国やその他の紛争地域における不安定要素が退行現象ではなく近代化への過程であることを立証するために、トッドは二つのパラメーターを提示してみせる。それは識字率の上昇と受胎調節の普及を示す数値である。それによると、アフリカ諸国を除く多くのイスラム諸国の間で、かつては低かった識字率の飛躍的な上昇が見られ、それと連動するようにして出生率の低下が見られるという。識字率の全般的な上昇は女性の意識が高まり、受胎が調節されるようになったことを意味している。近視眼的な見方をやめ、冷静な目で世界を見ると、遅れはしたもののイスラム世界もまた近代化されつつあるのだ。
トッドによれば、アメリカの弱さを示すものは貿易収支の赤字である。現在のアメリカはかつてのような工業生産国ではなく消費者として世界の需要を支えている。アメリカ経済を支えているのは資本の流入だが、統一ヨーロッパによるユーロの出現はこれまでのようにアメリカへの資本の集中をゆるさなくなってきている。皮肉なことだが、「世界が民主主義を発見し、政治的にはアメリカなしでやっていくすべを学びつつある時、アメリカの方はその民主主義的性格を失おうとしており、己が経済的に世界なしでやって行けないことを発見しつつある」のだ。
トッドは、アメリカがかつてのような寛大な民主主義国家に戻ることはあり得ないにしても、「帝国」ではなく、一国民国家として多様な民主主義国家の一員となることを求めている。アメリカにその立場を受け入れさせることができるのは独仏を中心とする統一ヨーロッパ、それに近接するロシア、日本であるというのが、トッドの見解である。日本の潜在的な軍事力を計算に入れ、安保常任理事国入りまで提案している。
唯一の被爆経験を持つ平和主義国家としての日本の位置は、客観的に見れば、そういう立場にあるのかも知れないが、当の日本は相も変わらず対米追従路線に終始し、イラクに自衛隊を送るための法案を検討しているのが現状だ。最近の日本人は本を読まなくなったと言われるが、首相はもうこの本を読んだだろうか。もし、まだなら、ぜひ一読をおすすめしたい。そして、世界における自国の現実的な位置というものを発見し、アメリカにだけ目を向けるのでなく広く世界を見て、外交努力をしてほしいものだなどと、柄にもなく思ってしまったのである。 -
21世紀に入ってからすでに20年以上経過したのだとしみじみ。日本についても、その他の地域についても、普段自分が抱いていた「印象」はメディアの操作によるもので、やはりこういう違う視点を与えてくれる著作を読むのは大事だと思った。
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―2003年4月―
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米国は実は脆弱で世界に依存しているという逆説的な書。米国は影響力を行使するために世界が混沌であることを望んでいるのだ。米国は軍事力•経済力(消費大国)も帝国となるには不足し、理念上の普遍主義もない。(黒人との混淆婚率や乳児死亡率)欧日露は地政学的戦略を踏まえない米国から独立し、新しい国際社会を形成していく。米国は普通の強国足らざるを得ないのだ。いずれにせよ世界に影響を与えたトッドの名著。米国は帝国になり得ないという予測は秀逸だったが、結果を見れば中国の覇権主義それ自体は予測できなかった。アジアの存在感を無視して欧米日で議論を進めたのはやや拙速。
黒人差別がアメリカの国体であるとトッドは言っているが、低混淆婚率が客観的な裏付け資料であることはもっと言ってもいい。 2021/6/25 -
アメリカはモノの取引や政治における役割はほとんど無い。あるのは金融資本主義に依拠する取引の役割だけだ。
久しぶりに骨のある本を通読できた達成感が大きい。この手の本をたまには読んで、難解な論理を頭で整理する訓練が必要だと感じた。また数年後に挑戦したい。 -
人口学者エマニュエル・トッドのアメリカ批判本。
人口データからソ連崩壊を予言したとして有名。
今回はアメリカの挙動について観察した上で得意の人口データを持ち出す。
識字率が向上すると女性が社会的になり、出生率が減るという。
その辺をまとめるとアメリカは帝国ぶっているが大したことない、ロシア、ヨーロッパも勝ち切れず、勝者なき世界になるという。
とにかくアメリカが嫌いらしく、軍事力は大したことないだの、イデオロギーも筋が通ってないだのボロクソである。
イスラムはアメリカが標的にした弱いものイジメの相手方。
ヨーロッパは強いがそれに自覚してない。
意外にも日本への評価は高い。
中国にはほとんど言及していない。
2002年頃といえばこの程度の予想かなあという印象。
世界情勢を大局的に掴むのには良いが、大雑把過ぎて偏ってもいる。 -
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090911/204592/日経ビジネスオンライン2009年9月24日の記事で、トッドの人口研究が引用されている。
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2016/11/28:読了
アメリカにとって世界は不可欠だが、世界にとってアメリカは不可欠でなく、むしろ不必要になっている。
アメリカは普遍主義を保ち続けるのは、もう無理なのだから、無理に帝国にならず、普通の国になって生き残るしかないという本。
トランプの政治は、そういうものになるのだろうな。 -
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この本が日本で発表されてから12年も経つので、世界情勢について、この本が出た当時とはだいぶ違うものになっているかもしれないけど、世界が大国としてのアメリカを必要としていない。という視点が読んでいて好きだった。
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外れたことも多いが、家族関係による国家感は鋭い。今でも通用する内容が豊富だ。日本語訳が今ひとつなのが残念。
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読み切れなかった。
ウクライナ問題に一章割いている。 -
は
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10年以上前に出版された本なので、内容が古く 当然オバマがフォローされていない。
でも、この人とんでもなく頭いい。
自分が思っていてもうまく表現できていなかったことがら、何となく感じていたことを、的確にえぐりだしてくれた、というのが正直なところ。 -
9.11の1年後、10年前に書かれた本である。
10年後に読んでみたわけだが、おっそろしいくらいそのとおり?
この著者は人口学者で、人類学者であり、その有機的視点から経済学を論じておられるのだけど、面白いほどフィットする。
そもそも、識字化率が高まれば勝手に民主主義になり、その始まりには内乱がつきものなだったのね。(移行期の危機)
説明されてみれば、たしかに先進国と言われている国もそうだったわけで…。
そして、女性の識字率が高くなると受胎調節が始まる。
世界はほっといても落ち着くところに落ち着く。
なのに?あれからのアメリカの態度は何?というところの説明が腑に落ちまくり。
ヨーロッパ人の世界の見方というのがとても面白い。
そして、日本って、やっぱなかなか特殊な存在なのねぇ。
実は、もんのすごい面白い立ち位置にいるんじゃないの!?って感じで、ニュースの見方が変わりそう。
…という気分になるのだけど、具体的にどこをどう見れば何を読めるのかイマイチ把握しきれない自分のオツムの回転の鈍さを笑うしかない。(^^;) -
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九月一一日事件は実はイスラム主義の熱が後退する局面で起こった。識字化と受胎調節の発達とは、こうしたイデオロギー的情勢をその深層において追跡し、説明するための手段となる。このような分析に従うなら、アメリカ合衆国と、この地域でアメリカに追随するその同盟国とは、これからいよいよサウジアラビアとパキスタンで厄介なことに出会うだろうと断定することがおそらく可能になる。この両国は近代性への突入と、大抵はそれに伴って起こる痙攣とを始めつつあるからである。73
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もし旧世界が平和へと向かい、アメリカ合衆国を必要としなくなり、逆にアメリカ合衆国が経済的に略奪的・脅威的な存在となったら、ロシアの役割もまた逆転する。自由主義的にして民主主義的なロシアが、今度はその全世界的な帝国的姿勢をさらに強固にしようとするアメリカに対して世界を護るという想像は、先験的にはいささかも禁じられてはいない。91
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乳児死亡率というのは、社会ないしは社会内の個別的一セクターの中でも最も弱い個人の現実の状況を明らかにするものであるがゆえに、決定的な指標なのである。十九七〇年から十九七四年までの間のロシアの乳幼児死亡率のわずかな増加によって私は、すでに十九七六年にソ連邦の国内状況が悪化していることを理解することができ、ソ連体制の崩壊を予言したのである。アメリカ合衆国における黒人の乳児死亡率のわずかな増加は、半世紀にわたる努力の末に人種統合が失敗したことを、確証しているのである。158
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NATOの協議機関のレベルに、さらには決定機関のレベルにロシアを組み込むということは、ヨーロッパにとって徐々に現実的にを心を引かれる課題となって来る。(…)アメリカ軍によって湾岸一帯に不安と動揺が産み出され、ヨーロッパと日本にとってのエネルギー資源を統制しようとするアメリカの意思が明瞭になると、この二つの保護領はますます、世界第二の石油生産国の地位を回復し、天然ガスでは常に世界一の生産国であり続けているロシアを、必要なパートナーと考える方向に進まざるを得なくなって行く。269
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アメリカという大国が抱える危機と幻想を描き暴いた著書。己の生産力では賄えぬ大消費大国となってしまったアメリカは、未来では軍事標榜国として生き残るしかない、というアメリカ「帝国」論。理知的過ぎて恐ろしいです。
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