- Amazon.co.jp ・本 (628ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894344099
感想・レビュー・書評
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読了した自分をホメてあげたい。部厚がその「障害」であったワケではない(その理由は他のヒトの評にも散見されるもの)。殺人の動機に関わる部分(というか関わるさま)にエーコ『薔薇の名前』が連想された。語り手(語り口)がめまぐるしく代わって魅力ある物語世界(世界観)の拡がりやその多彩が想像されるのでその、そのうち新訳版で再読したい。
同著者の旧訳『雪』も読了まで難儀したが、訳者の異なる『白い城』では稀有の豊潤な物語を堪能(耽溺)できた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オルハン・パムクは恋愛小説家だと思って読んでいる。
繰り返されるテーゼ、寓話の登場人物に投影される男女、静かに確信の周辺について語られていき、二人の距離が詰まらない。じれじれして、最終章の埃っぽい薄暗い部屋、荒い記事のカーテン、インク壺とペンが最高のご褒美でした。 -
16世紀末のイスタンブルを舞台にしたミステリー。オスマン帝国を舞台にしたミステリー、というのがあまり無いように思えたので、新鮮に感じた。
ただ容疑者の三人の細密画師が書き分けられてなかったように思われた。 -
読みにくいっていう人も見かけるけど翻訳した人すごく文章上手だと思うなあ。
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毎日こつこつ読んで、やっと読了。おもしろいんだけど、長かった。物語の世界や語り方に慣れるまでに少々時間がかかる。そしてもう少し、トルコの歴史の知識が必要だったかも。最後まで、犯人探しには引きつけられるが、ストーリーとはほとんど関係のない、「わたしの名は”死”」とか「わたしは悪魔」などの章が特におもしろいと思った。イスタンブールへ行きたくなりました。
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斜陽にさしかかったオスマン帝国を舞台にした作品。
トルコ旅行前に読もうとしたけど読み終わらず、でもイスタンブールの地図を眺めていたおかげで作中の土地や位置関係が理解できて更に楽しめた。
その物語の手法や、主人公たち細密画師たちの思考や生活そして知識など、どれだけの調査や構想をしたのかというくらい重厚。
歴史小説、中世恋物語、殺人ミステリーなどなど、内容の要素は盛りだくさんで、それら全部を通して細密画師という「生物」の生態(生き方?)を見た、という感じがした。
読み終わった後は仔細に細密画を鑑賞したくなる。
ただ、原文がそうなのか翻訳のせいなのか、文章がとっつきにくくて慣れるまでくじけそうになる。 -
著者本人の文章力もさることながら、訳者の力量もはんぱねぇわけで。
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緻密。鮮やかな文体。
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舞台は16世紀末、オスマン帝国の首都イスタンブール。
スルタン(皇帝)に使える細密画師たちが、翌年にひかえたイスラム暦1000年の記念事業として祝賀本の作成を命じられる。
その頃、西洋の遠近法を駆使した写実的な絵画を知った細密画師たちが衝撃を受け、自分たちでも描こうとする誘惑に駆られるが、写実的な絵画はイスラム教のタブーであり、それを巡って殺人事件が起きる。
犯人は誰か?
何故タブーなのか?
主人公の愛の行方は?
登場人物一人一人が一人称で読者に語りかけるという手法を用いていて斬新です。
イスラム社会や、その中で生きるユダヤ人の描写も面白いです^^
また舞台こそイスタンブールでの数日間に過ぎませんが、細密画師たちの背景の説明は中国・蒙古・インド・ペルシャ・ヴェニツィアにまでまたがっています。
ペルシャの『王書』や、『ヒュスレヴとシリン』の物語など、イスラム世界の文化に造詣が深ければ、もっと楽しめたでしょうね。
それにしても、主人公カラは現代の女性、特にシングルマザーにとっては理想的な王子様でしょうが、それでもヒロインにとっては問題大アリとはねw
2006年度のノーベル文学賞受賞者、オルハン・パムクの作品で、現代のイスラム原理主義と西欧化との衝突にも通じる問題を提示しています。
ニン、トン♪