戦後占領期短篇小説コレクション 3 1948年 (3)

制作 : 紅野 謙介  川崎 賢子  寺田 博 
  • 藤原書店
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894345874

作品紹介・あらすじ

"戦後文学"を問い直す、画期的シリーズ。本書にとりあげた1948年の作品群は、戦争とGHQ占領の意味を問いつつも、いずれもどこかに時代に押し流されずに自立したところがある。

感想・レビュー・書評

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  • なるほど、こんな方法があったんだ、と私を唸らせた斬新なアンソロジーです。

    1945年の敗戦から1952年の講和条約までのアメリカ軍占領期に、やっと自由になったと思ったのも束の間、戦争中の軍の検閲に替わって今度はGHQによって新たな厳しい制約の中で、作家たちはどう苦闘したのか。何を見つめ、何をどう探求したのか。

    こういう視点で書かれた評論は以前にも読んだ記憶がありますが、それは一人の超有名な作家の中でどうだったか、というものばかりで、これほどクロニクルなものは読んだ覚えがありません。

    今や日本文学全集などというものが誰も手をつけない図書館の隅にほこりをかぶって眠っているだけの存在でしかないものに成り果ててしまっている現代に、問題定義としてももちろんですが、新刊の中に1940年50年代の小説が入っていて、今の私たちが手にとって読むことが出来るという貴重な企画です。

    この巻のラインアップは・・・・・・・
       原民喜・・・・・・壊滅の序曲
       藤枝静男・・・・・イベリット眼
       太田良博・・・・・・黒ダイヤ
       中村真一郎・・・・・雪
       上林暁・・・・・・・禁酒宣言
       中里恒子・・・・・・蝶蝶
       竹之内静雄・・・・・ロッダム号の船長
       三島由紀夫・・・・・親切な機械
                     の8編です。

    恥ずかしながら、この中で読んだことがあるのは、18歳~19歳にかけて全集を読破したことがある三島由紀夫の作品だけで、他の作家は読んだことがあるけれどここに上げられている作品は未読のものばかりです。そして、未知の作家が二人います。太田良博と竹之内静雄です。

    こういう企画は、おそらくそれほど売れないということで、いわゆる大出版社では夢想されもしないでしょうが、さすが藤原書店。まだ創業たしか17年ほどの出版社ですが、社会学系の書籍をはじめ数々の重要な書籍を出版していて、貧相な私の本棚にも、石牟礼道子全集やコレクション鶴見和子曼荼羅が鎮座まします。他にもデリダやイリイチの著作でもお世話になっているはずです。

    さて、こういう企画を企図した方々はどなたかというと、不親切にも無欲にも何のコメントもありません。ただお三方の名前が並べられているだけですが、たぶんほとんどの人がご存知ないと思われます。幸か不幸か、たまたま私は偶然にも知っていて、その履歴もすぐ思い浮かべることが出来ましたが。

    寺田博氏は、今をときめく超有名な編集者で「文藝」や「海燕」でブイブイ作家たちを鍛え上げた伝説の人で、彼のことは、私がかつて溺愛した中上健次絡みで知っていました。
    紅野謙介氏は「女子高生のための文章図鑑」(1992)の共著者の一人として知り、そのユニークな活動ぶりに注目してその後いろんな著作や雑誌論文を追っかけ、99年からはHPを愛読させていただいています。
    川崎賢子さんは、私が10年程前位からサントリー学芸賞受賞作品を全部読もうと思い立ってから出合った方です。95年に「彼等の昭和」という、あの丹下左膳を生んだ林不忘こと長谷川海太郎をはじめとする長谷川四兄弟を描いて昭和初期のモダニズムの魅力を教えてもらいました。川本三郎や海野弘とはまた違った視点であの頃への思いが深まる気がしました。

    今の時代に読まれるべき大切な本なので、あまり欠点を論うのは差し控えたいとは思いますが、このような編集者の紹介と同時に、選ばれた作品の作者についても、もう少し詳細なコメントがあったらいいな、と思いました。

    それと、いま巻末の解題を読んでいて気がつきました。知らないし読んだこともないと言った竹之内静雄の「ロッダム号の船長」は、なんと学藝書林の「全集・現代文学の発見」シリーズの別巻「孤独のたたかい」(1969)に収録されていると書かかれています。実物を出してきて確かめてみると、もちろんちゃんとありました。このシリーズは高校三年生の夏休みに読んだのを覚えていますから、確かにこの作品も読んだはずですが、すっかり忘れていました。

    たぶん図書館にも入ると思いますので、ぜひ読んでみて下さい。たまにはこういう本も新鮮で刺激的で面白いはずです。

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