戦後占領期短篇小説コレクション (1)

  • 藤原書店 (2007年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (312ページ) / ISBN・EAN: 9784894345911

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  • 戦後占領期をテーマに集めた短編集。
    一年区切りで一冊ずつ。
    一巻だけは45年と46年発表のものから。

    田舎の日常が見える平林・永井・井伏、文学な石川・川端・豊島、破れかぶれな豪放の小田・坂口、兵士の田村・八木。
    いかにもその時なもの、猥雑な空気が感じられるもの、格調高く文学に昇華しているもの、いろいろだけどなんとなく時代の空気がある。

    まがりなりにも戦後に発表されたものだから占領下で検閲されたりしつつも開放的な雰囲気がある。
    そういうくくりで集められたものをそういう目で読んでいるからってのが大きいんだろうけど。
    読んだことのない人のものが結構あってたのしい。


    平林たい子の「けっ」って感じがいい。
    こういう人でも戦時を生き抜けたんだと思うと勇気づけられる。
    永井の空襲時の大騒ぎ描写だとか、坂口のスリルに依存する具合だとか、ああいうのは当事者じゃなきゃ書けない(書いちゃいけない)ものだなあと思う。
    いわば年寄りの寿命ネタみたいなもんで。
    この時に大人だった経験者がこの時に書いたものだから、大変なことを笑い飛ばすものになる。
    同じものを今の人が書いたら礼賛だのドリームだのになってしまう。

    戦地から帰ってきたら妻子が死んでいた八木の自伝的な短編は不愉快だった。
    このDV思考はナチュラルに出てきたものなのか優れた観察眼による完璧なトレースなのか。
    作者の来歴と重なるだけに判断がつかない。
    いずれにせよ不快だから最後に置かれた作品がこれで残念だ。
    不快なだけじゃなくて兵士を語る観察眼が鋭くて一心に読んでしまえるのが悔しい。
    嫌なだけなら切り捨てられるのに。
    解説でちょっと浄化されたけど後味が悪い。

    解説は紅野謙介による作品紹介と、小沢信男によるもうちょっと中身に踏み込んだもの。
    小沢の語り口がちょっと嫌だったんだけど、そこをこらえて読んでみたらすごく面白い。
    この人についても知りたくなった。

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著者プロフィール

1956年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程中退。日本大学文理学部特任教授。専攻は日本近代文学。著書に『書物の近代』(ちくま学芸文庫、1999)、『投機としての文学』(新曜社、2003)、『検閲と文学』(河出ブックス、2009)、『物語岩波書店百年史1 「教養」の誕生』(岩波書店、2013)、『国語教育の危機 大学入学共通テストと新学習指導要領』(ちくま新書、2018)、『国語教育 混迷する改革』(ちくま新書、2020)など。

「2022年 『職業としての大学人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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