文明の接近 〔「イスラームvs西洋」の虚構〕

  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894346109

感想・レビュー・書評

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  • 識字率(女性)、出生調整、革命。

    ドゴール主義が、イラン。二流強国のイデオロギー。
    イランが、核兵器を所有した方が、世界秩序は安定する。

  • 識字率が50%を超えて、出世率の減少がはじまる。この移行期に革命が起こることがある。
    イスラーム社会も出生率が減少し、近代化しつつある。

  • 「アラブ革命はなぜ起こったか」のそもそものきっかけとなった本。

    女性の識字率・出生率と社会の近代化の相関関係をダイナミックに説くのがトッド理論だが、実際の数値を用いてアラブ・アフリカ諸国の分析を試みたもの。

    この本が出版されたのが2007年で、チュニジアやエジプトで「アラブの春」が起こったのが2010年。
    乳幼児死亡率の高さからソビエト連邦の崩壊を予見したのに引き続きトッドの予想が的中したとして、ますますその名声を高めることになったようだ。

    実を言うと、理論の部分は「アラブ革命はなぜ起こったか」で大まかにつかめるので、専門家ではない興味本位の読者にとっては、本書の詳細な分析は煩雑な感じ(著者が悪いわけではないが)。
    ただ、核保有国であるパキスタンの動向についての懸念は、著者が著者だけに気になるところである。

  • 「イスラーム vs 西洋」 の虚構と副題され、人口学を基盤に常識を覆す、刺激的な本です。
    識字化と出生率の低下から、イスラームは現在その移行期危機の中にあり、テロリズムや暴力は単にその現れであって、問題の解決は、イスラーム圏の核心部分に攻撃を仕掛けることの中にみいだされない。文明の衝突」や、9.11ではなく、イラクにアメリカの軍隊がいて、イスラーム諸国が攻撃されている現実を指摘する。
    イスラーム諸国とキリスト教系の諸国との間に存在する差異は、本質的な、本性上の違いではなく、時間的ずれに由来する差異であることを示そうと努めています。イスラームをめぐる脅迫観念の一部は、イスラームそれ自体とは何の関係もなく、むしろ西洋そのものの危機と関係がある。

  • なんども同じような話なのでちょっとくどいけど、面白かった!人口ロマンを感じた。小数点以下は重要である。


    ハンティントンの文明の衝突(文化圏の境目の強調)を社会神学者として批判し、重要な変数は文化の差なんかではなく、女性の識字率の上昇および出生率の低下、そしてそれに先立つ宗教的危機(信仰心の低下)と言い切る。あと家族構造の形態という人類学っぽい視点もはいっている。

    他に面白いところとしてマイノリティの普遍則としてその力を見せつけようとするために出生率が上がるという話などがある。納得。宗教では再生産のために出生を推奨するように経典が組まれているはずがキリスト教、イスラム教ではそうとも言い切れず、宗教らしく合理性だけでは考えられない話が宗教人口の減少に貢献しているようだ。


    社会の分析はいろんな要素をとりあえず詰め込んで、結局よくわかんないや、となってしまうものも多い中で人口という視点でみると色々とスッキリするなー。シンプルでとても好きだ。

    しかしイスラエル原理主義が理工系学生と親和性が高いという話はフランスに来てから何度か聞いたがこちらでは常識か?

    政治をちゃんと勉強せずにテクノロジーをもって世界を動かせてしまうところが原理主義に走る原因となっている気がする。テクノロジーオプティミスト。でも技術者ってそうじゃないとできないかもなとも思いつつ。

    彼はユダヤ系らしいのにイスラム擁護に回っているように見えるところが学者の心意気(自分の所属集団を優遇せず相対化する)という感じが誠実な感じがして好きだ。

  • 「文明の衝突」を書いたサミュエルハンチントンの国(米国)が他社を敵とみなして反イスラーム主義を展開している。

    しかし、イスラーム世界で識字率が上昇しており、このままいけば2030年には人類は決定的な転換点を迎えるはず。識字率が100%近くに迫り、女性が読み書きできるようになり、教育水準が上昇すると、出生率が低下する。これがイスラーム世界の経済的発展や民主化に顕著に表れている。テロなど、伝統的システムと決別するための政治的危機を経験するが、これは過渡期の危機であって、フランス革命、ロシア革命、文化大革命のように、その後平静をとりもどす。

    識字率が鍵となって、イスラームvs西洋は接近するという未来予測。原文は2007年の著書であることを考えると、2011年のアラブの春を予言した書ともいわれている。

  • トッドの本をきちんと読んだのは初めてだ。テーマが大き過ぎるので、ここでの理論を立証しようとするには、少し苦しいと思う。もちろんそれは、出生率、識字率、婚姻構造などを多くの国、地域に渡って収集、比較して「近代」社会への移行の一般的な理論モデルを証明しようという試みが大それたことなのだろう。しかし、読み終えた段階では、著者の主張はおおむね納得できる。しょせん、世界の様々な国、地域の社会変動を統一的に説明できる理論と具体的データなど存在し得ないのだ。
    トッドの指摘で新鮮だったのは、イランや日本が核兵器を所有した方が良いという意見だ(最後のインタビューの中の発言)。いずれにしても、イスラム圏やその周辺の国々のことをもっと学ばねば、と痛感させられた次第である。

  • イスラーム世界のイメージ、凶暴で多産(=文明が低い)を人口学的に反論するもの。
    一般的にある国の
    男性、女性の識字率が50%を超える
    出産率が低下する
    と、「移行期危機」という凶暴な時期を迎えるというもの。移行期危機とは内戦や内乱、革命や侵略など。
    今はイスラーム世界はこの移行期危機のためにいろいろな問題があるとしている。
    面白かった。
    ヨーロッパとイスラーム圏との比較なのでしょうがないが、日本や中国のことももう少し触れてくれるとうれしいかな。

  • イスラムを考える。

  • 識字率と 出生率 で 読み解く世界旧ソ連邦から 分離した諸国ではコンドームの品質が悪く 堕胎が無料なので堕胎がおおい、、これは 岡本ゴムさん ビジネスちゃーんす と思いましたいや 本の内容には 関係ないけど。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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