「場所」の詩学―環境文学とは何か

制作 : 生田 省悟  村上 清敏  結城 正美 
  • 藤原書店
3.50
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 9
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894346192

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自己を定義するためには自らがどこにいるのか、その場所を知ることが重要であるという、ゲーリー・スナイダー氏の主張に感銘を受けた。

    自然や環境について考えるときに、それを自分自身や人間の存在を除外して外部から捉えるという方法を取るのではなく、自分自身がその中で生きている(生かされている)場として捉えるということは、重要なのではないかと思う。そして、その第一歩として、「土地との関係の中で自らを定義する」こと、そのために「自らのいる場所を知る」ことが大切になってくる。

    場所を知るとは、人間によって定義・整理された地理的な空間(地名や、「住宅地」といった属性)を把握することではもちろんなく、自らを生かしている自然がどのようなつながりの中にあるのかを把握するといったことだと感じた。これは都会の中にあっても、むしろ都会の中である方が大切なのではないか。例えば、水道の蛇口から出てくる水がどこから来ているのか、それを水源にまで思いをはせて考えてみる。または、自らが捨てたゴミや廃棄物はどこに運ばれていくのか、下水はどこに行くのか。

    また、生物との関係性という観点からは、「原植生」を知ることが非常に大切であるとスナイダー氏は言う。これは、人間に影響される前にその場所がどのような生態系を持っていたのか、言いかえれば自然はもともと何をやりたがっていたのかを知ることである。これを知ることは、その中に人間が入って生活するに当たって、大切な土台となる知識ではないかと感じた。

    水系や生態系といった視点で場所を捉え、その中に自らの位置を確認することは、現代の都市生活者においても得るものの大きい重要なことであると思う。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

1933年、全羅北道群山(クンサン)生まれ。1958年、『現代文学』誌の推薦で文壇デビュー。1984年、高銀詩全集刊行。1987〜1994年、叙事詩『白頭山』刊行。万海文学賞、大山文学賞、中央文化大賞など受賞。邦訳に「詩人における四・一九革命」(『第三世界の民衆と文学・・韓国文学の思想』所収、金学鉉編訳、社会評論社、1981)『華厳経』(三枝壽勝 訳、御茶の水書房、1995)『朝鮮統一への想い』(神戸学生青年センター出版部、2001)「アジアの自然と文学 東アジアにおける自然と文学を考える」(山里勝己・高田賢一ほか編『自然と文学のダイアローグ 都市・田園・野生 国際シンポジウム沖縄2003』所収、彩流社、2004)『「アジア」の渚で 日韓詩人の対話』(対談・評論収録。吉増剛造との共著、藤原書店、2005)『高銀詩選集 いま、君に詩が来たのか』(金応教編、青柳優子・金応教・佐川亜紀訳、藤原書店、2007)などがある。

「2007年 『韓国三人詩選 金洙暎・金春洙・高銀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高銀の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×