世界の多様性 家族構造と近代性

  • 藤原書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894346482

作品紹介・あらすじ

家族構成の分析を通して、世界像と歴史観を一変させる革命的著作。

感想・レビュー・書評

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  • 「第三次世界大戦は始まっている」(2022.6)で家族類型からくる政治体制、という著者の考えを知り、手に取ってみた。類型をメモ。

    メモ
    7つの家族類型
    ①共同体型:外婚制共同体家族
     ・相続上の規則によって兄弟間の平等が定義されている。・結婚している息子たちと両親の同居 ・しかしふたりの兄弟の子供同士の結婚はない
     ○ロシア、ユーゴスラヴィア、スロバキア、ブルガリア、ハンガリー、フィンランド、アルバニア、イタリア中部、中国、ベトナム、インド北部
     ・・この型のところで共産主義国家ができた。

    ②権威主義型
     ・相続上の規則によって兄弟間の不平等が定義されている。財産の全てを子供たちのうちの一人に相続。 ・結婚し相続する子供と両親の同居。 ・ふたりの兄弟の子供同士の結婚は僅少、もしくは無。
     ○ドイツ、オーストリア、スウェーデン、ノルウェー、ベルギー、ボヘミア、スコットランド、アイルランド、フランスの周辺地域、スペイン北部、ポルトガル北部、日本、韓国・朝鮮、ユダヤ、ジプシー

    ③二つの個人主義
     「平等主義核家族」・相続上の規則によって兄弟間の不平等が定義されている。・結婚した子供たちと両親の同居は無し。 ・ふたりの兄弟の子供同士の結婚は無し。
      ○フランス北部、イタリアの北部と南部、スペインの中部と南部、ポルトガル中部、ギリシャ、ルーマニア、ポーランド、ラテンアメリカ、エチオピア

     「絶対核家族」・明確な相続上の規則がない。遺言による相続が多い。・結婚した子供たちと両親の同居は無し。・ふたりの兄弟の子供同士の結婚は無し。
      ○アングロ・サクソンの世界、オランダ、デンマーク


    ④内婚制型
     ・相続上の規則によって兄弟間の平等が定義されている。・結婚している息子たちと両親の同居。・ふたりの兄弟の子供同士の結婚が頻繁。
      ○アラブ世界、トルコ、イラン、アフガニスタン、パキスタン、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズペキスタン、タジキスタン

    ⑤非対称型:非対称型共同体家族
     ・相続上の規則によって兄弟間の平等が定義されている。・結婚している息子たちと両親の同居。・ふたりの兄弟の子供同士の結婚を禁止、逆に異性の兄弟姉妹の子供同士の結婚を奨励。
      ○インド南部

    ⑥アノミー型
     ・兄弟間の平等は不確定ー相続上の平等規則は理論的なもので、実際は柔軟。・結婚している息子たちと両親の同居は理論上拒否されているが、実際上は受け入れられている。・血縁結婚は可能であり、しばしば頻繁に行われる
     ○ビルマ、カンボジア、ラオス、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、マダガスカル、南アメリカのインディオ文化

    ⑦アフリカ型
     ・家族グループの不安定さ。・複数婚



    「世界の幼少期」
    家族類型に関する4つのキーワード
    ・母系制:女性の親族を特権化し、女性による財産の継承、子供の出産における母親の役割を重視する家族システム
    ・父系制:男性の親族を特権化し、男性による財産の継承、子供の出産における男親の役割を重視する家族システム
    ・双系制:男性と女性の親族に同等の重要性を認め、男性と女性のどちらでも相続することができ、子供の出産において、父親と母親に同等の役割を認める家族システム。
    ・縦型:両親と成人した子供たちの強い相互依存を強制する家族システム。両親、子供たち、孫たちと少なくとも3世代を伴う「縦型」世帯が存在する形で、伝統的な農民社会のなかに出現する家族システム。可能な同義語は「権威主義家族」

    巻末のカラーの家族類型地図だけをみるだけでも・・

    巻末に訳者解説
    「世界の多様性」1999刊行(「第三惑星」(1983)と「世界の幼少期」(1984)を合冊した。
     ○「第三惑星」は、太陽系の第三惑星である地球上の家族構造の類型の全体を視野に入れ、それぞれの地域の政治的イデオロギーの特徴を分析した。
     ○「世界の幼年期」は、地球規模の展開を視野に据えながら世界各地域の経済的成長の進展の固有性と多様性を分析した。

    2008.9.30初版第1刷 図書館

  • マルクス以後初めての包括的歴史の構造分析の大著って煽り文句が全然嘘で無いすごい本。全然社会学に明るくない私はこの歴史分析について何か言えるほどのもの持たないけどめちゃくちゃ面白かった。借りて読んだけど一冊手元におきたい。

    • keisukekuさん
      全く同感です!でも、高価...
      全く同感です!でも、高価...
      2017/05/29
  • あまりにも時間をかけ過ぎた。
    折角の力作が、一冊の本を「縦に」読むのではなく、たくさんの本を「横に」読み散らかすという僕のおばかな読書法によって、長く噛みすぎて全然味がしなくなったガムのようになってしまった。
    だからといって、決して読み難い本だという訳ではない。
    あくまでも、僕自身の本の読み方の問題だ。/

    トッドを知ったのは、岩波書店のPR紙「波」に連載されていた鹿島茂さんの『ドーダの人 小林秀雄』でだった。
    その文章の中で、あまりにも有名な彼の刺激的な分析を知り、これは読まねばと思った。
    ロシアのウクライナ侵攻や、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』を照射する一つの光源になるのではないかという期待もあった。
    だが、読むのに時間をかけ過ぎたため、全ては失われてしまった。
    今は、とりあえず最低限のまとめだけして、お茶を濁そう。/


    【共産主義革命は、成長した労働者階級を有する工業先進諸国では実現しなかった。共産主義革命のすべてが、伝統的な農民家族が外婚性共同体型の国々で生起したのである。このような事実と歴史のデータは、マルクス主義の仮説を否定しており、人類学の仮説を根拠づけているのである。】(「序文」)/


    トッドは、世界の家族システムを7つの家族類型に分類する。
    絶対核家族、平等主義核家族、権威主義家族、外婚性共同体家族、内婚性共同体家族、非対称型共同体家族、、アノミー家族がそれである。/


    【外婚性共同体家族の特徴 
    ーー相続上の規則によって兄弟間の平等が定義されている。
    ーー結婚している息子たちと両親の同居。
    ーーしかしふたりの兄弟の子供同士の結婚はない。 
    関連する地域 
    ロシア、ユーゴスラヴィア、スロバキア、ブルガリア、ハンガリー、フィンランド、アルバニア、イタリア中部、中国、ベトナム、キューバ、インド北部 

    共産主義とは何か。(略)私がここで提案したいのは、共産主義という現象の社会学的、地理学的な現実により一致していると思われる別の定義である。共産主義、それは外婚性共同体家族の道徳的性格と調整メカニズムの国家への移譲である、と。外婚性共同体家族が、都市化、識字化、工業化などのいわゆる近代化のプロセスによって解体されながら、その権威主義的で平等主義的な価値を新しい社会に伝えているのである。個人は権利上、平等だが政治機構に押しつぶされる。かつて拡大家族がロシア、中国、ベトナム、セルビアの伝統的社会で支配的な制度であったとき、個人が打ち砕かれていたように。】(「第三惑星ーー家族構造とイデオロギー・システム」)

  • 共産主義、資本主義という枠組みではなく、家族構造システム(父系・母系・双系、平等主義・権威主義など)、識字人口比率、出生率などの指標から世界を分類し、読み解いていこうとする考え方の斬新さは凄い。どのような国、地域でマルクス主義が定着したかの説明は成程と思うところが多い。各国の共産党得票率を家族類型との関係を論証している。しかし、あまりにも古い著作であり、ソビエト(しかもロシアといいつつ、ウクライナや旧構成国は全てロシア)、ユーゴ、東西ドイツなどが出てくるのは、確かに人類学としては50年ほどの経過は大きな意味はないのかも知れないけど…と思ってしまう。ソ連の崩壊、そしてロシアとウクライナなどの対立に関する予言を他の書物ではしていると思うが、そこまで至らなかったのは、古さの故、やむを得ないか。
    フランス人としてフランス・ポーランドの平等主義核家族の共通性が両国の繋がりの深さという説明に及ぶところは愉しい。ロシアの起源に際してはスカンディナビア(スウェーデン人)の影響について触れていることは、全く知らない知識だった。(P381)今後、ぜひ深く追究していきたい。

  • 世界の多様性 家族構造と近代性。エマニュエル・トッド先生の著書。家族構造や家族関係が社会の仕組みにまで影響を与えるというエマニュエル・トッド先生の説明には目から鱗が落ちました。現代世界の多様性は家族構造の多様性から来ていたのですね。良し悪しの問題ではなく、違いがあることを認めることが多様性。

  • 地球上の各地域における文化的成長、政治イデオロギ-、経済的動向を根底で条件づけているのは<家族構造>に見られる人類学的な要件であり、その逆ではないということを詳細に説く、E.トッドの「第三惑星」と「世界の幼少期」を合本とした大著。

  • p49

    家族とは定義上、人と価値を再生産するメカニズムである。それぞれの世代は親たちと子供たち、兄と弟、兄(弟)と姉(妹)、姉と妹、夫と妻といった基本的な人間関係を定義する親たちの諸価値を、無意識のうちに深く内在化するのである。

    p290

    生物学的、社会的な再生産の単位である家族は、その構造を存続させるために歴史や生命からの意味づけを必要とはしないのである。家族は世代を通して、同様な形態として再生産されるのである。子供たちが家族の面々を無意識のうちに模倣するだけで、人類学上のシステムが継続するには十分なのである。愛情と分裂の場である家族の繋がりを再生産することは、DNA-RNAの遺伝子サイクルのように、意識的な操作も必要としない作業なのである。

  • 20191214 中央図書館

  • あと1章で読み終わるのだが、思ったことを書いておこう。明日になったら忘れるに違いないから。養老孟司先生の「あなたの脳には癖がある」ってことを詳しく説明した本なんじゃないかと思ったわけ。だって脳の発達段階の一番最初に家族が来るわけだから、どうしたってその影響を脳が受けないはずはない。倒置法?そんな訳で続いては『あなたの脳にはクセがある』を読み直そうかと...

  • 世界の家族類型とイデオロギーは密接に関係するというお話。なるほど。

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著者プロフィール

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。現在はフランス国立人口統計学研究所(INED)所属。家族制度や識字率、出生率などにもとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析する。おもな著書に、『帝国以後』『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』などがある。

「2020年 『エマニュエル・トッドの思考地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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