デモクラシー以後 〔協調的「保護主義」の提唱〕

制作 : 石崎 晴己 
  • 藤原書店
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894346888

作品紹介・あらすじ

米ソ2大国の崩壊を予言した人類学者の最新作。日本の将来への指針!世界経済と民主主義を阻害する「自由貿易」というドグマ。トックヴィルが見誤った民主主義の動因は識字化にあったが、今日、高等教育の普及がむしろ階層化を生み、「自由貿易」という支配層のドグマが、各国内の格差と内需縮小をもたらしている。若者・失業者・私企業労働者こそ、真っ先の犠牲者である。大恐慌の中で健全な保護主義を唱えた、ケインズの名論文「国家的自給」(1933年)収録。

感想・レビュー・書評

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  • 読み込みが浅いのか訳が悪いのか。
    なかなか理解しづらい用語を重ねた、分析なのかエッセイなのかわからない部分と、自明な問題提起に対して、特に目新しい予想、提言がされていない部分に終始しているように感じる。
    あくまでフランス国内の論で、世界に外挿できるとは思えない。
    サルコジが大嫌いなのはわかった。

  • 協調的「保護主義」ちょっと馴染みのない言葉ですが、フランスのド・ゴール以前からの政治分析・現状のサルコジ政権まで考証ある一冊。

  • 西欧近代国家で生じてしまう政治現象、つまり、フランスの政治史を振り返るとき、サルコジのようなタイプの元首は生まれてこなかった。

    彼のようなトップを生み出してしまったフランスの内情を描きながら、近代民主主義国家も同じような危機に見舞われていると著者は識字率との関係を用い説明する。

    また、自由貿易から保護貿易への転換なくして世界的安定はありえないとの自説も展開する。

    資料としてケインズの論文が載せられているが、現代資本主義社会のかかえる問題点を既に、ケインズが喝破していることがわかる。

    フランスの国内事象が多く書かれていて、途中、流し読みをしてしまいました(笑)。

  • フランスの家族人類学者トッドの近著。トッドはソ連の崩壊前にソ連崩壊を予言し、アメリカ経済の破綻前にアメリカの破綻を予言していた。その未来予測確率の高さから、世界的に注目されている学者である。(ソ連崩壊の根拠は、1歳児以下の幼児死亡率の高さ。日本の1歳児以下の幼児死亡率も現在高い。経済不況、官僚機構の麻痺、社会福祉、医療組織の機能低下が、社会の崩壊を招く。日本も20年後くらいには崩壊するのだろう)

    この書でトッドは、ネオリベラリズム的なサルコジ政権を徹底批判する。自由主義経済の限界を説き、保護主義経済の重要性を説く。以下印象的な箇所を抜粋。

    ・宗教の崩壊が、イデオロギーの崩壊につながる。カトリック、プロテスタントの信仰が地域でなくなり、無宗教化が進むと、特定の党派への票の偏りもなくなる。こうして、各党から左右のイデオロギーの偏り、明確な主張がなくなっていき、どこの党も中道化、似たり寄ったりになる。

    ・読み書き能力の向上が、近代化の要因である。識字率があがると、社会の個人は自由に考え、発言するようになる。ここから革命が生まれる。イスラム社会のテロ活動も、近代化に特有の一時的事象に過ぎない。どこの社会も近代化の過程で一時期過激な時代があった。教育が広まり、テレビが普及すると、一旦社会の教育力が下がる。

    ・現代の個人は特定のイデオロギーによらない。ナルシズムが蔓延し、自己実現がはやっている。自己実現を目的とするナルシストは、社会の集団的価値の実現を重視しない。税を払うことを拒否する高額所得者は、メロヴィング朝で王に従うのを拒否した貴族に似ている。

    ・アテネの民主主義では、女性と奴隷が排除されていた。アメリカの民主主義でも、黒人奴隷が排除されている。排除の構造は、白人男性が黒人女性と結婚しないことにあらわれている。イギリスの民主主義は、植民地の住民を排除した。フランスの場合は、一見平等的開放的だが、貴族階級を排除している。このように民主主義は、政治参加の排除から成り立っている。

    ・資本主義は共産主義という強力なカウンターがあったからこそ、自己の体制を維持できた。対抗するものがなくなると、資本主義は存在理由を失い、暴走する。個人の自由が対抗した相手だった、宗教も力を弱めており、世界は無宗教者(および無宗教にきわめて近い信仰者)と一部の宗教原理主義者で構成されている。対抗すべき主義も、すがるべき神も失った現代人は、ナルシスト化と自己実現の欲望を強めているが、救いがない。

    ・自由主義経済は、給料の安い国と自国の労働者の対決になる。自由主義経済なら、労働者の給料は下がっていく。労働者の給料を守るには、保護主義経済が必要だ。

    論点が多岐に渡り博学、かつ政治に参加しようというアンガージュマンの強い意志が感じられる。サルトルは批判されたけど、フーコーもデリダも結局は大きな観点からアンガージュマンしていた。現代政治に関わることをやめたら、人文系の知識人は学者になるんだろう。

  • 『帝国以後』で有名なフランスの知識人、E.トッドが今度はサルコジのフランスについて書いた本。
    興味深い本だけれど、フランス人がフランスの社会について書いているため、フランスの社会や政治に詳しくない限り、日本人にとってはややとっつき難い。

  • グローバル化への反動として、保護主義の議論はこれから間欠泉のように噴き出すことになるだろう。

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著者プロフィール

1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。家族制度研究の第一人者ラスレットの指導で、76年に博士論文『工業化以前のヨーロッパの7つの農民共同体』を提出。同年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。その後の『第三惑星』と『世界の幼少期』(99年に『世界の多様性』として合本化)において、各地域における「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を示す全く新しい歴史観と世界像を提示。『新ヨーロッパ大全』I、II(1990)では多様性に満ちた新しいヨーロッパ像を提示。対イラク戦争開始前の2002年に発表された『帝国以後〔アメリカ・システムの崩壊〕』ではアメリカの衰退、とりわけ経済力の衰退を指摘。

「2019年 『ユーロ病と日本病』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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