ハイチ震災日記 〔私のまわりのすべてが揺れる〕

  • 藤原書店
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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894348226

作品紹介・あらすじ

2010年1月12日、ハイチ大震災。首都ポルトープランスで、死者30万超の災害の只中に立ち会った作家が、ひとつひとつ手帳に書き留めた、震災前/後に引き裂かれた時間の中を生きるハイチの人々の苦難、悲しみ、祈り、そして人間と人間の温かい交流と、独自の歴史への誇りに根ざした未来へのまなざし-メディシス賞受賞の世界的作家、初邦訳。

感想・レビュー・書評

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  •  政治亡命を余儀なくされ、今はケベックに住むハイチ人作家による、ハイチ大地震(2010年、死者30万人以上)の被災記。著者はたまたまその日に故国を訪れており、歴史的な地震に遭遇した。常に持ち歩いている手帳に、視野に入るものを次々と著者は書きとめていく。
     「マグニチュード7.3の振動もそんなにすさまじいものではない。人を殺したのはむしろコンクリートだ」。「セメントは崩れ落ち、花は生き延びた」。「ハイチの時間は二つにひき裂かれた。2010年1月12日以前と以後の時間がある」。「国家制度が一時的にでも風景から消え去ったお蔭で、塵埃の降りしきる空の下に威厳ある人々が姿をあらわすのが見えた」。「われわれの記憶はいまも揺れ動いている」。
     本書で生きた人々、死んだ人々、彼らはひとしく私たちだ。

  • ルポではなく、どちらかというと文学だったかな。

  • 思慮深く静かに、しかし強い信念を持って語られるハイチの震災。
    さらさら読んでいるつもりなのに、ページ数を見るとあれまだここまでしか読んでないのかと思う。淡々と濃密。

    著者はケベック在住のハイチ人。
    独裁政権のころに亡命した人で、震災のときはたまたまハイチにいた。
    その時の覚書を元に短い文章が綴られていく。
    ハイチという国を妄信ではなく愛してるのがよくわかる。
    批判や怒りも確かにあるのに、誰かのせいにして自分を慰めるようなところがまったくない。

    冒頭の、東日本大震災を受けて書かれた詩を読んだだけで、うわすごいなと思った。
    繊細な感受性と、それを言語化する力量を兼ね備えている。
    大袈裟に飾る美しさではなく、筋の通った美しさ。
    詩が体に染み込んだ人の言葉だ。

    たとえば地震以前と以降が分断されているかのように語られること。
    外にいる人と中にいる人の齟齬、罪悪感を昇華するための善意と賞賛が押し寄せてくること、揺れていないのに揺れている気がする感覚、そこに居合わせた偶然がステータスになってしまうこと、不安から来るデマや「天罰」を語りたがる人たち、自制するその場の人々と、暴動を期待する「外」からの視線、「わからない」というコメントすらニュースになる報道への違和感、テレビの中の時間と自分の時間の感覚のズレ、助けて「あげる」側との間にできてしまう主従関係。

    写真を撮ってネットに流すことの意味がずれてきてしまったアマチュアカメラマンの話。
    何年も前から地震を予測して警鐘を鳴らし続けたにもかかわらず無視されてきた技師の話。

    地震の後の雰囲気は、これ日本のこと書いてるんじゃないか?ってくらいに「同じ」だ。
    だけど歴史も文化も置かれた状況も違う国だと気づかされる部分も多々ある。

    前に読んだ新聞で、トモダチ作戦の米軍の人が「日本の立場に配慮して米軍が主導しないよう気をつけた」みたいなことを語っていた。それは本当は日本だからじゃなくて、どの国だって受けるべき配慮だ。
    今日見たニュースでは、きれいな夕日の見える家に住む被災者がインタビューを受けていた。美しい夕日を見通せるのは、周囲の家が全て無くなってしまったから。夕日は美しいけれどそれが悲しいとその人は言っていた。
    この本の中にも、見晴らしのよさの哀しみが描かれていた。

    貧富の差や歴史の違いは安易に「私たちおんなじだよね」といえるものではないけれど、他人事にするにはわかる部分が多すぎる。
    同じ人間で違う個人。同じ生き物で違う国。
    同じ部分と違う部分はグラデーションで、まったく違うけれど確かに繋がっている。

    ハイチをもっと知りたい。この人の本をもっと読みたい。

  • 未読。次の帰省で購入予定。
    東日本大震災でいまだ心が揺れているのに、30万人以上の死者が出たハイチ地震について、「大変な地震だったんだなあ」と他人事のように呟くだけなのはなぜだろう。ハイチに住む知人はおらず、地図でどこにあるか指さすのも危うい。私にとってのハイチは、地理的にだけでなく心理的に遠い土地なのだ。エンタテイメントはときによってそうした心理的距離を縮めてくれる。作者の目を通じて、遠い国で起こった地震にもっと気持ちを近づけたい。

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著者プロフィール

1953年,ポルトープランス(ハイチ)生。『プチ・サムディ・ソワール』紙の文化欄を担当していた76年,モントリオール(カナダ)に移住。85年,『ニグロと疲れないでセックスする方法』(邦訳藤原書店)で作家デビュー(89年カナダで映画化。邦題『間違いだらけの恋愛講座』)。90年代にはマイアミに居を移し,『コーヒーの香り』(91年)『甘い漂流』(94年,邦訳藤原書店)『終わりなき午後の魅惑』(97年)などを発表。2002年よりモントリオールに戻り,『吾輩は日本作家である』(08年,邦訳藤原書店)の後,『帰還の謎』(09年,邦訳藤原書店)をケベックとフランスで同時刊行し,モントリオールで書籍大賞,フランスでメディシス賞受賞。2010年のハイチ地震に遭遇した体験を綴る『ハイチ震災日記』(邦訳藤原書店)を発表。2013年アカデミー・フランセーズ会員に選出される。

「2019年 『書くこと 生きること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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