- Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894349063
感想・レビュー・書評
-
竹山道雄というと『ビルマの竪琴』を真っ先に思い浮かべるかも知れない。しかし、竹山は一高のドイツ語教授として、エリートたちを教え育んだだけでなく、戦中戦後を通し、自由を守るために、軍やナチスそして共産主義とも戦い続けた言論人として名が知られていた。竹山の偉大なところは、ドイツ、フランスといった西洋を深く学びながら、ナチ批判からキリスト教批判まですすみ、その中で自分の思想を形成し、それは戦中戦後を通し一貫し、終始ぶれなかったことである。それは、東京裁判に対する批判、安保条約への賛成という態度にも表れている。本書は、もと東大教養学部教授で、竹山の娘婿に当たる、平川祐弘氏による竹山道雄評伝であり、竹山一族の顕彰もあることはあるが、それよりも、竹山の生きた時代とはなんであったかを竹山を通し描こうとしたものである。それは、時に平川氏の持論の開陳となっていて、平川節があちこちで聞かれる。したがって、平川氏に好意を持たないものからすれば、竹山を借りた平川の自伝ではないかという批判も聞こえて来そうだが、竹山氏に身近で接し、その娘を妻とした平川氏だからこそ、竹山道雄の魅力を存分に彷彿させる本書が書けたのではないだろうか。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
☆「ビルマの竪琴」の作者。戦争の経験者かと思っていたら、違った。一高、東大に学び、ドイツ留学、戦前は一高でドイツ語教師だった、まさに、教養の時代の人。戦後は、戦争に行った兵隊までが悪しざまに言われる状況で、戦争で亡くなった知人や教え子を悼むつもりで書いたようだ。
☆また、戦後も毎年外国にでかけ、見聞を広め、思想の人でもあったという。「昭和の精神史」の中で、昭和の意味を問うているらしい。 -
-
-
竹山が政治的にはリベラル志向であったことは確かだが彼は「主義者」ではなかった。オールド・リベラルに位置づけられるのはやむを得ないが、決して政治的メッセージを目的にした文章を書くことがなかった。つかみどころのない大きさがあり「作家」「評論家」という肩書きも相応(ふさわ)しいとは思えない。一言でいえば「教養人」となろうか。
https://sessendo.blogspot.jp/2018/03/blog-post_27.html -
愛媛新聞読書欄。