- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894532472
感想・レビュー・書評
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読みきってから感想を書くまでに、1カ月を要しました。
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放映されていた映画が良かったので、原作も読んでみようと手にとりました。
わたしは病棟看護師として、約10年ほど働いたことがあります。
その中でたくさんの患者さんと出会ったが、意志ははっきりしているけれども身体が動かず、“わがまま”としか思えない内容で、何度もナースコールを押される方もいました。
この本を読んでいると、どうしてもそうした患者さんを担当したときの苦い気持ち、看護師を人間としてではなく、使用人としてあつかうような言動に怒りを覚えたことを思い出してしまい、何とも言えない気持ちになりました。
鹿野さんとその患者さんは違う人間だとはわかっていても、どうしてもその言動に心がいらだち、ボランティアの人たちがなぜこうも鹿野さんを支えられるのか…と、その事実に戸惑い、なかなか受け入れられませんでした。
「(中略)他人による全介助を必要とし、ベッドからほとんど動くことのできない鹿野にとって、自分の欲求を口にし、介助者にものを頼むことが“生きること”であり自己の存在を他に示す、ほとんど唯一の手段であることだ。」(306ページ)
この考え方を理解はできても、どうしても肯定的に受け入れられない。
そのワガママに振り回され、身も心も疲弊してしまった経験があるからこそ、この言葉に拍手をし美談にできない、という気持ちがどうしても消えず、その整理に時間がかかり、感想が遅くなってしまったわけです。
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読み終えて1カ月たち、ようやく感想を書くことができたのは、わたしが見ていた患者さんは「病院」という場所での患者さんの姿に過ぎなかった、とようやく気づけからです。
病院という場所はとても特殊です。
なぜなら病院は治療する場所であり、暮らす場所ではないが故、さまざまなルールを患者さんにも守っていただく必要があるからです。
そのルールの中には、患者さんの個性を封じ込めてしまうものもあります。
しかしそれらのルールのほとんどが、無くすことができません。
なぜならそれらのルールは治す場として病院が機能するために、最低限必要なものだからです。
だからこそ、病院では鹿野さんは生きられない。
「(中略)他人による全介助を必要とし、ベッドからほとんど動くことのできない鹿野にとって、自分の欲求を口にし、介助者にものを頼むことが“生きること”であり自己の存在を他に示す、ほとんど唯一の手段であることだ。」(306ページ)
この生き方が鹿野さんの存在そのものなのだとしたら、病院という場所でこの生き方を叶えることは不可能に近い。
病院という場所は、様々な医療処置ができる場所であり、“身体的な安全”を保障するという意味では、一番安全な場所かもしれません。
でも病院では、鹿野さんの唯一の生きる証である自己の欲求を通すことができません。
そして病棟のスタッフも疲弊し、そんな患者さんを“ワガママな患者”としか見れなくなり、お互いにとって負の影響を与えながら過ごすしない。
それは鹿野さんにとってみれば、身体は安全でも心は死んでいるのと同じことなのです。
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病院と在宅、どちらが悪いというこではなく、どちらも人間が生きるために必要な場所です。
ただ、わたしはきっと、病院にいる患者さんだけを見すぎていたのだと思います。
病院にいる患者さんのワガママも、退院した先の住まいでは生きるために必要な欲求となり、そして自分が自分であることを証明してくれる唯一の手段である…そのことを、この本から教わりました。 -
生きるということ、生きるという意味を考えずには居られなくなる好適なノンフィクションですね♪ 重篤な筋ジストロフィーながらも過去になかった自立生活を志向した鹿野さんと支え続けた多数のボランティア達を取材開始から2年4ヵ月かけて出版された本書、私達に 世間に 行政に 国に 問いかけてくるものは多くて大きくて重い!
以前からタイトルだけは知っていたけど、中身は読んで初めて知りました。変に映画化されたものなど見なくて良かったー と思ってます♪
まさにタイトルがすべてを表していますね。ナイスなノンフィクションです。 -
やっと読み終わった。タイトルから軽い気持ちで読み始めた。軽いノンフィクションだろうと。とんでもない!障害者の自立への運動と歴史、介護を通した人間的な関わりと障害者自身についての壮大なルポだった。
途中、まだ終わらないかと思いながら読んんだのも事実。用語解説の文字が超小さくて障害者をテーマにした本にしては配慮が欠けるなど、不満がありつつも、読了後は私も鹿野さんの病室にいたような、ボランティアスタッフの1人の気持ちを少し垣間見れた気になった。
荒いけど、思いが沢山詰まった良い本でした。 -
なかなか重い内容の本だった。障害者と健常者、ボランティアと障害者、病院と施設と自立、など色々なことを考えさせられた。まず、本の題名が印象的。これを題名に選ぶ著者のセンスがいいと思った。そして、障害者を神聖化、美徳化しすぎることなく、主人公鹿野さんのいい面も悪い面も描き出しているのが興味深い。結局は、障害者であろうと健常者であろうと人間であり、ボランティアとの相性が合う、合わないがあるのは当然のことで、だからこそ鹿野さんもボランティアもたくさん悩み、苦しみ、傷つけあい、一方でゆるぎない絆を生み出すことや人生の方向性を大きく変えることもある、そういうことなんだろうなと思った。鹿野さんの性格や、障害を抱えている中での葛藤もあり、ボランティアとの間により濃密な人間関係が求められているのもあるし、何より鹿野さん自身の生きていく力が圧倒的に強くて文章で読んでいるだけでも「こりゃ大変そうだな」と感じた。かなり長い本なので、自分にエネルギーがある時しか読み進められないなと感じ、星を一つ減らした。映画化もされたが、鹿野さんの周りに対する影響力ってとても大きかったんだなと思った。
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先日テレビ放送された映画を見たので、読んでみた。映画を見てるので内容自体は分かっていたのだが、改めてすごいと感心。鹿野さんも周りの皆さんも素晴らしいわ。感無量でした
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一気に読める本。障害者の自立がテーマだと聞くと、説教くさいのかと思うが、これは明るく楽しい人とのつながりを描いた本。
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自立って何、普通って何、幸せって何だっけ、人って何のために生きてるの。私、ちゃんと生きてるか? 鹿野さんの破格の生き様に突き付けられる問い。福祉の話に止まらない濃密な人間物語。時代の必読書と思う。
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2021/03/14
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文章が卓越。読者をぐいぐい引き込んでいく。人工呼吸器なしでは生きていけない鹿野と100人以上のボランティアとの物語。家で親が看るか施設で一生を終えるかの2択。鹿野が投じた一石は大きい。
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エネルギー全て投入して「変える」「残す」「問う」に注いだ感じがします
完璧な社会なんてなくて、
現在進行形で変わっていかないとい...エネルギー全て投入して「変える」「残す」「問う」に注いだ感じがします
完璧な社会なんてなくて、
現在進行形で変わっていかないといけないなって、思います。2019/04/07
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障害者と関わる全ての人へ。
あ、でも、これからの社会では全ての人が障害者と関わるべきなので、今を生きる全ての人へ。 -
障害者は「かわいそう」じゅなきゃいけねぇのかよ?
大人しく社会が障害者のために考えてくれたことをなぞらなくちゃいけねぇのかよ?
社会的にすり込まれた、最も基本的な「私達」の「彼ら」へむける眼差し・反応をひっつかまえて、揺さぶって、問い直します。
専門とかなんとか抜きに読んで欲しい一冊。
著者プロフィール
渡辺一史の作品






前半読んで、
「いや、違うんだよ」と
言おうとしたら
後半でちゃんと気づきがあって
素晴らしいと思いました。
そして私も気がつ...
前半読んで、
「いや、違うんだよ」と
言おうとしたら
後半でちゃんと気づきがあって
素晴らしいと思いました。
そして私も気がつきました。
そうか、鹿野さんは病院では生きられなかったんだ。
コメントやいつもいいねをありがとうございます(o^^o)
前半だけ見ると、そう思われちゃいますよね(汗)
読み終えてか...
コメントやいつもいいねをありがとうございます(o^^o)
前半だけ見ると、そう思われちゃいますよね(汗)
読み終えてからかなり長い間、前半部分の感想しか抱けず、もんもんとしていたのですが、ようやく後半部分に気づくことができ、感想としてまとめられました。
病院という場所の特殊性にあらためて気づき、病院は暮らす場ではないという意味を、鹿野さんの生き方を通じて本当の意味で感じられました。
読むのも時間がかかりましたが、読んでよかったです(^-^)