北の無人駅から

著者 :
制作 : 並木 博夫 
  • 北海道新聞社
4.54
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本棚登録 : 246
レビュー : 32
  • Amazon.co.jp ・本 (791ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894536210

作品紹介・あらすじ

単なる「ローカル線紀行」や「鉄道もの」ではなく丹念な取材と深い省察から浮き彫りになる北海道と、この国の「地方」が抱える困難な現実-。新たな紀行ノンフィクションの地平を切り拓く意欲作。

感想・レビュー・書評

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  •  まだ、読んでいる途中だが、大変に面白い。
     北海道の無人駅を起点として、その周辺の「物語」が綴られる。

     第一章から引き込まれた。

     大部の作品だが、読み終えるのがもったいない感じ。
     各章末の小さな解説記事もきちんと書かれている。

  • かつて大いににぎわった北海道のローカル線の駅とその駅を「最寄駅」として生きている、生きていた人たちの記録。
    奇しくも日本が今、直面している問題とか(米をはじめとする農業政策、環境に対する取り組み、流氷と環境関係のことなど)声高に語られる事柄のその根っこにあるモノ、矛盾点が何なのかを知ることができました。そして、本を通してたくさんの人たちと知り合うことができたような、出会いの本でもありました。

    ”脚注”説明にもページ数が割かれているので、とても分厚い本ですが、ちゃんと持ち歩いて読めました。

  • 北海道に住みながら、なんと私はこの土地のことをしらなかったのかと思わされる。いわゆる手垢のついた北海道のイメージではないこの土地の姿を教えてもらった。

  • はじめは無人駅という響きに惹かれて、鉄道の興味から読み始めたが、こんなひとつの駅から、こんなにも(鉄道に限らない)多様な物語があるのか、と唖然とさせられる。北海道の6つの駅を訪れ、その駅で感じた素朴な疑問を掘り下げていくことから、かつてその駅に関わったさまざまな人々の生き様が明らかになる。

    例えば、室蘭本線の小幌駅。
    『なぜこんなところに駅が…。誰もが疑問を抱きたくなるような場所に、その駅はある。室蘭本線「小幌駅」。駅のホームは、トンネルとトンネルの間のわずか87mの切れ間にあり、右を向いても左を向いても黒々としたトンネルが口をあけている。
    周りに家はなく、ただ海へ降りる道がぽつんと残されている。』

    実はかつて単線だった時代に行き違いの出来る信号区間を設けるための信号場であり、信号場で働く鉄道マンの家族が住んでいた。また、漁をして暮らす家々もあり、両足を失ったものの他のどの健常な漁師よりも腕のよい漁師が住んでいた暮らしがあった。昔その駅に関わっていた人の話を聞き、歴史をたずね、ひとつひとつその駅の来歴を明らかにしていく。

    800ページ強、ノンフィクションの真骨頂。
    北海道の最果ての小さな駅から、見えてくるものは、広範多岐にわたる。人々が駅の周辺を離れ無人駅になった理由には林業や漁業が立ち行かなくなったこともあれば、道路や鉄道が整備され都会に行きやすくなったこともある。人の話を聞き、豊富なデータでも物事の流れを追う筆者の手法はぐいぐいと引き込まれる。
    日本の経済の動きや自治、高齢化、農業の問題など、ありとあらゆる分野の物事が見えてくる。
    精緻かつ粘り強い取材によりかつてそこに暮らし、今そこに生きる人たちの暮らしをありのままに描き出してきた。
    章ごとにはみ出し情報が章末に単線区間のタブレット閉塞区間とはとか、詳しい情報も記載され、鉄道好きにも満足していただける内容になっているのもよい。

    あとがきに書かれた一文がまたいい。
    『本当のところ、鉄道も無人駅もさして興味はなかった。興味があったのは人だった。
    無人駅をテーマに、人を求めて旅をしていた。』
    無人駅から紡がれる人々のストーリー。
    しかし、留萌本線増毛駅は2016年12月に廃線になり、列車はもう来ることはない。新十津川駅を結ぶ札沼線もそう長くないかもしれない。。人が集まる駅はやはり特別な場所だと思う。何とか北海道の鉄道が残っていくといいのだが。。

    <目次とキーワード>
    「駅の秘境」と人は呼ぶ 室蘭本線・小幌駅
    →閉塞区間・両足のない漁師
    タンチョウと私の「ねじれ」 釧網本線・茅沼駅
    →自然保護、蝦夷鹿とタンチョウ、ガイドマップ
    「普通の農家」にできること 札沼線・新十津川駅
    →農業政策、個別所得制度、十津川村、米の品質の厳しさ、有機農業とは
    風景を「さいはて」に見つけた 釧網本線・北浜駅
    →ディスカバージャパン、カニ族、流氷
    キネマが愛した「過去のまち」 留萌本線・増毛駅
    →消えたニシン、町の栄華も一緒に。
    「陸の孤島」に暮らすわけ 留萌本線・増毛駅
    →雄冬。道路事情がよくなることにより、得たことと失ったこと。
    村はみんなの「まぼろし」 石北線・奥白滝信号場
    →住民投票、合併をめぐる村、原野を切り開いた村はまためぐる

  • 図書館。素晴らしい力作。とにかく面白い。手元に置いて再読したい。

    内容にはまったく文句がないが、章末の詳細な注について。これだけでもたいへん読み応えがあり面白い。グレイの紙に小さな字で四段組。びっしり書かれていて読みにくい。造本も(厚すぎて)バラバラになりそう。

    全七章で分厚い一巻になっているが、一章を一冊ずつ出してもよかったんじゃないのか。せめて三冊くらいで。

    カラー写真も素晴らしい。

    タイトルでノスタルジックな鉄道の話と誤解していた。勿体無いと思う。

  • 全体を飛ばし読みしたが、著者が時間をかけて取材した貴重なルポルタージュであると感じた。時間をつくり、じっくり読みたい。

  • 読み終わって「面白かった」、「感動した」、「人にも勧めたい」と思わせてくれる本はこれまでにも読んだことがある。しかし、読み終わって、「この本の値段では安すぎる、この倍は払っても良い」と思わせてくれた本は初めてだった。

    フリーライター渡辺一史が8年間にも及び全力を賭けて取材した結果が800ページ弱の圧巻のボリュームにまとめられている本書は、2,500円という対価では余りに安すぎる。

    本書はタイトルにあるように北海道の6つの無人駅を巡るルポルタージュであるが、無人駅はあくまで触媒としての役割に過ぎない。あとがきで著者はこのように独白する。

    「最後に白状してしまえば、私は無人駅にも鉄道にも、じつは大して興味はなかったのだ。興味があるのは人だった。無人駅をテーマにしながらも、私は人を求めて旅をしていた。」(本書p779)

    6つの無人駅が触媒となり、そこから紡ぎ出されるのは、今の北海道が抱える様々な問題である。タンチョウヅル等の自然環境保護と観光のバランス、北海道における稲作と政府保護の問題、漁業の衰退に伴う街の過疎化、市町村合併の流れにおける地方自治の有り方等・・・。その多くは北海道特有の問題というわけではなく、他の地方自治体にも通じているわけで、本書を通じて、今の地方自治体が抱える課題を極めて生々しく理解することができる。

    そして、何よりも著者が独白するように、6つの無人駅付近にある自治体で生き抜く人々の姿が、その人となりや生活様式がよく伝わってくるように描かれている点に感動を覚える。8年間という歳月をかけたのは、こうした人々とのコミュニケーションに著者なりの誠意で持って、”時間”を媒介にして、付き合ってきたからに他ならない。そうした”時間”がなければ、ここまで生々しい情報は得られなかったはずであり、そこにこそ本書の最大の魅力がある。

    また、膨大な量の注釈(恐らく注釈だけで50ページほどはある)には、上述の課題に関する基礎的なファクトが極めて丁寧にまとめられている。これも膨大なリファレンスから著者がまとめあげたということを考えると、やはり本書に2,500円以上の対価を払うべきだという思いが強くなるのである。

  • 寡作だが誠実な作品を出す北海道在住のノンフィクション作家。北海道の小さな開拓史を丁寧にすくい取る。こんな作品が書けたらいいなあと素直に思う。 (松村 教員)

  • 【「教職員から本学学生に推薦する図書」による紹介】
    永野宏治先生の推薦図書です。

    <推薦理由>
     "北海道の現実を知るのによい本です。"

    図書館の所蔵状況はこちらから確認できます!
    http://mcatalog.lib.muroran-it.ac.jp/webopac/TW00352167

  • 前作『こんな夜更けにバナナかよ』に続いて、これまた本当に素晴らしい作品。

    この作者は見聞きしたことや新しく考えたことを私たちと同じ目線に立って伝えようとする。それは「共に考えよう」という著者からの無言の呼び掛けであり、それに応ずるような形で私たちの思考も自然と開かれていく。謂わばこの書き手は思考の水先案内人なのだ。ただし、この船頭には目的地を目指す気がさらさらない。というよりも、そもそも目的地を知らないのだ。大団円のゴールを持たない代わりに、この案内人が私たちに見せてくれるものとは何か。それは読者一人ひとりが考えなければならない課題である。

    さて、本書では北海道の無人駅周辺に住む人々への丹念な取材を通して、彼ら一人ひとりの人生ドラマや生活史が語られている。ノッケから両足を失った豪傑漁師の伝説めいた話が出てきたりして、それだけで圧倒されてしまうだが、著者の本領はその先にあって、そこからさらに庶民の生活史を深く掘り下げていくことで各々の地域が抱えている問題を掘り起こしていく。

    それは環境運動家と地元民との対立であったり、農家と農協との微妙な関係であったり、地元の名士の死によって分裂した村であったり、抱えている問題は地域によって様々だ。普段語られることのないこうした複雑かつ豊穣な北海道の姿は、観光戦略(イメージ戦略)によって作られた「北海道の自然は雄大で美しく、食べ物も美味しい」といった安直で通俗的な北海道論に対する、著者なりの静かな異議申し立てだろう。お互い顔の見える濃密な人間関係が営まれている小さな農村において村を二分する住民投票を行うことの意味を考察した最終章には、思わずハッとさせられた。

    そして見逃せないのは、それぞれの地域が抱えるこうしたローカルな問題群が、そのまま日本社会を通底する問題群とも接続しているという点だ。著者の、個別具体的なものへの最大限の関心の注入と、それを普遍的なものへと昇華させていく根気強さには脱帽するほかない。その苦心の痕跡は行間から滲み出ているし、何よりも前作から8年という歳月が本書の難産性を物語っている。

    寡作でいい。これからもずっとこの作家を追いかけていきたい。

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