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- Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894538887
感想・レビュー・書評
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氷期から 命繋げる蕊【しべ】たちよ 今年の春の寒さはいかが
杣田【そまだ】美野里
作者は、レブンアツモリソウやレブンコザクラなど、礼文島の野花を撮影し続けている植物写真家。このたび、それらの美しい写真と短歌を組み合わせた著書「礼文短歌 蕊」が刊行になった。
家族とともに東京から礼文島に移り住んで、25年。島のガイドブックはじめ、多くの著書があり、盗掘防止など自然保護活動にも取り組んでいるという。
掲出歌は、エゾノハクサンイチゲの写真に添えられた歌。真っ白な萼片【がくへん】が花びらのように見え、それに囲まれているのは、雌しべたち。何万年も前から「命」をつないでいる高山植物の、豊かな生命力が芳香を放っている。
永久永遠【とわとわ】に 咲き継いでゆけ あつもり草 人の歴史は 置き去りにして
「人の歴史」よりも、植物の歴史はずっと長く続いている。虫たちと共生しながら、次の世代へと確実に「咲き継いで」ゆく花々の姿に、ヒトはもっと謙虚になるべきだと考えさせられる。
短歌とともに、短いエッセーもアクセントになっている。礼文島では、畑仕事などをしていると、「奧さん、イッショケンメイ」と声をかけられるそうだ。挨拶がわりの言葉だが、地道に、懸命に働く姿へのねぎらいとして、心あたたまる言葉と思う。
礼文から見る利尻山や、しべの揺れ、露に濡れる花びら―表情豊かな写真とともに、「礼文短歌」という新たなジャンルが誕生したことを、言祝【ことほ】ぎたい。
(2018年2月11日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示
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