復活の日 (ハルキ文庫 こ 1-2)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894563735

感想・レビュー・書評

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  • このSF小説は、摂氏五度活発化する細菌によって、細菌と人類との攻防。

  • やっと読了。読んでよかった。映画化するのも納得のすごい小説だった。今読んでも新鮮に感じる。とにかく文面が素晴らしい。

    ” 交通事故や殺人事件の記事を、あれほど毎日平気で読みながせるわけがない。ーーだが、いつかは「現実」が、「報道」をおいこして、インクの香りのする新聞紙やラジオ、テレビの受信器の背後から、こちら側へ、せまってくる時がくる。ーーその時、惨劇はもはや人ごとではなく、あなた自身のものになるのだ。”(176pより)

    引き込む文章。世界観。ラストもお約束の「英雄は死んだ」というラストではけっしてない。災害が続き未来が暗く感じる今でこそ、お勧めしたい小説だった。

    驚くべきはあとがきにあった、当時の話。
    ”ーーこちらも、予定枚数を大幅に超過して、しかも「最新」とはいえ、生硬な科学知識をかなりな程度そのままもち混んで、私としては、「削除・短縮」の首の座にすわるような気持ちだったが、福島さんは、一枚の削除、一行の改変もなく、そのまま下版してくれ、三十九年八月に出版された。”(あとがき より)
    一行の改変もない小説が、昭和39年に出版と知り、胸が熱くなったのでした。

  • 鳥インフルエンザによるパンデミック。今は一旦静かになっているようだが、いつこの小説のような惨状を呈しないとも限らない。MM菌による人類破滅と復活の第一歩を描く。実際に起こりえる話であるから背筋がぞーっとしてしまう。

  • 刊行した1964年という時代背景を鑑みると、まさに経済発展をせんとする熱気のなか、冷戦真っ只中で核戦争も現実味を帯び生物兵器の脅威もより身近なものであったことだろう。そうした大衆心理をよく心得、極めて映画的な表現手法を用いたSF大作が本作であった。喪失と復活という、滅亡系作品の定石も当時としては斬新なものであったのではないか。ウイルスや南極、「復活」の仕掛け等々、じわじわと迫りくる恐怖と絶望、そして人類の一縷の望み、それらを描ききる小松左京氏の才覚を堪能いただきたい。

    話は変わるが、刊行当時の「人類35億人」はいまや70億人、狂気のシルヴァーランド大統領はトランプ大統領に酷似と、色々と時の流れと不思議な一致を考えさせられる。

  • 今、直ぐ明日にでも起こりうる話しなのでは。
    首を絞める人間はきっと最期の最期まで自分も絞められていることに気付かないのだろう…。

  • 小松左京「復活の日」


    SF映画は好んでよく観るのに、SF小説はこれまでほとんど読んでこなかったのは何故だろう?小松左京も初読です。

    近未来。未知のウィルスの伝染によって人類のほとんど死滅した地球。ウィルスの活動が及ばない極寒の南極大陸に残されたわずかな人々。人類はこのまま滅亡してしまうのか?それとも「復活の日」は来るのか?

    いわゆる爆発的感染(パンデミック)物と呼ばれるジャンルの作品で、同氏の代表作。過去に映画化もされてるらしい。

    日本のSFと言うと星新一のショートショートしか知らなかったので、こんなスケールのでかいSF小説を書く作家が日本にもいるんだなぁと感心してしまいました。

    「日本沈没」も読んでみよーっと。

  • 1969年冬、極秘裏に開発された高致死性の細菌兵器MM-88菌を載せた小型飛行機が、雪のアルプス山中に墜落する。春になって気温が上がるにつれ、MM-88菌は世界中に猛烈な勢いで蔓延し、その正体を解明する暇も与えられることのないままに1969年夏、人類はあっさりと滅亡するーーーMM-88菌が活動できない極寒の地・南極に、一万人足らずの人々を残して。
    世界が滅び逝く様を成す術無く見守るしかなかった南極の人々は、残された知恵と資源、そして技術力を結集して、絶望的なサバイバルを展開する。閉塞的な環境の中、生き残るために必死の活動を続ける彼らにもたらされた知らせは、更なる災厄の前触れだった。人類の最後の希望を繋ぐため、災厄を防ぐ片道の決死隊に出た日本人科学者・吉住が目撃した、人類再生のヴィジョンとは・・・?

    ずっしりと、重たい読後感。
    書き下ろし作品として発表されたのは1964年。50年以上前の作品とはとても思えない、凄まじいまでのリアリティ。間違いなく名作です。さすが小松御大。

    映画の方も有名なので、ストーリー展開はここで改めて紹介するまでもないでしょう。人類の大半が滅び、生き残った少数が復活への糸口をつかむ。ものすごく大雑把にまとめると、そういう話です。
    そんなあらすじだけ聞くと、「結局ハッピーエンドなのね」と思われそうです。しかし、この作品で描かれているのは、圧倒的なまでのペシミズムです。復活への糸口をつかみながらも決して手放しでは喜べない、むしろ人類の愚かさ、矮小さ、そしてしぶとさを強烈に感じさせるラストシーンです。

    この作品に登場する人物たちは、いろいろな事情を抱えてはいますが「根っからの悪人」はいません。ある者は専門家としての挟持から、ある者はビジネスの必要性から、またある者は自分の信念から、最も「善かれ」と思ったことを成しているだけです。
    それなのに、事態が悪い方へ悪い方へと転がっていき、最終的に人類を生物兵器と核兵器で二度も滅亡へと追いつめる結論に至ってしまう、この愚かしさ。
    人類を救うために発展してきた医学や生物学が人類を滅ぼす細菌兵器を生み出し、人類を滅ぼすために発展してきた核兵器がその細菌兵器を無効化してしまう、この皮肉。
    敗戦後の焼け野原を生き延びてきた小松左京にとって、あっけらかんと希望に満ちた「復活」を幻視することはできなかったのでしょう。苦悶し、苦闘し、七転八倒しつつ、ようやく掴み取るのが復活への糸口なのだと、小松左京はわかっていたのでしょう。滅びつつも後世に向けて有用な知識を発信し続ける人が、自らの命を賭して他者を救おうとする人が、この作品にも端役として登場します。あくまでも端役として、です。3・11を経験した今の日本人なら、いろいろと感じるところの多い作品だと思います。

  • 氏の初期の作品で、小説的な面白さはこの頃から変わらない。
    科学とは、人間とは何かという説教臭い所があり、そういうのが好きじゃないと途中でダレてくる。

  • 「さよならジュピター」や「日本沈没」でおなじみ小松左京先生の作品である。

    最初こそローテンポであるものの後半からのたたみかけが素晴らしかった。

    また人類に様々な点から警鐘を鳴らす良作である。

  • 「人類が生み出した大量殺人兵器による人類滅亡」をテーマにしたSF。

    前半は退屈な部分があるが、中盤から急展開していく。

    本書では、人類は二度の滅亡の危機を迎える。これにより、人類はたった一万人を残して地球から消え去る。

    第一には秘密裏に開発された細菌兵器に関わる想定外のトラブルによる滅亡。
    第二には、これから縮小に向かおうとしていた核兵器による滅亡。
    ただのパニックSFではなく、人類の行く末について考えさせられる作品。

    ところどころに挿入本書に登場する科学者の独白や、あとがき、解説が、本書のテーマをより深みのあるものにしている。

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著者プロフィール

昭和6年(1931年)大阪生まれ。旧制神戸一中、三校、京大イタリア文学卒業。経済誌『アトム』記者、ラジオ大阪「いとしこいしの新聞展望」台本書きなどをしながら、1961年〈SFマガジン〉主催の第一回空想科学小説コンテストで「地には平和」が選外努力賞受賞。以後SF作家となり、1973年発表の『日本沈没』は空前のベストセラーとなる。70年万博など幅広く活躍。

「2019年 『小松左京全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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