金星に起こった異変。突如調査局員シロウズの目の前に現れた人類によるものではない巨大な建築物の廃墟。そして過去か未来かあるいは他の次元の何者かが人類に告げる、悲劇の予感。空間のひずみにはまり込み行方不明になる大船団。冥王星の地中深く、千二百万年前の地層から発見された宇宙船。再び告げられる<無>と<終焉>の予感。また地球でも別の異星人の宇宙船が発見される。その宇宙船から回収された記憶媒体。その解析により、遠い過去に起こった二つの種族の戦いの歴史が明らかになる。そして“セル”の方向からやってきたなにかに怯えていたことも。<無ハセルニアル> この記録の意味する真実とは。人類は過去の二つの種族を滅ぼしたその危機に今も面しているのだろうか。人類はその未来をかけて、迫りくる災厄のかたちを知ろうとした。太陽系の外に前哨基地を設け、巨大なレーダーでその存在を探るプロジェクトを開始した・・・。
積み重ねられる謎。そこから導き出される<無>の接近。しかし、人類は何もまだ知らないのだ。<無>が何であるかさえ。
全てを賭けて築かれる人類のトリデ。その建設主務者となったシロウズ。この破滅に立ち向かうための資料を今に伝えるために生きつづけて来た女性。そして人類の明日の全てが。たそがれに飲み込まれる・・・。
こういう虚無感は嫌いじゃない。
人類は広大な宇宙の中では決して主役などではないのだと。
人類は無力なのだと。
人類はちっぽけなのだと。
それでも生き続けるのだと。